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2018/11/28

死刑制度に関する勉強会第4弾の実施報告

死刑廃止検討委員会

第1 はじめに

 2018年7月20日(金)17時30分から20時までの約2時間半にわたり、札幌市教育文化会館において、「死刑を考える上映会」と題し一般の方々に向けた勉強会(以下「本勉強会」と言います。)を実施しました。
 本委員会では、札幌弁護士会において今年度中に死刑制度の廃止決議を採択することを目指しておりますが、本勉強会は、広く一般の方々に死刑制度の具体的な内容について認識してもらった上で、死刑制度に関する国民の議論を更に活性化させ、2020年には日本において死刑制度を廃止したいという趣旨で実施いたしました。

第2 本勉強会の内容

  1. 本勉強会の構成
     本勉強会は2部構成で行いました。
     第1部では17時30分から19時30分までの間、小林薫、西島秀俊主演の「休暇」という映画を上映しました。
     第2部では19時30分から20時までの間、本委員会の委員長である薄木宏一を講師として、「死刑廃止に向けた取り組み」と題する講演を行いました。
  2. 第1部
     第1部で上映された「休暇」という映画は、2008年に制作された吉村昭氏の短編小説を原作とする映画で、上映時間は約115分程度でした。
     映画の概要は、死刑制度を中心として、刑務官及び死刑囚のそれぞれの立場からの苦悩、恐怖、死刑の執行直前から執行に至るまでの刑務官及び死刑囚のやりとりや死刑執行の現場を具体的に描写して、死刑制度の存否を問うとともに、命に対する尊厳を描くというものです。
     弁護士としては、特に、死刑執行の現場の具体的な描写を通じて、現行の日本の死刑の執行方法や、そもそも死刑制度の存否について再考する契機となる作品だったと思います。
  3. 第2部
    • (1)第2部では、まず始めに、薄木委員長より、第1部で上映した「休暇」の死刑執行の現場の描写を前提に、日本の死刑執行に関する説明がありました。日本の死刑執行は、執行に至る直前に、死刑囚の信仰に基づき仏教かキリスト教の教誨師による教誨が死刑囚に対し行われ、その後、太政官布告で定められた方式で死刑囚に目隠し等がなされ、死刑囚は処刑場まで連れて行かれ、3人の刑務官が3つのボタンを同時に押し、いずれかのボタンによる起動の元、死刑囚の足下の扉が開かれ、死刑が執行されことになります。その際には、死刑囚につながれているロープが切れないよう死刑囚の体を支える役も配置されることになります。
    • (2)続いて、薄木委員長より、アメリカと日本の死刑に関する違いが説明されました。
       日本では、死刑に関する情報が公開されることはほとんどありません。また、死刑確定者は、単独室に隔離され、社会と繋がることもできず、死刑の執行を待つだけとなります。さらに、日本では、近年、死刑について問題となった裁判はあまりなく、昭和23年3月12日に最高裁判所において絞首刑は残虐ではないと判断された裁判があるにすぎません。
       これに対し、アメリカでは死刑に関する情報がオープンに公開されており、特に、被害者、死刑確定者の家族、マスメディアに対しては死刑の執行が開示されており、また、マスメディアは、死刑確定者に対しインタビューを行うこともできます。さらに、アメリカでは州ごとに死刑制度の存置が議論されており、2008年には、静脈注射による死刑執行を存置している州における静脈注射という死刑の執行方法が残虐ではないかという争点を巡った合衆国最高裁判所の裁判があり、結論としては、残虐ではないとされたものの、アメリカでは、裁判においても、活発に死刑に関する議論がなされていることが伺えます。
       さらに、薄木委員長からは、人間が人格を変化させることは難しいものの、社会の繋がりによって、人格が変化することがあるのではないかとの指摘がありました。
       具体的には、アメリカでは、死刑確定者が社会と繋がることができるおかげで、死刑確定者は、自らの罪を省みるようになり文集を発刊して、アムネスティ・インターナショナルに当該文集を購入してもらい、当該購入費用で基金を作って、被害者に対する被害弁償を行うという活動を行っている死刑確定者もいるようです。
       このような活動は、社会と繋がることで初めて行うことができるもので、現行の日本の死刑確定者に対する処遇について、再考する必要があるのではないかと思います。
    • (3)最後に、薄木委員長より、日本弁護士連合会や札幌弁護士会での死刑問題に関する取り組みの説明がありました。

第3 終わりに

 本勉強会には、大通公園のビアガーデン開催初日で、かつ、金曜日であるにもかかわらず、約110名の方々に参加をいただくことができ、また、映画が上映された後の講演会にも、そのままほとんどの方に参加していただくことができました。本勉強会では、勉強会に参加していただいた方々を対象に、死刑に関するアンケートの記載を実施したのですが、多くの方々に熱心に記載していただくことができました。また、本勉強会では、マスメディアの撮影もあり、講演会終了後には、約20分にわたり薄木委員長に対する個別のインタビューがなされました。
 直近に、死刑の執行があったためもあってか、一般の方々の死刑制度に関する関心が高いものであることが実感できました。
 一般の方々はもちろんですが、死刑制度は、法律家であり、特に刑事被告人と向き合う我々弁護士こそ主体的に検討し国民に是非を問うべき問題であると考えます。そのためにも、多くの会員の方々には、本委員会の勉強会に参加していただき、死刑制度に関する知見を更に深めていただきたく思いますので、今後の勉強会についても、皆様の積極的な参加をお願い申し上げます。

以上