周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
札幌弁護士会広報委員会が昨年7月からお送りしている「札幌弁護士会の知恵袋」。
本年2月の月間テーマは「犯罪被害者への支援」です。
弁護士と聞くと被疑者・被告人の弁護というイメージが強いかもしれません。しかし、近年、犯罪の被害にあわれた方への諸制度が整備されつつあり、弁護士がより積極的に犯罪被害者への支援活動を行っています。
札幌弁護士会でも犯罪被害者支援委員会を中心とした弁護士が熱心に犯罪被害者の支援に取り組んでいます。
本日の出演者は竹間朗子弁護士です。
今週は、性犯罪の被害にあわれた方の相談窓口や対処法について、丁寧に説明していきますので、ぜひお聞き下さい。
放送日 | 2016年2月9日 |
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ゲスト | 竹間朗子弁護士 |
今週の放送 キーワード |
性犯罪、強制わいせつ、強姦、犯罪被害者支援委員会、示談交渉、被害者弁護ライン、意見陳述 |
— はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間,役立つ情報を月替わりのテーマで放送していきます。
2月は4週連続で、弁護士による犯罪被害者支援について取り上げることになります。
今回は、新しいゲストをお呼びしています。紹介します。
札幌弁護士会に所属の弁護士竹間朗子(チクマアキコ)さんです。
竹間:どうぞ、よろしくお願いします。
— 先週の吉田玲英さんと同じく、竹間さんも札幌弁護士会の被害者支援委員会に所属しているんですよね。
竹間:はい。委員会歴は私の方が長く、一応、前回の吉田さんの先輩になります。
— さて、今回のテーマは性犯罪ということですが、重いテーマですよね。性犯罪の相談というのは実際多いですか?
第1 性犯罪被害
竹間:多いですね。弁護士として被害者支援にあたっていると、報道されている以上に、身近なところで事件は起こっていると感じます。
— 身近なところですか?
竹間:はい、多くの被害者が、学校や仕事の行き帰りや仕事中、自宅で寝ている時等、ごく普通に生活をしている中で被害に遭っています。世間では、『深夜、露出の多い服装の女性、隙のある女性が被害に遭う。』等といった偏ったイメージを持たれることもありますが、これは全くの間違いです。早朝や昼間でも被害に遭う可能性はあります。また、若い女性だけでなく、子供や高齢の方、男性も被害にあっているというのが実情です。
— 誰でも被害にあう可能性があるんですね。
竹間:はい、常にそういう危機感を持って、防犯ブザーの活用や通学・通勤経路の見直し等、対策をとっておくことが大事だと思います。
— もし性犯罪の被害に遭ってしまったら、被害者はまず何をすれば良いのでしょうか。
竹間:真っ先に弁護士に相談を、と言いたいところですが、残念ながら弁護士では証拠の確保や治療行為は出来ません。出来るだけ早く110番通報することをお勧めします。で、少し落ち着いたら出来るだけ早く弁護士に相談をしていただければと思います。
— いきなり110番通報ですか?
竹間:他人の事件でも110番通報は緊張しますよね。まして、被害に遭った本人であればなおさらです。特に性犯罪の場合、一刻も早く犯人の痕跡を消したいと思われる方が多いようですが、証拠が無くなると加害者を処罰することが困難になります。非常に辛いとは思いますが、体を洗う等せず、そのまま通報してください。
— 加害者の逆恨みが怖くて通報出来ない人も多いのでは?
竹間:むしろ、通報しないでいると、勢いづいた加害者からさらに性的被害を加えられるというリスクもあります。安全を確保するためには、やはり警察への相談が必要だと思います。警察も、むやみに告訴等を勧めたりはせず、出来る限り女性警察官が話を聞くように配慮しているようです。受診可能な病院を探して、受診の付添い等もしてくれます。
第2 性犯罪被害者の支援団体
— 警察以外に、被害直後から相談出来る機関はないのですか?
竹間:平日の13時から20時までであれば、SACRACH(サクラコ)という団体に相談出来ます。
— サクラコというのはどんな団体なんですか?
竹間:医師や弁護士等が中心となって性暴力被害者の支援を行っている団体です。ネットで「サクラコ、札幌」で検索してみてください。
— どんなことをしてくれるのですか?
竹間:まず、提携する産婦人科を紹介してくれますので、安心して診察や治療を受けられます。また、必要に応じ提携する女性弁護士を紹介してくれます。
— 朝や夜に相談出来るところはないのですか?
