執筆:原 英士 弁護士
北海道内には30を超える数の簡易裁判所があり、日高管内には新ひだか町静内と浦河町に簡易裁判所があります。
- 民事調停について
民事上の紛争解決のため、簡易裁判所に対し、調停委員がそれぞれの当事者の言い分を聴いて具体的解決を図る「民事調停」を申し立てることができます。話し合いで争いごとを解決したいけど、話し合いの機会が持てない等の場合には、民事調停を申し立てることをお勧めします。 - 裁判について
簡易裁判所は、訴額が140万円を超えない民事上の請求について裁判権を有しています。特に、訴額が60万円以下の金銭支払いを求める場合には、1回の期日で審理を終了し判決を言い渡すことを原則とする「少額訴訟」という手続きもあります。このように簡易裁判所は、比較的軽微な案件を簡易迅速に処理するために設置されています。
「裁判」と聞くと大げさで遠慮がちになりそうですが、代理人に依頼すれば、当事者が裁判所に出向くことはほとんどありませんので、少額であっても債務者が支払いに応じてくれない場合等は、遠慮なく、お近くの弁護士にご相談ください。 - 支払督促について
簡易裁判所の裁判所書記官が担う重要な手続きとして、「支払督促」という制度があります。
支払督促とは、申立人の「金銭支払いの申立て」に対し、簡易裁判所の裁判所書記官が「金銭の支払い」を命じる制度です。支払督促は、裁判をしなくても、判決と同様、強制執行のための債務名義を取得できますので、金銭請求する場合、常に検討すべきです。
もっとも、支払督促は、債務者が法定期間内に異議申立てをすると、支払督促を申し立てた「債務者の住所地の管轄裁判所での訴訟手続」に移行してしまいますので、債務者が遠方にいる場合、安易に支払督促手続は選択すべきではありません。支払督促は、債務者が金銭支払いの原因となっている事実を争えず、単に支払いを拒んでいるだけで、異議申立てまではされないと予想される場合などに有用な制度といえます。
最後に、支払督促申立書を受けとった場合、身に覚えのない請求であっても、これを放置すると、支払督促が確定し強制執行が可能となる効力が生じてしまい、原則としてこれを覆すことはできませんので、万一、支払督促申立書を受けとった場合、放置せず、直ちに異議申立てを行うため、すぐにお近くの弁護士にご相談ください。