執筆:浦河ひまわり基金法律事務所
小荒谷 勝 弁護士
今回は,落雪で生じる法律問題について取り扱います。
事例を考えてみます。自分の家や車が,隣人の建物からの落雪により壊れた場合,その隣人に対し,壊れた家や車の修理代を請求できるでしょうか。それとも,雪は隣人が降らせるものではなく,あくまで自然に発生するものであるから請求はできないのでしょうか。
本事例で考えるべき点は,損害が発生した原因である落雪が隣人の建物から生じている点です。法律上,建物の設置又は保存に欠陥があり,それにより他人に損害が生じた場合において,建物の所有者等は,その損害を賠償する責任を負う可能性があります。したがって,本事例でも建物に落雪にかかわる欠陥があれば,壊れた家や車の修理代を隣人に請求できる可能性があります。
建物の欠陥の有無を判断するにあたっては,建物の構造,場所的な環境,利用状況などの事情を総合的に考慮します。そして,建物の設備等が,通常想定される危険の発生を防止するに足りるものであるかを個別具体的に検討することとなります。これを降雪期の建物に引き直すと,屋根の構造(規模,配置,勾配,形状),落雪防止施設(有無,強度),建物周囲の使用状況,その地域の例年の降雪状況(積雪量,積雪時期),当年の降雪予報及び除雪作業の状況などをみます。その上で,落雪の危険性の程度,落雪した場合に考えられる具体的な影響などの観点から,建物が,落雪を防止するために,本来あるべき設備等を備えているか否かを検討していくことになります。
過去の裁判例では,①屋根上の雪止めが不完全であったこと②屋根の雪崩れ防止施設が脆弱であったことに加え除雪作業をしなかったこと③積もった雪を自己の敷地内において適切に処理する設備を有しないことが,それぞれ損害賠償責任を負う欠陥であると認定されています。
本格的な雪の季節に入る前のこの時期に,あらためて,ご自身の家の落雪防止設備が十分であるかどうかご確認いただければと思います。なお,実際に損害が生じてしまった場合,解決が難しいようでしたら,お近くの弁護士にご相談ください。
以上