周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
札幌弁護士会広報委員会が今年7月からお送りしている「札幌弁護士会の知恵袋」。
第21回は、先週に引き続き、分譲マンションのトラブルを取り上げていきます。
「同じマンションの一室が暴力団の所有だったら・・・」と「管理費を滞納する区分所有者が発生したら」という2つのテーマに、岡崎拓也弁護士が明快に回答します。
分譲マンションを買われた方は、誰もがマンション管理組合の理事になる可能性があります。理事として、理事会として、どのように対処していけば良いのか、学習しておきましょう!
放送日 | 2015年11月24日 |
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ゲスト | 岡崎拓也 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
弁護士の得意な分野、マンション管理組合、区分所有者、暴力団、競売請求、建物の区分所有等に関する法律59条、総会決議、弁明の機会、分譲マンションの管理費、修繕積立金、滞納、給料の差押え |
— はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
今回のゲストは札幌弁護士会に所属の岡崎拓也さんです。
岡崎:よろしくお願いいたします。
第1 弁護士に得意分野はあるの?
— この番組で、いろんなジャンルの話をさせてもらっていたんですけど、事故とか離婚とか相続とか・・いろんなテーマがあったんですけど、各先生ごとに得意な分野ってあるんですか?
岡崎:今、言われたような事故だったり離婚とかは、皆さん取り扱ってると思います。
ただ、取り扱っている件数が多いかどうか、そういうことはあると思います。
— 岡崎先生は?
岡崎:私は事故なんかが多いですね。
— 交通事故?
岡崎:ええ。
— マンションとか賃貸とか分譲とか・・出てきているテーマなんですけど・・・
先生はこの分野はよくありますか?
岡崎:取り扱うことはありますけど、件数が多いかと言われると、じゃあ何で今まで回答してきたんだという話になりますけど・・
— でも、そんな中でも、台本見ないでもスラスラと話してるじゃないですか。
岡崎:いやいや、台本そのまま読んでます(笑)。
第2 区分所有者が暴力団かもしれない?!
— ほぼ台本はないと思いますけど・・・
それでは、今週の御質問にいってみましょう。
本日も2件のご相談です。
まず、最初の御質問は・・
私の暮らしているマンションは、築年数的に古い分譲マンションなので、結構、部屋の所有者の入れ替わりが多いマンションです。私はマンション管理組合の理事の一人ですが、ある区分所有者の方から、最近、ある部屋に出入りしている人達が多く、目つきがキツイので、どんな利用のされ方をしているのか調べてもらえないか、と言われています。
理事会で話し合いもしているのですが、怖がっている方もいて、中々、理事会としての方針が決まりません。
マンション管理組合の理事会としてはどのように動いていけば良いでしょうか?
岡崎:そうですね。
— 目つきがキツイ。
岡崎:なんかいろんな方が出入りしているというのが・・また不安を煽るような・・。
— そうですよね。住んでいる人だったら、だいた顔見知りになっていって、わかっていくはずなのに・・・
岡崎:そもそもマンションって居住する場所なので、ご家族は出入りするのは当然ですが、いろんな人が出入りするというのは異常な事態ですよね。
— そうですよね。
友達が来るにしても、いろんな人が次々来るというのは変ですもんね。
岡崎:こういった場合、どうしたらいいか?ということなんですが、その部屋が何に使われているのか、そこの調査からということになります。
よくあるのは、古いマンションで区分所有者の部屋への出入りが激しいと、そこは暴力団の事務所に使われていたりということがありますので、そういったものにあたるかどうか、そこの調査が必要になります。
— 調べられるんですね?
岡崎:こういった調査はなかなか個人の方には難しい・・・
— できないですよね。
岡崎:この辺は弁護士に調査を依頼していただいて、区分所有者の方が暴力団にあたるかどうか、を調べてもらうのが良いと思います。
第3 区分所有者が暴力団関係者だったら?
— 調べた結果、暴力団だと認定されたら、また方法があるんですね?
