執筆:ひだかひまわり基金法律事務所
原 英士 弁護士
「法律相談で一番多い相談内容は何ですか?」と聞かれたら、迷わず「借金の返済(債務整理)に関する相談です。」と答えます。それぐらい、債務整理の相談は多いものです。そこで今回は、債務整理についてお話ししたいと思います。
返済の契約をした以上、借りたお金は約束どおり返済しなければなりません。しかし、返済したくてもできない状況に陥ってしまうことがあります。そのような場合であっても、契約した以上、何が何でも約束どおり支払わなければならないということになると、債務者にとって過酷な人生になりますし、一方、債権者にとっても、債務者に自己破産免責手続を取られると、全く債権回収ができなくなってしまう可能性がありますので、両者にとって不都合です。そこで、債権者と債務者が話し合い、債務者の収支を踏まえ、支払いに充てられる金額を計上し、その金額の範囲内で分割支払いを行っていく方法が取られることがあります。この「話合いによる分割支払いの交渉」を「任意整理手続」といいます。
任意整理手続の依頼を受けたとき、弁護士は、まず、相手方に受任通知を出し、債務者がどのような取引をしていたかが分かるよう、債権者に「取引履歴」の開示を求めます。なお、受任通知を出すと、債権者のうち貸金業者は、債務者に対し直接請求することはできないことになっています。次に、取引履歴を開示してもらったら、現在の残高が法律上正しいものか、確認します。特に古くから取引が継続している場合、利息が法律上の制限を超えていることがあるので、計算が必要です(なお、長期間、貸金を返済していなかった場合、消滅時効制度を使って、債務全額を消滅させることができる可能性もあります。)。その上で、債務がある場合、債務を支払可能な金額で分割して、債権者に分割支払いの和解案を提示し、和解成立に向け、交渉することになります。
なお、時効により債務が消滅する場合を除き、任意整理手続を取ることができるのは、あくまで、借金を最終的には「全額」返済することができる見込みがある場合です。全額返済の見込みがない場合は、一般的に、法的手続(民事再生や破産免責手続)を取ることになります。
「借金を約束どおり返済できない」、「借金の取り立てで困っている」、「債務整理についてもう少し詳しい話が聞きたい」等、疑問や悩み等がございましたら、ご遠慮なく、お近くの弁護士に相談してみてください。