執筆:ひだかひまわり基金法律事務所
葉山 裕士 弁護士
ご自身に万が一のことがあった場合に備えて、生命保険等各種の保険に加入されている方は数多くいらっしゃいます。
保険金の中には被保険者の生存中に受け取ることができるものもありますが、被保険者と受取人が同一である場合、被保険者の方が自身の意思を表示できない状態(例えば、昏睡状態など)になってしまうと保険金の請求が困難となります。
このような場合に備えて、あらかじめ指定した指定代理請求人が本人に代って請求することで保険金等を受け取ることができる指定代理請求制度というものがあります。既にこの制度を利用した特約を設定している方も少なからずいらっしゃることと思いますが、仮にこの制度を利用した特約を設定していなかった場合には、家庭裁判所に対して成年後見人等の選任を求める必要が生じます。
裁判所を利用した手続きであるため多少の準備が必要であることから、準備の煩わしさから保険金の請求に向けた動きが遅れてしまうというケースも見られます。せっかく家族のため、万が一に備えて加入した保険であるにもかかわらず、結局保険金の受領を円滑に進めることができず、家族が医療費等を負担せざるを得なくなるといった事態もありえますので、これを機にまずは一度保険契約の内容を確認してみてはいかがでしょうか。
さて、保険金として、まとまった金銭を受領した場合、その金銭の使い道をめぐって親族間でトラブルが生じることも少なくありません。成年後見制度はこのような場合にも役立てることができます。ご本人が自身の意思を表示できず、自ら適切な金銭管理を行えなくても、後見人等が裁判所等の監督の下、ご本人の財産管理を行うこととなるため、ご本人の利益にかなった財産管理を行うことができるようになります。
成年後見人等の選任申出は、ご本人のみならず一定範囲の親族の方も行うことができますので、親族の中に自身の意思を表示できない状態となった方などがいらっしゃる場合には、まだトラブルとはなっていなくても、どのような対応がありうるかについて、一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。
なお、成年後見制度を利用する場合には、裁判所において後見人が選ばれることとなります。自分の財産を管理する人は自分で決めたいという場合には、まだ自身で意思表示ができる段階で、任意後見人を選ぶという方法もありますので、このような制度に関心のある方もぜひ弁護士にご相談ください。