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声明・意見書2009年度

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労働者派遣法の抜本的改正を求める会長声明

  1. 現在、わが国では働いても人間らしい生活を営むに足る収入を得られないワーキングプアが急増し、年収200万円以下で働く民間企業の労働者は1000万人を超えるに至っている。こうしたワーキングプアの多くは、派遣労働者、有期雇用労働者といった非正規労働者であり、政府が構造改革政策の下で進めてきた労働分野における規制緩和のひずみがあらわれている。
  2. そして、非正規労働の典型である派遣労働者については、正規労働者との労働条件(特に賃金)格差や労働者派遣法には手数料の規制が全くないため高額のマージン、「データ装備費」に代表される違法なピンハネ、賃金不払い、長時間・低 賃金労働、禁止業務への派遣、労働災害の頻発等の極めて過酷で不安定な状況におかれている。また、雇用の調整弁として常に失業の不安を抱え、繰り返される雇用期間満了ないし解雇により、人間としての誇りや尊厳が損なわれている事態すら生じている。
    現に、「年越し派遣村」に見られるように、いわゆる派遣切りよって、派遣労働者は職業を失うのみならず住居を含めた生活基盤自体を決定的に破壊されてしまう状況に陥ることも少なくない。
    さらに、派遣労働者全体の約62%(約99万8200人)を女性が占めており、女性労働者ないし母子家庭の貧困という視点からも、こうした状況を早急に改善する必要がある。
  3. こうした現状を踏まえ、当会は、昨年11月に労働者派遣法について、派遣対象業種を専門的なものに限定し、登録型派遣を禁止するなどの抜本的な改正を行うとともに、正規労働者と非正規労働者との間の同一同等労働に対する労働条件の均等待遇を立法化するなど労働法制全体の改正を行うことを求める見解を表明した。さらに、当会は、本年4月1日から、新たに貧困と人権プロジェクトチームを設置し、会内研修を行うとともに、生活保護及び非正規労働者の雇用問題に関する法律相談の実施を予定している。
    ところが、本年7月21日に閉会した第171回国会に提案されており、廃案となった政府与党の労働者派遣法改正案は、抜本的な改正にほど遠い内容であった。早急に労働者派遣法の抜本的改正に取り組む必要性を国に対して引き続き積極的に訴え、その実現を求めていくことは、基本的人権の擁護を使命とする弁護士そして弁護士会の責務といえる。
  4. そこで、当会は、非正規雇用の増大に歯止めをかけワーキングプアを解消するため、再度、労働者派遣法を以下のような方向で抜本的に改正することを提言する。

(1) 派遣労働の対象業務は、臨時的かつ専門性の高い業務に限定する。

(2) 派遣労働における日雇い派遣は禁止する。

(3) 派遣労働における登録型派遣は原則として禁止する。

(4) 派遣受入期間に対する制限を強化する。

(5) 派遣労働者と派遣先正社員との均等待遇を義務づける。

(6) 派遣先会社の雇用義務その他の責任を強化し、特に違法派遣や偽装請負があった場合には、派遣労働者と派遣先会社との間に直接雇用契約が成立していると「みなす」規定を創設する。

(7) 派遣業者のマージン規制について、数値の上限を設ける

2009年7月27日
札幌弁護士会 会長  高崎 暢

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