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声明・意見書2007年度

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検察審査会の廃止に反対する会長声明

2008年3月28日

札幌弁護士会 会長 向井 諭

1 本年1月、最高裁判所は、全国201箇所にある検察審査会のうち、申立事件数が少ない50箇所が廃止することを発表した。札幌地裁管内について言えば、浦河検察審査会が廃止の対象となる。
札幌検察審査会事務局の説明によれば、浦河検察審査会への申立件数は年平均1件未満であり、検察審査会への申立は郵送で行われるのが通常で、廃止をしたとしても地域住民に不便をかけることはほとんど無いとのことであった。

2 しかしながら、検察審査会法第1条は、「公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るため、地方裁判所および地方裁判所支部の所在地に検察審査会を置く」と定めている。この趣旨は、公訴権の行使について国民の意識を反映させ、誤った公訴権の行使がなされぬよう国民がこれを監視することにあるのであり、国民に身近なところから監視する必要があるからこそ、全国の地裁の本庁だけでなく、主な地裁支部も含めて201箇所に検察審査会が置かれているのである。
特に、検察審査会法が改正され、第2段階の起訴議決への法的拘束力が付与され、審査補助員制度が創設された。かかる改正により、検察審査会は、より実効的なものとなる。平成21年5月までに改正された検察審査会法が施行されるのであるから、まずは国民に対し、検察審査会の存在、利用方法を十分に告知すべきである。
このような検察審査会の意義からすると、申立件数が少ないことを理由に検察審査会を統廃合するということは、主権者である国民の公訴権行使に対する監視機能を弱体化させるものであり、到底、認められるものではない。

3 加えて、検察審査会は、公訴権行使という司法の一部分を監視するものであるが、国民の直接的な司法参加の一形態であり、その意味でも大きな意義がある制度である。
平成21年から実施される裁判員制度は、国民の司法参加の一形態であり、検察審査会と共通する視点がある。検察審査会の統廃合は、国民の司法参加を狭めるというものであり、この観点からも認められるものではない。

4 司法改革の中で、司法の容量の拡大が求められており、弁護士会は公設事務所等を設置しいわゆるゼロワン地域の解消に努めてきたが、裁判所は、裁判官が常駐しない非常駐支部の問題を放置したままであり、今回の検察審査会の統廃合は、裁判所の支部の統廃合にも繋がりかねなず、かかる司法改革の観点からも問題である。

5 犯罪被害者が、検察官の公訴権行使に疑問を抱いた場合、いったい何処に、どのような申し立てをしたらよいのか皆目見当がつかない現状である。そのような場合に、犯罪被害者のすぐ近くに、まずこれを相談できる窓口が必要であるが、地方に所在する検察審査会はこのような相談窓口としての機能も有するものである。したがって、このような窓口の減少は、犯罪被害者の権利・利益の観点からも問題がある。

6 検察審査会の統廃合の理由の一つに、委員の負担も挙げられているが、そのことについては、検察審査会の運用の改善で十分対処可能である。

7 以上から、当会は、最高裁判所の浦河検察審査会の廃止するとの方針に反対するとともに、全国201箇所にある検察審査会のうち申立事件数が少ない50箇所を廃止するとの方針にも反対を表明するものである。

以 上

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