周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
札幌弁護士会広報委員会が平成27年7月からお送りしている「札幌弁護士会の知恵袋」。
第9回から第14回はこのコーナー初となる女性弁護士の登場です。ゲスト伊藤絢子さん、段林君子さんの女性ペアが離婚問題を縦横無尽に語ります。
離婚は次の一歩を踏み出すための通過点。勇気をもってよりよい一歩を踏み出してほしい。離婚問題に取り組む弁護士の熱い思いをお届けします。
今回は離婚問題第1回。テーマは離婚の手続や離婚原因です。
離婚を考えているけれど、何をどう決めればいいの? そもそも離婚できるの? 話合いがうまくいかなかったらどうしよう? 既に話し合ったけれど平行線で困っている、、、そんなお悩みにお答えします。
放送日 | 2015年9月1日 |
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ゲスト | 伊藤絢子 弁護士、段林君子 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
離婚、協議離婚、調停離婚、調停前置主義、裁判離婚、離婚原因、不貞行為、婚姻を継続しがたい重大な事由、有責配偶者からの離婚請求 |
— 今日も始まりました「札幌弁護士会の知恵袋」。
札幌弁護士会の法律相談に寄せられる皆様の質問に、今日も弁護士がズバリお答えします。
今日のゲストは段林君子(だんばやしきみこ)さん、伊藤絢子(いとうあやこ)さんです。
ゲスト:こんにちは、弁護士の伊藤です。よろしくお願いします。
ゲスト:弁護士の段林です。よろしくお願いします。
— 同時にお二人の弁護士においで頂くのは初めてですね。お二人は同じ事務所に所属されているんですか?
ゲスト:いえ,それぞれ別に事務所を構えていますが,同期なので,一緒に仕事をしたりする機会があるんですよ。それで今回のラジオ出演のお話をいただいたときも,初回は一緒にやりましょうということになって。
— 信頼できる弁護士どうしで仕事が出来るというのは良いですね。
ところで,このコーナーで女性弁護士をお招きするのも実は初めてなのですよね。
男性の弁護士の方が多いイメージがありますが,女性弁護士は増えているんでしょうか。女性ならではの苦労があったりするのですか。
ゲスト:最近は女性弁護士も増えてきています。女性だから特に何か男性弁護士と違うということはないと思います。ただ、女性相談者の方で、離婚について相談したいのだけど、少し男性には話しにくい、できれば女性弁護士に相談したい、というご希望をお持ちの方もいらっしゃいますから、そういうときにはお役に立てると思います。
第1 離婚について
— さて、今回はまさに先ほども話題が出ました離婚をテーマにお話しいただきます。
最近、「婚活」流行りで、自治体をあげてお見合いをするなど出会いのチャンスは様々。でも悲しいかな、愛は永遠、、、ともいかないようで、別れてしまうカップルもいるのですね。
ゲスト:そうですね。
ただ、離婚は捉え方によっては、いいこともつらいこともいろいろあったけど、とにかくこれまでの関係を清算して、それぞれが次の一歩を踏み出す。そういうプラスの側面もあると思うのです。
何かのご縁で結婚したけれど、どうしてもうまくいかない。お互いが縛りあうよりも、次のステップに踏み出したほうがいいこともある。
相談に来られる方には、ぜひ次の一歩を踏み出すためのステップと考えてもらえたらいいと思っています。
ゲスト:確かに、特に暴力を受けているようなケースでは、命の危険を感じながら我慢しているよりも、すぐにでも別れたほうがいいことはありますね。
ちなみに、2014年、日本での婚姻件数、離婚件数はどのくらいだと思われますか。
— い、いきなりですか。
うーん。
ゲスト:2014年の人口動態統計によれば、婚姻件数は64万9000組。他方で、離婚件数は22万2000組です。
— 単純計算だと3組に1組ですか! 意外と多いですね。
ゲスト:ええ、今や離婚は決して珍しいことではなくなっています。
