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2012/07/13

再生可能エネルギーに関するスペイン・ドイツ調査紀行~その1・ベルリン編~

公害対策・環境保全委員会 委員 高橋智

公害対策・環境保全委員会

ドイツ連邦議会

5月下旬、日弁連と関東弁(関東弁護士会連合会)、近弁連(近畿弁護士会会連合会と道弁連(北海道弁護士会連合会)の合同調査に参加して、ドイツ・ベルリン等を訪問してきました。総勢約15名で、道弁連からは私と菅澤弁護士、高杉弁護士が参加しました。

私たちが参加したのは道弁連記念大会シンポジウムの準備のためです。同シンポジウム「再生可能エネルギー基地北海道」~北海道のあたらなる可能性~は、来る2012年(平成24年)7月20日(金)午前9時~12時 ロイトン札幌3Fで開催されます。入場は無料です。

議員会館での面談風景

ベルリンでまず訪ねたのは緑の党です。ジルヴィア・コッティング=ウール氏(ドイツ連邦議会議員・緑の党・同盟90原子力政策スポークスパーソン)を訪ねました。同女史は原発問題について開発から最終処理まで担当しています。

ドイツで、再生可能エネルギーが普及しているのは、再生可能エネルギーで電力を生産したら、電力供給会社が必ずこれを買い取らねばならないという手法(フィードインタリフ)です。具体的に言うと、 1991年 電力供給法 Stromeinspeisungsgesetz 2000年 再生可能エネルギー法(EEG)の2法が決め手となり、両法律によって、電力供給会社は、送電線との接続と固定価格で20年間買い取ることを義務づけられました。これにより誰でも、計画的に電力生産者になれることになったのです。そして、自分で風力発電や太陽光発電をすれば、確実に利益を得ることができるようになったのです。この制度は、実は、補助金などは一切使われていません。

この制度によって、風力発電、太陽光発電を作った人は確実に売電することができるので、投下した資本を回収する計算が立つのです。このため、ドイツでは、ここ数年で風力発電、太陽光発電が非常に普及しています。

ベルリン市内で行われていた「エネルギーの日」と題する展示会では、電気自動車を蓄電池として利用する提案がなされていた

コッティング=ウール氏によると、再生可能エネルギーの買取制度で、電力価格が上がるというのは嘘であって、現在電力価格があがっている理由の3分の2は、石油、石炭価格の上昇であるという説明でした。今後、原子力安全対策費により、原子力のコストもかなり高くなるはずであり、再生可能エネルギーこそが最もローコストであり、しかも、排出二酸化炭素を抑制する手段であるということのようです。

質疑は原発問題にも及びました。原発問題でも最も重要なのは、透明性と監視であると話されていました。環境に関しての情報、原子力の関する情報(一部の情報を除き)は全て行政に開示しなければならないとされていおり、その行政から国会が情報を引き出すことができるという仕組みが確立していることが大切だということです。

また、ドイツでは最終処分場を改めてどこにするかが議論されており、非常に大きな問題になっているそうですし、ドイツ国内で今般止めた原子力発電所の廃炉方法についても議題になっていくのではないかと話されていました。

話は、日本の原発問題に及び、ドイツで最終処分場が見つけられるかどうかも問題だが、「欧州では、日本では最終処分場は、日本国内に責任をもって処理できる場所はないというのが大方の意見である。日本は地層が不安で人口密度が高いからだ。地層が安定していて、人口密度が小さい国に運んで処理をする必要があるのではないか。」と指摘されました。日本の原発問題については非常に関心が高いようです。

ダルデスハイムのウィンドファーム

次に訪れたのはダルデスハイム市という旧東ドイツの町です。ダルデスハイムには、30基余りあるウィンドファームがあり、自動車のガソリン以外は電力を自給自足しています。

ダルデスハイムでは、再生可能エネルギーが雇用と地元需要を生むと憂いことを知りました。

ウィンドファームは、管理を地元の若者8名のクルーで管理しています。それを、ウィンドファームを作る条件としたというのです。また、修理や建設に必要なものは周囲の地域から調達することを決めていますし、基金に出資参加できるのは地域の人に限定もしているのです。また、修理や建設に必要なものは周囲の地域から調達することを決めていますし、基金に出資参加できるのは地域の人に限定もしているのです。

最新式の風力発電機

実際に、ウィンドファームも視察させてもらえました。ダルデスハイムには二枚羽根の最初の風力発電装置もまだ残っており、最新型との対比も面白かったですが、広い野原に30基ほどの風力発電装置が林立している風景は圧巻でした。直径40メートル深さ数メートルという基礎の上に、リング状のコンクリートを積み上げ、溶接をしていって塔を作ります。2MWの風車が30基、6MWが1基で、合計66MW、年間 1300万キロワットアワーを発電しています。

ダルデスハイムには今多くの国から視察団が訪れています。

写真

ダルデスハイムの市内の風景・屋根の上には太陽電池、広場には電気自動車

ベルリンの視察で、感じたことですが、再生可能エネルギーは、人口密度が低く、広大な土地はあるが産業が余りない地域に、多くの雇用と需要をもたらすということです。

再生可能エネルギーの買取によってその分電気料金が上がりますが、それは国民が等しく負担するということになります。さらに、もっと正確に言えば、大電力消費地である都会の人々がたくさんの負担をして、発電地域が利益として受け取るという冨の再分配が行われることを意味していると思いました。

再生可能エネルギー設備で、確実に利益が上がることから、広く個人や地域が再生可能エネルギー施設を建設した結果、短期間に大きな発電装置を建設したのに等しい効果を生み出しました。

特に、太陽光発電は、今問題となっている電力消費時のピーク時に逆に発電量もピークに達するため、むしろ、昼間は電力が余ってしまうような状態が作り出されています。

このため、今ドイツでの課題は、日中作り出された過剰な再生可能エネルギーをいかに蓄電して夜間に生かすかというものです。

すなわち、ドイツの今の課題は、蓄電なのです。蓄電技術の競争が今行われています。

ブランデンブルク門

ベルリンでは、日本が再生可能エネルギーの宝庫であるという指摘を受けました。確かに、日本には海があり、地熱があり、風が吹き、日照時間もあります。特に、北海道は、人口密度が小さく、広大な土地があり、かつ日照時間が長くて寒冷(太陽電池は寒いほど効率が良いのです)で積雪が少ない道東地域があります。大都会で十数人の雇用が増えても大きなことではないかもしれませんが、過疎地で十数名というのはその家族を含めて考えるとかなり大きなインパクトになるはずです。

北海道はまさに再生可能エネルギー基地として最適ではないか。そう思って、ベルリンの視察を終えました。

再生可能エネルギーの買取によってその分電気料金が上がりますが、それは国民が等しく負担するということになります。さらに、もっと正確に言えば、大電力消費地である都会の人々がたくさんの負担をして、発電地域が利益として受け取るという冨の再分配が行われることを意味していると思いました。