岡崎:そうですね。
暴力団だということになると、やはりそのままマンションにいていただくと、いろんな支障が出てくるということがありますので・・・
具体的にどういった支障があるか、それぞれ集めていただく必要があるんですが・・・
そういったところで、区分所有権を失わせる競売請求をするという手続に入ります。
— 競売請求、売ることが出来るんですか?
岡崎:そうです。
よくある競売請求というのは、マンションのローンが返せなくて、銀行が競売の請求をするというのが通常の競売請求です。
これは、お金を返していないから、マンションのローンを返せていないから、競売請求をするというお話。
今お話している暴力団の組事務所だった場合の競売請求は、これはマンションの共同生活に著しい障害がある場合に認められる競売請求です。
— 共同生活に著しい障害がある。
岡崎:区分所有法という法律に定まっておりまして【建物の区分所有等に関する法律・59条】、そういった共同生活に著しい障害がある場合には、競売が認められるということになってます。
— 暴力団が住んでいると思うと、ちょっと気持ち平穏じゃないですよね。
岡崎:そうですね。
あとは、実際にそういった方達が出入りしていると、住んでる方に対していろんな支障があると思うんです。
例えば駐車場の問題とか、出入り口でたむろされていたりとか・・・
そういったことで障害があると・・・。
— そこで、競売請求が出来る。
第4 競売請求の方法
岡崎:この競売請求ですが、当然、所有権(区分所有権)を失わせるという手続ですので要件が厳格です。
例えば、区分所有者の4分3以上の賛成が必要であったり、総会決議をする前に弁明の機会を与えなければいけない、そういった相手に対してですね。
暴力団の組事務所の区分所有者に対して弁明の機会を与えなければならない。
— じゃあ、区分所有者の4分の3以上の賛成を得たり、相手方の弁明の機会も与えないといけないんですか・・・
これは、しっかりやっておかなければ競売請求できないんですね?
岡崎:そうですね。
やはり、所有権を失わせるという行為ですので、それなりに厳格な手続きが定まっています。例えばお金を返していなかったから競売の請求をするというものではありませんので、厳格な手続が定まっています。
— 結構細かいというか、大変ですね。
岡崎:そうですね。
— 弁護士さんに相談しないといけないですね。
岡崎:これ結構時間がかかりますし、総会も開かなければなりませんし、弁明の機会の問題もありますし・・・・さらに競売請求を認めてくれということで、裁判所に裁判を起こさないといけない、訴訟を起こさないといけない、という手続なんです。
裁判所が、じゃあこれは競売しても良いですよ、という判決が出たら、次にまた別の裁判所に競売の申立てをするという2段階なんですよ。
— 競売の請求をして、誰か買ってくれたということになっていくと、暴力団の人が出て行くということになるのですか?
岡崎:そういうことです。
しかし、任意で出て行かない、自ら出て行かないということになると、買った方が、引き渡し命令を裁判所に申し立てますので、そこで出て行ってもらう。物件を引き渡してもらうということです。
— 結構、本当にめんどくさい感じになりますよね。
今の時点ですと、怖がっている方もいて、方針が決まらないということですけども・・・
まずは、どのように利用されているか、を調べてもらって、暴力団かもしれないので・・・
そのあたりをちゃんと調べなければならないですね。
岡崎:そうですね。
第5 マンションの管理費を滞納している人がいたら
— では、二つ目の質問にいってみましょうか?
岡崎:はい。
— やはり、マンション管理組合の理事の方からの質問です。
まだ、築3年の新築分譲マンションの管理組合の理事をしていますが、ある入居者の方の管理費が数ヶ月程度、銀行引き落としが出来ず、約6か月分滞納になっています。
その区分所有者の方の奥さんと子供さんは、現在もそこに住んでいるのですが、旦那さんは家に帰っていないようで、奥さんに管理費の話をしても「旦那に言ってくれ」というばかりで、回収できません。
夫婦関係のトラブルに口を出すわけにもいきませんが、このままだと管理費の滞納が積み重なり、他の区分所有者との間に不公平が生じてしまいます。
マンション管理組合の理事会としてはどのように動いていけば良いでしょうか?
