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2013/01/29

札弁写真同好会(SPEC)始動

鬼頭 知一(きとう ともかず)

広報委員会

同好会の結成経緯 「折角なら、みんなで写真旅行に出掛けてみませんか?」。
札幌弁護士会で行われた研究会後の打上げの席で、高橋剛弁護士と写真の話で盛り上がっていた何人かの弁護士から飛び出したこの一言が、「札弁写真同好会」結成の切っ掛けとなりました。

高橋弁護士は長く写真をやっておられ、魅力的な多くの写真を撮影されているのですが、打上げの席で、高橋弁護士から写真の魅力を伺っていた弁護士の間に、自然と「自分も本格的に写真をやってみたい。」という気持ちが高ぶってきたのです。

また、写真は、撮影することを口実に、雄大で美しい自然に触れる機会を提供してくれるものでもあることから、北海道に住んでいる以上、時には壮大な自然の中に足を運んでみたいという気持ちを抱いたのかもしれません。

所属事務所も所属委員会も違い、私を含め、本格写真をやったことがない弁護士も多かったのですが、こうして話が盛り上がったのも何かの縁と、「折角なら同好会を結成しよう。」「それなら結成記念の撮影旅行に出掛けよう。」と、話はとんとん拍子で進んでいきました。

結成記念撮影旅行~旅の企画~
早速、打上げに出席されていた弁護士間で日程調整を行ったところ、幸運にも、平成24年9月初めに皆さんの都合がつきました。

旅先には、名所の多い「富良野」と「美瑛」を選びました。

輝く太陽の下で、全国的にも有名な撮影スポットである富良野や美瑛を、どうやって撮影しよう、一体どんな写真が撮影できるのだろうかと、日を追う毎に期待は高まっていきました。

~撮影旅行1日目~
平成24年9月8日土曜日朝8時、本井孝史弁護士の運転する大型のレンタカーに、本井弁護士を含めた総勢7名の会員が乗り込み、記念すべき撮影旅行がスタートしました。

天気は晴天。道央自動車道は混雑もなく快調。撮影旅行に合わせて購入した真新しい一眼レフを自慢し合いながら、写真話に花が咲く車内。

そんな楽しい雰囲気も手伝って、1番目の目的地である三笠市の「桂沢湖」には、あっという間に到着しました。

滔々と水を湛える湖を前に、皆、思い思いに写真を撮りました。殆どの弁護士が初めての本格写真ということもあり、一眼レフの操作に難渋する場面もありましたが、各々満足できる写真を撮影できたようでした。


その後、幌子芦別川(ほろこあしべつがわ)にかかる「三段滝」での撮影を経て、上富良野トリックアート美術館に隣接するバーベキュー・テラスにて昼食。撮影アングルや露出設定等の話に花を咲かせながら、気持ちの良い青空の下で焼き肉を楽しみました。

日が高くなった午後の撮影は、「美瑛の丘」から始まりました。テレビCM等でもお馴染みの、なだらかな丘陵に沿うように流れる緑の柔らかな曲線を前に、慎重に光量を調節しながら、様々なスタイルでの撮影が行われていました。


流石に美瑛は撮影スポットが多く、名所を回りながら撮影場所を選定している内に時間が経過していき、1日目最後の撮影場所である十勝岳の「望岳台(ぼうがくだい)」に向かう頃には、日が西に傾き始めていました。

望岳台に到着すると、丁度、夕暮方の淡い赤色に空が染まる時間帯でしたが、微妙な色合いを写真に閉じ込めるのが思いの外難しく、皆、中々思うような撮影はできなかったようでした。

~設立総会~
1日目の撮影を終えて、美瑛町白金(しろがね)にある宿泊先に到着したのは日も暮れた午後6時。加水・加温の一切無い天然温泉にどっぷりと浸かって疲れを癒やした後、小宴会場にて設立総会を開催しました。

コース料理に舌鼓を打ちつつ、「これからこんな活動をしてみたい。」という夢を交換し合いながら、同好会としての形作りがされていきました。

まず、撮影スポットや撮影技術等を、惜しみなくお教え下さる高橋弁護士には、同好会の「顧問」に就任して頂くことになりました。また、同好会結成の音頭をとって下さった南知里弁護士には「部長」にご就任頂き、卓越した運転技術を誇る本井弁護士と、細々とした手配が好きな私が「幹事」ということになりました。

次に、同好会の名称についてですが、「写真を楽しむ札弁写真同好会」というニュアンスを元に、「Satsuben Photography for Enjoyment Club」の頭文字を取って「SPEC(スペック)」と名付けることになりました。

その他、(1)年に1回、撮影旅行に出掛けること、(2)年に4回、各々が撮影した写真の「成果報告会」を開催すること、(3)「SPEC賞」を作って、年に1名の受賞者を選出すること、(4)3年以内に「個展」を開催し、5年以内に「写真集」か「カレンダー」を制作することを目標とすること、等が賑やかな空気の中で次々と決議されていきました。

設立されたばかりのSPECで、これからどんな活動をしていこう。場所を部屋に移してからも話は尽きることはなく、一日中の運転による疲れから既に熟睡している本井弁護士の隣で、遅くまで色々な企画案が飛び交いました。

