裁判員裁判が平成21年に行われるようになってから3年が経過しました。日高報知新聞の読者の方の中にも裁判員に選任された方もいるかもしれません。
最近の裁判員裁判としては,今年の7月30日,大阪地方裁判所で,アスペルガー症候群の被告人の殺人事件について,検察官の懲役16年の求刑に対し,懲役20年の判決が言い渡されたことが多くの報道機関により報道されました。
具体的にどの様な刑を科すのかを量刑といいますが,この判決は,どの様な事情により量刑を判断するのかというのが問題になりました。
ですが,裁判員は,量刑だけではなく,被告人が犯人であるかどうかの認定も行うことになります。
では,被告人に同種前科,つまり,同種の犯罪を過去に行ったという事実があることから被告人が犯人であると認定して良いのでしょうか。
過去に同じような犯罪を犯しているのだから,また同じことを繰り返したのではないかと考えてしまいがちかもしれません。
しかし,それは偏見によるものであるおそれが強いといわざるを得ず,原則として同種前科があることから被告人が犯人であると認定することはできません。
この点に関して,先月7日に,最高裁判所で判決が言い渡されました。
この判決では,同種前科があることを被告人が犯人であると認定するための証拠にすることができるのは,同種前科の内容に「顕著な特徴」があって,新たに裁判が行われている事件と「相当程度類似」してるため,このこと自体で被告人が犯人であると認定することが合理的である場合に限って証拠にすることができると判示されています。
また,この判決では,盗みのために住居に侵入し,期待したほど金品がなかったために放火したという動機は「際だった特徴」ではないし,ストーブの灯油を撒いて放火するという方法も「さほど特殊なもの」とはいえないとして,被告人の同種前科を被告人を犯人と認定する証拠にすることはできないと判示しました。
日高報知新聞の読者の皆さんもいつ裁判員に選任されるか分かりません。これから先,裁判員に選任されたときには,似たような前科があるから犯人だろうと考えることは原則として許されないのだということを肝に銘じて臨んでいただければと思います。