岡崎:滞納してるんですね。6か月分。
岡崎:そうですね。
— これは回収しなければならない。
岡崎:そうですね。
まず、マンションにとって、管理費や修繕積立金はとても大事なものですよね。
管理費、例えばどういうところに使われているかというと、清掃料だったり、管理人のいるところだったら、管理人の費用に充てられたりとか、みんなが共同で使っている場所について利益を得るものに使われるとても重要なものです。
また、通常は管理費と同時に修繕積立金というものがありますが、これは将来補修をするとき、例えば10年経った時に外壁を補修したりとか、そういった時に使われるものですので、これも少しでも滞納があると、修繕積立の計画は必ず立っていますので、そういった時に支障が出るということになりますよね。
— 他の区分所有者との間に不公平が生じるということは、みんなが払っているのにこの方が払ってくれないというのは変ですもんね。
岡崎:この方が滞納していることによって、他の人の負担が増えるというのは、不公平ですよね。
第6 滞納管理費を請求する具体的方法
— やっぱり回収していかなければならないですけれども、方法がいくつかあるんですね。
岡崎:やはり、区分所有権を持っている方が支払義務者ですので、旦那さんに対して請求していくということになります。
請求のまっすぐな方法というのは、正面の方法というのは、旦那さんに対して請求を出して、それで払ってくれなければ、裁判を起こして旦那さんの何かしらの財産を差し押さえると。
一番考えられるのは、通常働いている方であれば、給料を差し押さえるというのが考えられるかなと思います。
— それも払えないということもありますよね。
岡崎:ありますよね。
その時には、区分所有法の先ほどお話しが出た競売請求というのが出来ることがあります。
これも共同生活の障害が著しい、滞納が著しい時ということになるんですが、そういった時には競売請求が認められるということがあります。
これも先ほどと同じような手続き、総会だったり、弁明の機会だったり、そういった手続があることになっていきます。
— じゃあ、時間もかかるし、手間もかかる方法ですよね。
奥さんに言うというのはダメなんですね?
岡崎:奥さんが区分所有者でなければ奥さんに支払う義務はありませんので、奥様に言ったとしても、それは支払う義務がないので終わってしまいます。
— やっぱり旦那さんにいうしかないんですね。
6か月ですけれども、もっともっと積み重なっていくと本当に払えなくなっちゃいますよね。
第7 管理費滞納への対処は早めの対応がカギ
岡崎:そうですね。
こういう管理組合の方から相談を受けた場合は、早めに滞納を解消した方がいいとアドバイスしています。
というのは、やはり1年とかになってしまうと、払う気がなくなってしまう、払う能力が無くなってしまうということがあります。
これが2、3か月ということであれば、月々の常に発生する管理費に加えて月々1万円、2万円上乗せして払うということが、まだ現実的に見えるんです。
1年や2年も滞納すると、もう「これはもう払うのは無理だから、どうにでもしてくれ」という方がたまに現れる。
— それは困りますので、こういうトラブルがあった場合には、早めにということですね。
じゃあ、理事会としては、どのように動けばいいですかということですが、まずは弁護士さんに相談して、旦那さんに給料差押とか、払ってもらえるようにということですね。
それでダメなら競売請求ということに。
やはり時間かかりそう。
岡崎:時間かかりますね。
私が過去に扱った案件で、滞納金額が200万円だったりとか・・そこまで放置していたということもありますので、やはり、早め早めに滞納を解消する。
少しでもあったら、1か月でも2か月でもあったら、どういったことでそうなっているのか?
例えば、職を失ったとか、色々あるでしょうから、話をしていく。コミュニケーションをとっていって、早めに滞納を解消することが大事かなと思います。
— 相手にも事情があるんでしょうから・・
これをほっとかないで、しっかりと対処していかなければならない。
岡崎:そうですね。
— さて,本日の札幌弁護士会の知恵袋は以上になります。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<プロデューサー>
弁護士福田直之、弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士岡崎拓也(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士岡崎拓也(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成27年11月24日