離婚に至る理由は様々ですが、別れるにはそれなりのステップが必要です。
— 離婚をせざるを得ない、あるいは離婚しようかどうしようか、というときにはどんなことに気をつけたらいいのでしょうか。
ゲスト:離婚を決意するまでにはいろいろなことがあり、双方とも疲れ切ってしまっている場合が多いのです。
夫婦でどんなに話し合っても離婚条件をめぐって問題が解決しないケースもあれば、反対に、とにかく早く別れたい、離婚届さえ出せれば、と思ってしまうケースも。
でも、そのときは少し大変でも話し合うべきは話し合い、お子さんのことやお金のことなど、重要なことは決めて別れることをおすすめします。
別れてしまえば赤の他人、離婚してからあとでお金の話をするのはかなり難しいといっていいでしょう。
ゲスト:そうですね。
別れるにはそれなりのエネルギーを要しますが、特にお子さんの将来に関わる問題もありますから、きちんと話し合いなり取り決めなりをしたいところですね。
— 離婚というと、何となく恥ずかしくて相談しにくいような気もするのですが。
ゲスト:そんなことはありません。
当事者同士で話し合って解決するならば、そもそも離婚にまでは至らないことが多いですよね。
話し合っても解決しないから困るのです。
それから、ついついはやく別れたいあまりに、相手の主張を飲み込んでしまうことも。
ひとつの区切りをつけて、次の新しいステップを踏み出すためにも、きちんと解決したい。そのためには知っておいてほしいポイントがありますから、ぜひ弁護士に相談してほしいと思います。
— 別れ方にもポイントがあるのですね。
ゲスト:ええ。このシリーズでは、離婚について5回に渡ってお話しします。
離婚の際によく紛争になる問題について、エッセンスをお話ししたいと思います。
第2 離婚の手続は?
— よろしくお願いします。
親権や財産分与、養育費や慰謝料などいろいろポイントがあるようです。
順に話していただきましょう。
今日はまず総論的なお話。
そもそも、離婚はどのような手続きを踏めばできるのですか。
ゲスト:まず、①協議離婚、②調停離婚、③審判離婚、④裁判離婚があります。
協議離婚は、御存知のとおり、離婚届を市役所や区役所に提出します。
夫婦間の協議でもまとまらなければ、家庭裁判所に調停を申し立てることになります。
調停前置主義といって、いきなり裁判を起こすのではなくて、まずは調停の場で、つまりは何とか話し合いで解決する方向性を探りましょう、ということです。
そして、調停でも話し合いに達しなければ、裁判離婚ということになります。現在では、審判離婚はあまり使われていません。
— 協議離婚できるなら、弁護士さんのお世話にならなくてもよさそうですね。
ゲスト:そう思われる方もいらっしゃるのですが、協議離婚をする際にも、きちんと決めるべきことは決めておく必要があります。
お子さんがいらっしゃるなら、養育費のことや、財産分与のこと、場合によっては、慰謝料が発生する場合もあります。
それから、年金分割も忘れてはいけません。
— 決めなければならないことがいろいろあるのですね。
ゲスト:そうですね。
でも、新しい一歩に必要なステップだと思ってきちんと解決してほしいところです。
第3 離婚調停とは?
— 離婚調停というのは,弁護士さんに依頼しなくても自分で申し立てることが出来るのですか。
ゲスト:調停は話し合いのための手続ですので,弁護士がついていなくても,利用できますよ。実際にご自身で調停を申し立てて、解決される方ももちろんいらっしゃいます。申立の手続については、裁判所でも親切に教えてもらうことができます。
ただし,調停での解決が難しいと思われる状況のときなど,最初から裁判になることが予想される事案の場合には,調停から弁護士に依頼をした方が良いときもあります。弁護士に依頼しないとしても、事前に法律の知識を身につけておくに越したことはありませんので,調停に臨む前に弁護士に相談しておくことをお勧めします。
ゲスト:ちなみに,裁判で尋問が必要なケースなどは,法律的な専門技術が必要になってきますので,弁護士に依頼して頂いた方がスムーズかもしれません。
第4 離婚の原因にはどんなものがある?
