執筆:浦河ひまわり基金法律事務所
葉山 裕士 弁護士
「交通事故を起こした加害者が自動車保険に入っていないようなのですが、どうしたらいいですか。」
不幸にして事故に遭われた方にとって、その損害をいかに回復するかということは極めて重要な問題です。しかしながら、事故の相手方が自動車保険に未加入だったという相談を受けることは少なくありません。
2012年3月末現在における北海道における対人・対物賠償保険の加入率は、およそ70%であり、全国平均を3%程度下回っています。加入率の資料からは大都市圏において加入率が高い傾向にあること及び当地における相談等で受ける実感から考えると、日高地方における加入率は北海道平均をさらに下回っていると予想され、事故の相手が自動車保険に未加入であるというリスクは他地域と比較しても小さくないものであると考えられます。
身体に生じた損害については、自賠責保険等により最低限の補償を受けられる可能性はあるものの、車に生じた損害については相手が自動車保険に加入していなければ、加害者本人に請求するしかありません。
もっとも、車に生じた損害といっても当然のことながら高額なものとなることが多く、相手に十分な支払能力がない場合も考えられます。そのような場合、自身が車両保険に加入していれば、車両保険から支払を受けることも考えられますが、車両保険の加入率は45%程度にとどまっているようです。
車両保険に加入していた場合、相手方からの支払を受けられないというリスクをカバーできることだけでなく、事故の責任をめぐって相手方と争いが生じた場合、相手方からの支払を受けるまでに時間を要する場合もあり、早期の支払を受けるために車両保険を利用するといったケースもありえます。保険料の負担は増えるものの万が一の事態に備えるためには車両保険への加入を検討する価値は十分にあるように思います。
このようにして、万が一の事故には事前の備えも重要ですが、実際に事故に遭ってしまった場合には、車だけでなく身体に対する賠償のことも考えなければなりません。自分は事故に対してどの程度の責任があるのか、どれくらいの支払を受けられるのかなど交通事故に関して疑問な点がありましたら、ぜひ一度お近くの弁護士までご相談ください。