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2018/11/28

死刑制度に関する会内勉強会第3弾実施報告
もっと議論を!

死刑廃止検討委員会

第1 はじめに

 2018年6月15日(金)18時から約2時間にわたって、弁護士会館において、死刑制度に関する会内勉強会第3弾を実施いたしました。
 当委員会では、今年度中に札幌弁護士会による死刑制度の廃止を求める決議を採択することを目指しており、死刑制度に関する会内の議論をさらに盛り上げるべく企画した会内勉強会の第3弾です。

第2 勉強会について

  1.  これまでの第1弾、第2弾は、いずれも外部講師をお招きしてご講演いただきましたが、今回は、当委員会の委員が、死刑存置派から死刑廃止に向けられた疑問に対しお答えするという形式で実施いたしました。
     死刑存置派から死刑廃止に向けられる様々な疑問、批判を、①誤判とえん罪、②刑罰論、③死刑と抑止力、④世論調査、⑤国際関係、⑥被害者関係、⑦代替刑、⑧弁護士会内議論、という8つのテーマに分類し、司会の近藤委員から疑問点を示してもらい、薄木委員長をはじめとする当委員会の委員がひとつひとつ資料などを基に答えていきました。

  1.  原稿作成者は、実は死刑廃止検討委員会に所属するのは初めてであり、無関心派に分類されるのでは無いかと思っています。
     死刑存置派から向けられる疑問に首肯できるものも多く、それゆえ、今回、疑問に対する答えを聞いて、死刑廃止についての理解が深まったと感じています。
     いくつか、印象に残った疑問と答えをピックアップさせていただきます。

    • (1)死刑廃止論者は、誤判やえん罪の危険を挙げるが、例えば現行犯で争いの無い場合などには誤判やえん罪の危険は無いのでは。
    • →確かに、犯人性という点においては誤判やえん罪の危険は無いかもしれないが、責任能力や量刑などの点においては、やはり誤判やえん罪の危険は否定できない。

     なるほど、確かにえん罪などというと、すぐ犯人性に頭が行ってしまいますが、量刑に関する誤判の危険性、手続保護の不十分さ等を考えると、誤判による死刑の可能性は否定できないと思いました。

    • (2)世論調査によると、国民の8割が死刑制度を支持しているのでは。
    • →世論調査は、質問の仕方によって回答が大きく変わりうる。
      内閣府の調査は、死刑存置に向けた誘導になっているのでは。

     世論調査では、近年死刑存置派の割合が増えているようにみえますが、そのすべてがごりごりの死刑存置派というわけではなく、条件付き死刑廃止派なども含まれており、世論調査の割合だけに拘ることは、かえって議論の方向性を見失わせるとのことでした。
     当委員会も、2018年6月18日付で会員に向けてアンケートを実施しており、意見聴取やその結果に対する分析などを慎重に行う必要があると実感しました。

    • (3)被害者遺族の声に真摯に耳を傾けるべきでは無いのか
    • →被害者遺族の峻烈な感情は理解できるし、自分が被害者遺族となったときに気持ちを抑えられるかどうかわからない。
      ただ、犯罪の事実は不合理、不正、法の規範は合理、正の世界で無ければならない。人を殺したから法が殺すのでは、法を堕落させる。
      その上で、被害者保護はより手厚くすべき。

     正直、原稿作成者としては、被害者遺族の感情を考えたときに、死刑廃止とは言えないのではないかと考えていました。
     ですから、この点について、「自分が被害者遺族となったら気持ちを抑えられるかどうかわからない。」との率直な三木委員の答えに少なからず驚かせられました。
     その上で、団藤先生の言葉を引用されて、「人を殺したから法が殺すのでは、法を堕落させる。」との答えに、死刑廃止の本質を見たように思います。
     どのような理由があろうとも、人が人を殺すことは許されず、被害者遺族の声をもって死刑存置の根拠とすることは、被害者遺族の立場も落としてしまうことになるのではないかと思いました。

    • (4)弁護士会内において、死刑廃止について十分な議論が尽くされたのか。極めて不十分ではないか
    • →廃止派からの意見のみを押しつけるつもりは無く、議論をぶつけ、理解を深めたいと考えており、むしろ存置派の方こそ勉強会に参加してほしい。
      総会決議=会員総意ではないことは市民にも伝わっており、総会決議を行うことで、死刑存置派の思想、良心の自由を侵害しないのではないか。
  2.  最後の会内議論については、参加者からの質問もございました。
     「従前、当会では、一定の結論を目指すものでは無く、議論を行うことが目的とされてきたはず。それが今回、死刑廃止を目指すものとして、目的が明確に変わっている。それはなぜか。」というものです。
     これに対し、三木委員からは、「日弁連の福井宣言(2016年人権擁護大会)等も踏まえ、これまで勉強、議論を重ねた結果、当会としても廃止に向けた決議をすべき時期ではないか、時機が熟してきていると考えている。」との答えがありました。
     当委員会では、今年度中に札幌弁護士会による死刑制度の廃止を求める決議を採択することを目指しています。
     しかし、それが一方的な立場の押しつけであってはならず、一人でも多くの会員の理解と賛同を得た結果であるべきだと考えております。
     佐々木副会長、薄木委員長からの挨拶にもあったように、今後、より一層、会内外を問わず、死刑廃止に向けた議論を深める必要があると実感いたしました。

第3 おわりに

 死刑廃止は、廃止派の考えのみでは進められず、存置派との議論、理解があってこその運動であり、今回の会内勉強会において、死刑存置派からの疑問とそれに対する答えは、死刑廃止に向けた議論、理解を深める手助けになったものと確信しています。
 今後も、より一層議論を盛り上げるべく、勉強会を重ねていく予定です。

以上