ある日のAさんからの相談内容をご紹介します。15年前に,1年後に返してもらう約束で友人のBさんに100万円を貸したのですが,いまだに返してもらうことができません。Bさんは仲の良い友人なので,これまでは裁判沙汰にはせずにいたのですが,子どもの進学などでまとまったお金が必要になってきたので,裁判を起こしてでも返してほしいと思っています。
さて,このような場合に,裁判を起こして確実にお金を返してもらうことができるでしょうか。実はこの相談のケースでは,裁判を起こしたとしても,消滅時効という壁にぶつかってしまいます。消滅時効とは,権利の種類ごとに定められた時効期間内にその権利を行使しなかった場合,その権利が消滅してしまうというものです。今回のような友人間でのお金の貸し借りのケースでは,時効期間は10年とされています。したがって,返済期限から10年以内に借金の返還を請求しなければ,Aさんの権利は時効により消滅してしまうことになります。
では,Aさんが毎年借金の返済を求める請求書をBさんに送っていたという場合はどうでしょうか。実はこの場合でも,消滅時効の問題を回避することはできません。民法においては,時効期間内に「請求」をすれば,時効期間がリセットされて,再び一から進行することになっています。ところが,ここでの「請求」とは,訴訟の提起等の法的な措置を想定したものであり,単に請求書を送付していたというだけでは,時効期間はリセットされないのです。
今回のような貸金のケースでは,時効期間は10年と比較的長くなっていますが,権利の種類によっては,5年,3年,1年など,より短期間の時効期間が定められているものもあります。このように,比較的時効期間が短い権利については,請求を躊躇している間に時効期間が経過してしまうということも少なくありません。
長期間支払ってもらえないままになっているお金があるという方は,ご自身の権利を守るためにも,一度お近くの弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。