最近,クレジットカード会社の約款を読み込まなければならないことがありました。少ない紙面にたくさんの情報を載せようとするとどうしても文字の大きさは小さくせざるを得ません。しかし,あまりに細かい文字がびっしりと並んでいるのを見ると気後れしてしまう方も少なくないのではないでしょうか。私は若干乱視があるので,細かすぎる文字は目が痛くなってしまいます。
ところで,私達弁護士が取り扱う法律の世界でも文字の大きさについて一定のルールがあるのをご存じでしょうか。
消費者による無条件の契約解除(クーリングオフ)の制度を定めている特定商取引法という法律があります。この法律は,例えば訪問販売などでうっかり必要のない高額商品を買ってしまった場合などには便利な法律です。契約書を受け取ってから一定期間(訪問販売や電話勧誘販売については8日間)であれば,一方的に契約を解除できます。もちろん受け取った商品は返さなければなりませんが,その費用も売った側の負担になります。
ただし,この制度,買い手側が契約の内容をすぐに理解できないようでは意味がありません。そこで法律の世界では,一定の条件を整えた契約書等が交付されて初めて,クーリングオフ期間がスタートすることにしました。
その条件の1つに文字の大きさがあります。具体的には,契約書等に,枠と文字を赤色にして,日本工業規格z8305に規定する8ポイント(2.82mm)以上の大きさでクーリングオフについての説明が記載されていなければ,一定期間が経過していてもクーリングオフができます。
文字の大きさについての規定は,狂犬病予防法やゴルフ会員権の契約を規制する法律などの法律や食品表示に関する条例などにも見られますが,これらの場合も8ポイントが基準になっているようです。
一般的な文書の場合,文字の大きさは10~12ポイント(3.53mm~4.23mm)くらいの場合が多いようですので,それに比べるとやや小さめですが,法律を作った国会議員の先生達はこれくらいなら問題ないと考えたのでしょう。
ちなみにこの記事は約10ポイント(3.5mm)で記載されています。この記事の文字を読むのがやっとという方は,大事な文章を見逃すことが無いようにご注意ください。