執筆:大谷 和広 弁護士
A子さんは結婚7年目の専業主婦です。夫は会社員、小学生の長女がいます。
ある日A子さんは、晩酌の用意が遅いと、夫から叱られました。夫は酒が進むうち、徐々に興奮し、暴れだしました。A子さんは身の危険を感じ、長女を連れて逃げました。
A子さんは知人宅に数日間かくまわれ、その後、夫のところに戻らない決意をしました。夫の暴力は、これが初めてではなかったのです。
A子さんは警察に行き、夫が連絡してこないよう、計らってもらいました。役場に行き、アパートと、当面の生活費を用意してもらいました。小学校と話し合い、長女を転校させました。A子さんは、親族や支援団体の助けで、このような事務作業を手際よく終えました。
こうしてA子さんと長女に、つかのまの平和が戻りました。しかし、重要な問題が残っています。夫との離婚です。
A子さんは、普段のきびきびした様子には似合わず、夫の前では、すくみ上がり、何も言えなくなります。結婚生活のなかで、いつしかそうなったのです。自分で夫に会って、離婚届へのサインをお願いするのは、無理な話です。
A子さんは、弁護士に相談することにしました。電話帳とスマートフォンで、「法律相談センター」の存在を知りました。数日後、相談に行くと、担当弁護士は、話を丁寧に聞き、答えてくれました。弁護士に離婚の手続を依頼するかと聞かれ、A子さんは、不安に思っていたことを尋ねました。「夫のことを考えるだけで過呼吸になりそうです。本当に縁が切れますか」。すると弁護士は、力強くこう答えました。「大丈夫。きっとできます。あなたがそう望めば」。
こうしてA子さんは、法律相談センターで出会った弁護士に、離婚事件を依頼しました。弁護士は、「法テラス」という国の機関に弁護士費用の借り入れの手続きをしたので、当面の支払はありませんでした。離婚手続は裁判になり、解決まで時間がかかりました。しかしA子さんの過呼吸は徐々に治まり、裁判が終わるころには、日常生活への支障はなくなっていました。
札幌弁護士会が運営する法律相談センターは、皆さまのお住まいの近く、電車やバスでも行ける場所にあります(静内・日高門別・苫小牧・浦河・様似・えりも)。平成25年10月1日から、相談料はかかりません。生活に困っている方は、法テラスで弁護士費用を借りることもできます。あなたの不安や苦しみを和らげる、お役に立てるはずです。ぜひご相談ください。