執筆:ひだかひまわり基金法律事務所
原 英士 弁護士
刑事弁護人について、「犯罪を行って逮捕された人を弁護するなんて、とんでもない」というイメージがあることは、良く聞く話です。
しかし、そもそも、逮捕された人が犯罪を行った人であるとは限りません。捜査機関は、被疑者が罪を犯したことを「疑う」に足りる相当な理由があり、被疑者が逃亡や証拠を隠滅するおそれがある場合、逮捕状の発付を経て、逮捕手続で被疑者を身体拘束することができます。すなわち、逮捕時点では、あくまで犯罪を行った「疑い」があるに過ぎません。
被疑者は、警察に逮捕されると、最長、逮捕から48時間、身体拘束されます。また、逮捕後、検察官が、警察による被疑者送致から24時間以内に勾留請求を行い、勾留が決定すると、その後、原則として10日間、身体拘束されます。この身体拘束が継続する間、捜査機関は、毎日のように被疑者を取り調べます。その間、弁護人以外の者と会うことを禁止されることもあります。被疑者は、このような状況で何日も取り調べを受けると、犯罪を行っていなくても、認めた方が自分にとって良いのではないかという思いになり、嘘の自白をしてしまうことがあり、その結果、犯罪を行っていないのに処罰されてしまうことがあるのです。このように、犯罪を行っていない人が処罰されないために、刑事弁護人が必要不可欠なのです。
また、逮捕された人が、真実、犯罪を行った者である場合であっても、刑事弁護人は必要不可欠です。なぜなら、根本として、捜査機関は国家権力を有しており、他方、被疑者は非力で、両者の力の差は歴然です。ある事件について、強い力を有している捜査機関のみから光を当てても、真実は発見できません。刑事弁護人が、捜査機関とは逆の方向から光を当てることにより、可能な限り真実が発見できるようになります。「人に罪を科す」という重大な結果を導く刑事手続においては、このように、捜査機関と刑事弁護人の双方から、光を当てるような適正手続が保障されなければならないのです。
自分あるいは身内が逮捕された場合、「当番弁護制度」で弁護士を呼ぶことをお勧めします。当番弁護士制度とは、弁護士が1回無料で逮捕された人に面会に行く制度で、どのように対応すべきか等をアドバイスしてくれます。また、勾留請求がなされた場合、一定の犯罪については、請求により、被疑者国選弁護人を選任することも可能です。
なお、法律相談において、自分や身内の刑事事件に関することを相談することもできますので、お近くの弁護士にご相談いただければと思います。
以上