古今亭志ん生という落語の大名人がいました。
高齢となり、高座で寝てしまったことがあるのですが、お客さんが起こさなくて良い、その寝ている姿を見ているのが良い、と言ってそのまま寝かせておいたというエピソードがあります。
弁護士の中にも、依頼者の方への説明などで、ベテランになるとある種、名人的な雰囲気が漂う方がいらっしゃいます。
私はまだ6年目ですので、とにかく説明を詳しくして、出来る限りの情報を伝えたうえで、依頼者に判断して頂くということが多いです。
それは当たり前といえば当たり前のことなのですが、時には丁寧すぎる事でかえって依頼者の方が判断しづらくなるということもあります。その兼ね合いは非常に難しいと思わずにはいられません。
これまで何度か先輩と一緒に仕事させて頂いたことがあるのですが、ベテランの先生が、たった一言、二言でお客さんが納得される場面を見たことがあります。
横にいて「え、それで良いの!?」と内心思ってしまったこともありました。
私も、これはあれこれ説明せず、すっとこれで行きましょう、と言えればと思うときはありますが、そのタイミングは難しく、正直、やはり言葉が足りなかったことで誤解を招くのが怖いという部分があり躊躇してしまいます。
もちろんベテランの先生だからといって、手を抜くとかではなく、必要なときは丁寧にやられています。
おそらく、お客さんとの長い期間の付き合いで、そこで培った信頼関係がそうさせているということが大きいのでしょう。
弁護士に頼むことは少ない方が良い、というのが私の持論でして、長く付き合わずに終わることが良いと思いますが、もしそうなったときに通じ合える関係があれば良いなと思います。
もちろん、説明が少ない!と思ったときは遠慮無く聞いてみてください。
それで怒る方がいればそれは名人ではないのでしょうし、むしろよく聞いた方がいいでしょうから(笑)。
弁護士は専門業である要素が強いので、プロでなければいけないと思っておりますが、なかなか名人という域にはほど遠いです。ただ、名人とまではいかなくても、一生懸命必死でやることで、ほとんどの場合は良い方向に結論が導けるのではないかと思っています。
落語家で、昭和の爆笑王といわれた先代の林家三平には、晩年病床で意識が混濁したときに、医師から「しっかりしてください、あなたの御名前は?」と呼びかけられて、
「加山雄三です」
と答えたというエピソードがあります。
そんな状態でも最後まで笑いを取ろうとする、24時間落語家であったという話を聞いて、私はプロフェッショナルだと思ってしまいました。
24時間弁護士であることは、正直辛いなと思ってしまいますが、出来るだけプロフェッショナルでありたいと思いつつ日々業務をしております。