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声明・意見書2009年度

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被疑者援助・少年付添援助事業の財政問題に関する意見書

日本弁護士連合会
会 長  宮﨑 誠 殿

2010年2月16日
札幌弁護士会 会長  高崎 暢

第1 意見の趣旨

 被疑者援助・少年付添援助事業に基づく援助費用については、現行の水準を堅持すべきであり、その引き下げに強く反対する。

第2 意見の理由

  1.  昨年5月21日、被疑者国選対象事件が大幅に拡大された。しかし、未だ全事件に及ぶものではない。また、被疑者国選対象事件においても、国選弁護人が選任されるのは勾留質問後であり、逮捕段階での選任はなされない。
     被疑者国選対象事件以外の事件であっても弁護人選任権の十分な保障が図られるべきことは言うまでもない。特に否認事件においては身柄拘束後直ちに虚偽の自白防止等のための弁護活動を開始しなければならないし、自白事件においても速やかな示談等による早期の身柄解放に向けた弁護活動の必要性は大きい。
  2.  少年事件においても、国選付添人選任対象事件が未だに一部の重大事件に限定されている。
     付添人は、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適切に行われるよう、少年の立場から手続に関与し、環境を調整するなど、少年の立ち直りを支援する重要な役割を担っている。このような役割を果たすための活動は、少年との頻繁な面会はもとより、被害者への対応、家族・学校・職場の関係者への働きかけ等、多岐にわたっている。特に援助の必要性が高い観護措置決定がなされた事件については、原則として、審判期日まで4週間以内という短期間に集中して、これらの活動を行わなければならない。
  3.  以上のような弁護人・付添人活動を支えるためには、財政的な裏付けが求められるところ、現在、刑事・少年財政基金を財源とする被疑者援助・少年保護援助付添事業がその役割を担っている。しかるところ、日本弁護士連合会において、基金の財源不足を理由として、同事業による援助金額の引き下げの是非が議論されている。
     基金の財源不足の克服のためには、援助金額の減額のほか、特別会費を増額して基金を拡充する、あるいは両者を組み合わせる、といういずれかによるほかないが、援助金額を減額するという方法を採るべきではない。
  4.  すなわち、基金からの支出が増えた主な理由としては、1.被疑者国選対象事件の拡大に伴い、対象外事件や逮捕段階での受任が想定以上に拡がったこと、2.少年付添事件においては、各単位会が独自に「身柄全件付添人制度」など、家裁送致後の付添人選任を拡充する活動を展開してきたこと、が挙げられる。これらは、刑事弁護や少年付添のあり方からすれば積極的に評価すべきことであって、基金の財源不足への対応がその動きに逆行するようなものであってはならない。
  5.  また、前述した弁護人・付添人に課された重要な役割や求められる活動内容からすれば、現在の支給額でも未だ十分とは言い難く、当会を含め、独自の財源に基づき上乗せ費用を拠出している単位会も多い。
     にもかかわらず、ここにきて支出を減額することは、とりもなおさず、多大な労力を割いて刑事事件・少年事件に取り組んでいる一部の会員のみに対して、現在の刑事弁護体制・少年付添体制の維持のためにさらなる負担を強いる結果となる。
  6.  さらに、これらの費用は本来国費で賄われるべきところ、現行の不十分な法制度のもとで、被疑者援助・少年保護援助付添事業が暫定的にこれを補っているにすぎない。そのため、現在、被疑者国選対象事件の拡大及び被疑者国選選任時期の繰り上げ、並びに国選付添人対象事件の拡大に向けた活動が活発に展開されている。
     かかる活動は、制度の拡充に止まらず、適切な国選費用の実現をも目的とすべきところ、今般の減額論は、これらの活動と矛盾するものと言うほかない。
  7.  基金の財源不足については、来期、特別会費の増額が議論されるところであるが、仮に、会員にかかる負担を求めるにあたっても、日本弁護士連合会として、国選弁護及び国選付添制度の拡充を求める運動に改めて取り組むことを宣言するとともに、上記増額は、あくまでもその実現までとすべきである。
     以上より、当会は、被疑者援助・少年付添援助事業による援助金額の引き下げに強く反対する。

以 上

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