声明・意見書

死刑執行に関する会長声明

 2018年(平成30年)7月6日、東京、大阪、福岡及び広島の各拘置所において計7名の死刑が執行されました。昨年8月に上川陽子法務大臣が就任して以来、2回目の執行であり、第2次安倍内閣以降、死刑が執行されたのは13回目、合計28名に対して死刑が執行されたことになります。
 死刑は生命を奪う刑罰であり、誤判の場合、事後的な回復が不可能です。近時の袴田事件再審開始決定は、誤判・えん罪の危険が現実のものであり、誤った死刑執行のおそれが否定できないことを改めて明らかにしました。
 この点について、国際連合の自由権規約委員会が、日本の第6回定期報告に対する最終見解(2014年7月23日採択)において、死刑判決に対する必要的な上訴制度がないこと、再審請求に死刑の執行停止効がないことなど、日本の死刑制度には国際人権基準の観点から問題があると指摘したことが注目されるべきです。今回、死刑が執行された7名のうちの6名は再審請求中でした。国際人権基準から見て、極めて大きな問題のある死刑執行です。
 また国際社会においては、死刑廃止に向かう潮流が主流です。2016年(平成28年)12月19日には、国連総会において「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が、2014年(平成26年)12月に引き続き117か国の賛成により採択されています。また、2017年(平成29年)12月末日現在、死刑を廃止又は停止している国(10年以上死刑が執行されていない国を含む。)は142か国に及び、世界の3分の2以上の国において死刑の執行がなされていません。今回の7名に対する死刑執行は、死刑廃止に向かう世界的な潮流に真っ向から反するものであって、国際社会からの孤立をもたらすおそれのあるものです。

 このような死刑制度が抱える重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み、日本弁護士連合会は、2016年(平成28年)10月7日、第59回人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本で国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに、死刑制度の廃止を目指すべきであることを宣言しました。同宣言は、犯罪被害者や遺族への支援の拡充を求める一方、人権を尊重する民主主義社会における刑罰制度は、犯罪への応報にとどまらず、社会復帰の達成に資するものでなければならないとの観点から、死刑制度を含む刑罰制度全体の抜本的見直しを求めるものです。
 今回の死刑執行は、このような死刑制度を巡る国内外の情勢の変化及び人権擁護大会における宣言を無視するものであって、極めて遺憾です。

 オウム真理教による一連の犯罪は重大な被害をもたらし、社会的にも大きな影響を与えましたが、そうであるからといって、死刑制度の有する問題点が無くなるわけではありません。被害者やその家族への支援を更に充実させつつ、刑罰制度を抜本的に見直していく必要があることには変わりがありません。
当会は、政府に対し、直ちに死刑の執行を停止し、2020年までに死刑制度を廃止することを求め、今回の死刑執行に対し強く抗議します。

2018年(平成30年)7月6日
札幌弁護士会
会長 八木 宏樹

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