2014/12/18

第57回日弁連人権擁護大会プレシンポジウム報告

広報委員会

よつば法律事務所 阿部 泰

平成26年9月13日に教育文化会館において「精神障害者の地域生活移行とその課題~社会的入院の解消と地域で暮らす権利の実現に向けて~」というテーマで第57回日弁連人権擁護大会プレシンポジウムが開催されました。

第57回日弁連人権擁護大会プレシンポジウム報告

このプレシンポジウムの定員は150名でしたが、当日は、定員を大きく超え、障害当事者や福祉職の方をはじめとして200名以上の方が参加してくださいました。

まず、札幌弁護士会の田村会長より挨拶があり、本プレシンポジウムの趣旨について、平成18年に国連で採択され、我が国が平成26年1月に批准した障害者権利条約の趣旨をふまえ、精神障害があって入院している方々が地域社会にスムーズに移行し、地域で暮らす権利を実現していくため、現状はどうなっているか、さらには問題や課題は何か、そして解決のためにどうしたらいいかということに焦点を当てて、整理をし、議論を深めていくことであるという話がありました。

次に、北海道大学名誉教授である小山司様から基調講演がなされました。基調講演では、統合失調症の診断基準、統合失調症の予後についてなど、医学的な観点の話や、地域で暮らす患者さんを支え、再発を予防するための新たな試みの話がなされました。特に印象的だったのが、チェコでは、週に1回、患者さんが携帯電話でチェック項目に回答をし、再発の兆候があるときにアラートが送信され、対処するというシステムがあり、これで再発率が大幅に下がったという話でした。

次に、株式会社north-ACT代表取締役の中村慎一様より株式会社north-ACTの活動について等の報告がなされました。ACTとは、Assertive Community Treatment の略で、多種職の専門スタッフで構成されているチームが在宅で支援を提供するというプログラムの1つであるという説明がありました。また、ACTは全国で19チームぐらいあること、札幌でのnorth-ACT立ち上げ以前は、北海道では帯広のみがACTを実践していたこと、札幌でも精神科訪問看護ステーションはあり、その他、ACTと同じような活動をしている事業所もあることなどの説明がなされました。

札幌での、このACTの取組みがうまくいくと、家族による受入が難しい患者さんたちの地域生活の可能性が広がると感じました。

札幌弁護士会の高齢者・障害者支援委員会 副委員長・同シンポジウム実行委員長 齋藤健太郎弁護士

10分間の休憩をはさみ、パネルディスカッションが行われました。
パネルディスカッションでは、パネリストとして、中村慎一様、帯広の医療法人社団博仁会メンタルクリニックゆう院長の鎌田裕樹様、北海道精神保健福祉士協会副会長の佐藤志津様、精神障害当事者でピアサポーターの佐藤聡様が務められ、コーディネーターとして札幌弁護士会の齋藤健太郎弁護士が担当しました。パネルディスカッションでは、長期入院を余儀なくされている現状、社会的入院を解消することができない要因、地域移行の先進地域と言われる帯広の取組み、認知症の強制入院患者が増えている要因、地域で働くことの重要性などについて意見交換がなされました。

最後に、札幌弁護士会高齢者・障害者支援委員会末長宏章委員長より閉会の挨拶があり、プレシンポジウムが終了しました。

プレシンポジウムの感想としては、定員を超えて多くの人が来てくださったことにより、来場者に窮屈な思いをさせてしまったことはありましたが、多くの人に社会的入院の問題について考えていただけたと思うので、そのことはよかったと思います。アンケートでも、精神障害当事者の生の声や現場の話を聞けて良かったなど、プレシンポジウムに満足したという内容のものが多かったように思います。

私個人としても、統合失調症について医学的な事実を知ることができ、大変勉強になりました。

そして何より、「私たちは社会のお荷物なんですか。それとも、社会に必要のない人間なんですか。私たちは社会で生きていってはいけないのですか。」という、当事者の方の言葉が、特に印象に残りました。

強制入院が必要なときはありますが、治療の必要性がなくなったにもかかわらず、漫然と長期になるのは人権侵害であり、私たち弁護士もそれを防ぐ役割を担わなければならないと、改めて感じました。