執筆:ひだかひまわり基金法律事務所
原 英士 弁護士
先日、新ひだか町にて、市民後見人養成研修に関与する機会がありました。そこで今回は、成年後見制度についてお話ししたいと思います。
私たちは、日常生活をはじめ、様々な機会に法律行為を行います。法律行為というと固いイメージがありますが、例えば、お店で商品を買うことも、売買契約という法律行為にあたります。この点、お店で商品を買うときは、それが本当に自分に必要な物なのか、収入等に見合った買い物なのか等を考えなければなりません。逆に、自分の財産を売るときも、売ってしまった後、生活するうえで自分に不利益が生じないか等を考えなければなりません。ところが、高齢による認知症などで、そのような判断ができなくなってしまい、騙されて、自分の財産を失ってしまうことがあります。そこで民法は、そのような方の財産を守るため、一方、日常生活に関する行為については、自己の意思を尊重するための制度として、「成年後見制度」を設けています。
成年後見制度は、家庭裁判所に成年後見の申立てを行い、成年後見人を選任してもらうことでスタートします。
成年後見人は、これまで、親族や、弁護士、司法書士等の専門職が選任されるのが一般的でした。しかし、親族がいない場合や、本人の資力が比較的少ない場合など、成年後見人の適切な担い手がいないケースがありました。また、高齢化に伴い、成年後見人を必要とする方の人口は潜在的に増加しています。そこで近年、市町村が主体となり、一般市民後見人を養成して、地域の後見ニーズに応えようとする動きが全国に広まっています。市民成年後見が広く普及し、多くの方が成年後見制度に関与する社会が実現すれば、悪徳業者に騙されて高額な買い物をして、本人が全ての資産を失ってしまう危険や、本人の資産や遺産をめぐる親族間の争い等も減ることになります。今後、市民成年後見人の養成により、成年後見人の担い手が増えることを期待したいと思います。
最後に、「成年後見制度の仕組みが知りたい」、「父母や兄弟姉妹が認知症になり、自分で財産管理できているかどうか心配だ」、「成年後見を申立てたい」等、疑問や悩み等がございましたら、ご遠慮なく、お近くの弁護士に相談してみてください。