執筆:ひだかひまわり基金法律事務所
原 英士 弁護士
「破産」と聞くと、一般的に、とても暗いイメージがあると思います。確かに、破産手続とは、自分の財産を換価して債権者に配当するという制度ですので、暗いイメージは否定できません。しかし、破産申立てを行う場合、破産者は、そもそも換価価値のある財産など保有していないことが多く、また、日常生活に必要な一定の財産は換価されないため、破産手続を申し立てても、すべての財産を失うわけではありません。
その上で、破産手続を申し立てる目的は、それと同時に申し立てる「免責手続き」にあります。「免責」とは、個人の破産者について、破産手続による配当がなされなかった残りの債権に対する責任を免除してもらうことを言います。
一般的に、借金等は返済しなければいけません。それにも拘わらず、免責手続きが制度として存在している理由(意義)は、「破産者の経済的更生」にあります。「経済的更生」とは、要するに、借金等の債務を負わないようにして人生をやり直すということです。日本は資本主義国家ですので、個人間の経済的格差はどうしても避けられません。それにも拘わらず、一度、支払不能な債務を負ったら、一生、その債務を負い続けるというのは、酷な話です。そこで、破産者が人間に値する生活を営む権利を保障するため、免責手続きが制度として存在しているのです。
もっとも、免責手続きを申し立てれば、どんな場合でも免責決定を受けられるわけではありません。免責手続きは破産手続を誠実に行った者に対する「特典」ですから、申立ての際、偽りなく、破産申立てに至る経緯や財産等を明らかにする必要があります。また、例えば、破産者が、浪費やギャンブル等で過大な債務を負担した場合や、以前にも免責決定を受け、その決定が確定してから7年以内に再度免責申立てをする場合などは、原則として免責は認められないことになっています。ただし、このような場合であっても、裁判所が、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮し、免責が相当と認めるときは、例外として免責決定を受けることができます。これを「裁量免責」といい、多くの破産者が、裁量免責により免責決定を受けているというのが実情です。
借金等の債務を抱えて生活がままならない等、経済的に苦しい思いをして悩んでいる方は、弁護士が的確な債務整理の方針を一緒に考えますので、まずは、お近くの弁護士にご相談いただければと思います。
以上