~撮影旅行2日目~
2日目の撮影は、ホテルの直ぐ近くにある「白ひげの滝」から始まりました。

天気は生憎の小雨。大きく崩れる前に、できるだけ多くの撮影スポットを訪れるべく、白金にある「青い池」「不動の滝」と、テンポ良く撮影して回りました。


1日目の撮影が遠景中心だったのに対し、2日目は天候が優れず光量が少なかったこともあり、「滝の飛沫に輝く苔むす岩」や「湖面に映る立ち枯れた唐松」等、比較的近景の撮影が中心となりました。近景の撮影では、湖面ギリギリにカメラを構えてみたり、苔の上で粒になっている水玉の間近まで寄ってみたり、鮮やかな色彩の花を草木の隙間から覗き込むように捉えてみたりと、1日目以上に、様々な角度、場所での、個性的な撮影が行われていました。


撮影が一段落したお昼前、白樺街道沿いのカフェでコーヒー・ブレイクを取った後、写真のお手本を鑑賞して腕を磨くべく、美瑛の前田真三(まえだしんぞう)写真ギャラリー「拓真館(たくしんかん)」を訪れました。

前日同じ場所に立って撮影した筈の「美瑛の丘」。しかし前田真三の写真には、自分達の写真とは全く違った、圧倒的な情感が溢れていて、皆、ギャラリーの写真を前に言葉を呑んでいました。同じ被写体であっても、どう撮るのかによって、こんなにも見る者の心に与える印象が違ってくるのかと、良い意味で衝撃的な体験をしました。

「拓真館」での鑑賞を終えると、時間は昼下がり。私たちの撮影の終了に合わせるかのように雨足が強くなったことを受け、今回の撮影はこれまでとし、「富良野ワイン工場」での豪勢なランチで旅を締め括ることにしました。富良野を見下ろす小高い丘の上でとったランチの味わいは、この旅の締め括りに相応しく、実に芳醇で奥深いものでした。

成果報告会撮影旅行から10日が経過した平成24年9月18日、各々の撮影成果を報告するべく、弁護士会館近くのレストランで「成果報告会」を開催しました。

報告会では、それぞれが「最大で3枚の自信作」を、「2Lサイズ(12.7×17.8センチ)」で持ち寄り、その写真の「画題」と「撮影時のデータ」を発表していきました。

同じ場所を訪れて、同じ風景を撮影した筈なのに、できあがった写真が与える印象は、どれ一つとして同じものはありませんでした。

画角、構図、色彩の捉え方、露出、絞りや露光時間の調整等々、無数の要素をどのように取捨選択していくか。その選択に撮影者の感性が滲み出ており、時に驚きや感嘆をもって、皆、それぞれの写真を鑑賞し合いました。


中でも、顧問の写真はひと味違っていました。同じ被写体を撮影したとは、俄には信じられないくらいの荘厳な「白ひげの滝」。お話によれば、ホテルでの設立総会の余韻に浸って、皆が深い眠りについていた早朝、日が出る前からカメラを構えてシャッターを切った作品との由。まるで絵画のような、滑らかな清水の流線と、澄んだコバルト・ブルーの川面に、皆魅了され、写真の難しさ、奥深さを感じるとともに、「良い写真を撮影するためには努力が必要。」という、撮影の基本姿勢を教わることにもなりました。

こうして、撮影旅行の思い出話で盛り上がりながら、それぞれが、次の撮影への課題を見つけつつ、報告会の愉しいひとときが過ぎていきました。

写真の魅力私自身、SPECでの活動前には、写真のことは全く分かりませんでした。以前は、漠然と、一眼レフを構えている姿は格好が良いなという程度の、仄かな憧れがあったに過ぎません。

しかし今回、写真同好会結成の話が出たのを切っ掛けに、本格的に写真に踏み出してみて、今ではその奥深さや面白さに、すっかり魅了されています。

写真を撮るようになって、日々目にする景色は、以前とは全く違ったものになっていきました。冬の訪れを告げるように鮮やかに紅葉した大通公園の木々。夜景を反射しながら輝く噴水の水。母親と遊びながら破顔する子供たちの微笑ましい姿。目にするものに対する感度が上がり、自分の周りには、こんなにも心揺り動かす景色があったのかと、身近に溢れている感動に気付かされることが多くなりました。

写真を始めたばかりの私が言うのも烏滸がましいのですが、写真の根源は「被写体に抱く感動」なのだと思います。「綺麗な写真、美しい写真、感動させる写真を撮影せねば。」と血眼になるのではなく、景色との出会いを求めて、ふらっと心を日常から離脱させてみる。心が揺り動かされるような景色と出会えれば儲けもの。余韻に浸って素直にシャッターを切ってみる。そこには自分を取り巻く世界を認識して、生きとし生けるものや世界の尊さを実感できる、とても得難い、贅沢な時間があるように思います。


これからのSPECでの活動を通じて、少しずつ写真の腕を上げていき、いつの日か、自分の感じた感動を、写真を通じて色々な方々にお裾分けできればと感じています。