— ところで、離婚はどんな場合にできるのですか。
ゲスト:双方が離婚に同意するならば、離婚原因は問いません。
性格が合わないでも、親族と折り合いが悪いでも、何でもいい。
でも、どちらかが離婚に同意していないような場合、裁判で離婚を認めてもらうためには、「離婚原因」が必要です。
— 離婚原因ですか。
たとえばどんなものがありますか。
ゲスト:民法には、不貞、悪意の遺棄、3年以上の生死不明、強度の精神病にかかり、回復の見込みがないこと、その他婚姻を継続しがたい重大な事由があること、とされています。
— 離婚原因となる婚姻を継続しがたい重大な事由、って何があるんですか。
ゲスト:これにはいろいろなことが含まれます。
例えば暴力だとか、別居期間が継続していて夫婦共同生活を回復する見込みがないとか。
ゲスト:よく「性格の不一致」をあげられる方がいらっしゃいますね。
一緒にいて、なんだかしっくりこない、うまくいかない。価値観が違う。暴力には至らないのだけれど、ケンカが絶えない。
ただ、性格がぴったり一致する夫婦なんているのかしら。
ゲスト:ええ、「性格の不一致」よくありますね。
これだけだとなかなか裁判所に離婚を認めさせるまでには至らないことが多いですね。性格の不一致やらいろいろあって、婚姻関係がもはや破綻している、というところまでいえれば離婚原因ということになります。
— 個別の事情を総合的にみるということなんですねぇ。
ゲスト:そうですね、性格の不一致だけではなくて、婚姻生活等の一切の事情を考慮して、婚姻関係が破綻しているかどうかをみるということになります。
第5 不貞は離婚の原因になる?
— 先ほど不貞が離婚原因にあげられていましたが,いわゆる不倫も離婚原因になるのですね。
ゲスト:ええ。不貞、つまり配偶者以外の者と性的関係を結ぶことも離婚原因です。
この場合には、どこまで証拠を集められるかがポイントになってくるでしょう。最近夫あるいは妻の行動がおかしい、いわゆる第6感というやつでしょうか、でもこれだけでは裁判離婚を認めさせるには足りなくて、不貞の決定的証拠が必要です。
ゲスト:最近は,興信所や探偵事務所に不貞の調査を依頼される方も増えていますよね。
— ちなみに、自分で不貞をした側からも離婚の請求が認められるのですか。
ゲスト:いわゆる有責配偶者からの離婚請求のお話です。有責配偶者というのは,文字通り,離婚原因を作った,責任の有る人という意味です。古い判決は有責配偶者からの離婚請求を認めないとしていました。踏んだり蹴たり判決と呼ばれたりもしたのですが、要するに、不貞をされた挙句、離婚まで認められたのでは踏んだり蹴ったりでしょうと。
ところが、時代の変化とともに、最高裁の考えも変わります。
今では、有責配偶者からの離婚請求には信義則上の制限があることを前提に、①夫婦の別居が相当の長期間に及ぶか、②未成熟の子がいるかいないか、③離婚により相手方配偶者が苛酷な状況におかれないかなどの事情を考慮して、請求が信義則に照らして許されないといえない場合には、請求が認められます。
— なるほど。時代によって家族に関する裁判所の考え方も変わるのですね。
ゲスト:ええ。
さて、離婚原因を検討したら、次は離婚の条件ということになりますね。
お子さんがいらっしゃるなら、親権者や監護権者は重要な問題です。
そしてお金の面も重要。離婚のときは頭がかっかしていて、そこまで気が回らなったとしてもあとあと響いてきます。
それから、離婚原因によっては慰謝料もありますね。
次回から具体的にお話ししていきます。
— はい、次回からは離婚の際に問題になる具体的なお話をしていただきます。
次回は親権と面会交流について、伊藤さんから伺います。
次回もお楽しみに。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<プロデューサー>
弁護士福田直之、弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士伊藤絢子、弁護士段林君子(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士伊藤絢子、弁護士段林君子(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成27年9月1日