執筆:ひだかひまわり基金法律事務所
原 英士 弁護士
今回は、遺産分割協議について、お話ししたいと思います。
人は、生活により、権利を有し、義務を負担することになります。例えば、権利には、不動産の所有権や、銀行の預金を引き出す預金債権などがあり、義務には、借金を返す義務や、税金を支払う義務などがあります。
人が亡くなると、人自体はいなくなりますが、亡くなった人の権利義務は消えません。「相続」という制度により、亡くなった人と一定の親族関係にある者(相続人)に、権利義務が受け継がれます。もちろん、「相続放棄」という制度により、権利義務を受け継がないこともできますが、財産が負債よりも多いときは、一般的に、相続人が、亡くなった人の権利義務を受け継ぐことになります。
「遺産分割協議」とは、亡くなった人の権利義務を複数の相続人が受け継いだ場合に、それをどのように分けるか、相続人間で話し合って決めることをいいます。預金債権などの可分債権は、遺産分割をしなくても、当然に法定相続分に応じて分割されますが、相続人全員の合意の上、遺産分割の対象にすることもできます。
遺産分割協議は、原則として、「相続人全員」で行わなければいけませんので、相続人が多数に及んだときは大変です。例えば、亡くなった人の多数の兄弟が相続人になる場合、多数の兄弟に加え、既に亡くなってしまっている兄弟の子も相続人になるので、それら全員で行う遺産分割協議は、長期化を避けられません。また、「相続人間でどの遺産をどれだけ取得するか」等について争いになった場合には、家庭裁判所に「調停」や「審判」を申し立てて、何年間もかけて遺産分割方法について争うこともあります。そのためなのか、遺産分割協議を思いとどまっているケースを、少なからず見受けます。
しかし、遺産分割協議をしないままだと、例えば、遺産になっている不動産を貸したりすることについて、その度に相続人全員の同意が必要になったり、また、遺産分割協議をしないまま相続人が亡くなると、その相続人(妻、子ども、孫など)に、面倒な遺産分割協議を押しつけることになり、亡くなった後に、親族に迷惑をかけることにもなりかねません。
「遺産分割未了のままだけど、このままで良いのか」、「遺産分割について、相続人間の話し合いが上手くいかない」など、疑問や悩み等がございましたら、ぜひ一度、ご遠慮なく、お近くの弁護士に相談してみてください。