執筆:浦河ひまわり基金法律事務所
葉山 裕士 弁護士
「○○事件は本日時効をむかえました」「××容疑者が時効直前の本日逮捕されました」。
犯罪に関する報道で「時効」という言葉を耳にした経験のある方は少なからずいらっしゃると思います。
もっとも、犯罪以外の場面でも「時効」が問題となりうることを意識される機会は少ないのではないでしょうか。
例えば、だいぶ昔に知人にお金を貸していたのに、ずっと返済を受けていないような場合、相手がお金を借りていることを認めてくれていなければ、10年間を経過すると時効により権利が消滅してしまうことがあります(請求する権利の内容によって、また会社や事業者など権利の主体によっては、10年より短い期間で権利が消滅してしまうこともあります)。
この場合に、ずっと請求書を送っていれば時効にはならないと考えておられる方もいらっしゃいます。たしかに、法律上は「請求」によって時効は中断する、つまり今までに経過してきた期間はリセットされると規定されています。しかし、この場合の「請求」というのは、典型的には裁判を起こして「請求」をした場合のことを指していますので、請求書を毎月欠かさず、何十年も送っていたとしても法律上の「請求」とは認められません。
また、反対に貸金業者などからお金を借りてから長期間が経過しているにもかかわらず、突然借金の返済を催促されることがあります。このような場合に、借金があると認めてしまったり、借金を一部でも返してしまったりすると、本来であれば時効によって権利が消滅しているはずだと主張することができた場合であっても、そのような主張をすることが許されなくなってしまいます。現に、相談にいらっしゃる方の中にも、催促を受けて返済を再開してしまったがために、時効の主張ができず、自己破産など借金を整理するための手続を行わなければならなくなってしまった方もいます。
個人の方であれば人とのお金の貸し借り、残業代や給料の未払い、会社や事業者の方であれば売掛金や請負報酬等、相手に対して何か請求できる権利があるのにも関わらず、長期間支払いがないような場合には一度時効にかからないかどうか弁護士にご相談ください。また、逆に長期間接触のなかった相手方から突然借金の返済等を求められた場合にも、時効により請求を拒否できる場合もありますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
時効になっているかどうかはもちろんのこと、相手方への対応方法、具体的には請求の方法や反対に時効であるとして相手方の請求を拒絶する方法など適切なアドバイスが受けられるはずです。