竹間:北海道被害者相談室が朝10時から16時まで、被害者の電話相談を行っています。こちらは、カウンセラーの資格を持つ相談員が対応してくれます。24時間受付のメール相談もあったり、警察や病院への付添いや自宅訪問等も行っています。
— 被害に遭ったら、まずは警察やサクラコ、北海道被害者相談室に相談するということですね。そのあと、実際に被害届けや告訴をするかどうか、迷っている被害者は、弁護士に相談をした方が良いのでしょうか。
竹間:はい、是非、弁護士に相談してください。
被害者は、名前や住所を加害者に知られるんじゃないか、職場や家族に被害の事実を知られるのではないか等、様々な不安を持っています。弁護士は、法律の知識や支援の経験を駆使しながら、あくまで被害者の利益を第一に考えて助言していきます。もちろん、最終的に決めるのは被害者自身です。しかし、十分な情報や知識がないと判断は難しいと思います。
実際、弁護士から裁判の流れや利用出来る制度等の説明を丁寧に受けていく中で、不安が軽減したと喜ばれる被害者も少なくありません。また、被害者の代わりに告訴状等を警察に出す支援等もありますので、一人で悩まずに、お気軽に相談していただければと思います。
第3 犯罪被害者弁護ライン
— 被害者支援を扱っている弁護士に相談を開始するためには、どこに連絡したら良いのでしょうか。
竹間:犯罪被害者支援委員会が行っている犯罪被害者弁護ラインに是非お電話ください。これは、犯罪被害者支援委員会が週2回、月曜日の10時30分から12時30分まで、水曜日の17時から19時まで行っている、無料の電話相談です。電話番号は011-251-7822です。必要があれば面談相談に移行する場合もありますが、面談相談も初回は完全無料です。
— 2回目以降の面談相談、あるいは、正式に弁護士に代理人をお願いした場合には弁護士費用がかかるのでしょうか。
第4 国選の被害者参加弁護士
竹間:加害者側に国選弁護人という制度があるように、被害者側にも国選の被害者参加弁護士の制度があります。それ以外でも、一定の資力要件はありますが、様々な弁護士費用の援助制度があります。援助制度等が使えるか等も含めてアドバイスしますので、遠慮なく、弁護士に相談していただければと思います。
— その他に、弁護士が性犯罪被害者のために出来ることは何でしょうか?
竹間:細かく説明していけば、優に1時間はかかります。詳しくは札幌弁護士会のホームページを確認してください。特に「良くある質問」の中の「犯罪被害者Q&A」で詳しく説明していますので、是非ご覧下さい。
— 実際に性犯罪の被害者からよく依頼されることはなんでしょう?
竹間:特に多いのは、加害者への賠償請求や示談の交渉、刑事裁判への被害者参加、被害者の心情に関する意見陳述のサポート等でしょうか。
— 真っ先に賠償請求や示談交渉を挙げられましたが、やはり被害者自身で対応するのは難しいのでしょうか?
竹間:ええ。加害者への賠償請求の方法としては、裁判外での交渉、民事訴訟や調停、刑事裁判中にする和解、損害賠償命令等があります。これだけ方法が多いと、まず、どの方法を使うか選ぶのも大変です。また、どのタイミングで、いくらくらい請求すればよいのか、もしくは加害者からの提案をそのまま承諾しても良いのか等、非常に難しい判断をしなければなりません。弁護士でも一番頭を悩ませるところです。
— 被害者の中には、そもそも加害者やその弁護人と話をすること自体辛い、耐えられないという人もいますよね。ところで、慰謝料の相場というものはあるんですか?
竹間:被害者の方からもよく聞かれる質問です。性犯罪の場合、一瞬胸を触れるといった事案や、何回も継続的に強姦の被害にあうような事案等、その態様は千差万別です。
過去の判決を調査していくことで、こういう場合にはこれくらいの金額の判決がでるのかな、という漠然としたものはあるのですが、あくまで参考程度のものです。また、実際交渉の場面では、加害者の財産や職業、被害者の年齢等も影響してきます。交渉や示談のタイミングを逃すと、なかなか賠償を受けにくくなるケース等もありますので、早期の段階で弁護士にご相談ください。
— ところで警察官や検察官は示談等の相談には乗ってくれないのですか?
竹間:警察官・検察官は加害者を訴追するという立場上、加害者と被害者間の金銭的な助言は絶対に出来ないようです。
— だからこそ、被害者側にも支援する弁護士が必要なんですね。
竹間:もちろんそれだけではありませんが、示談や賠償請求は重要な支援活動です。
性犯罪の場合、多くの被害者の願いは、被害に遭う前の元の自分に戻りたい、時間を巻き戻したい、というものです。しかしそれは不可能です。被害者の心の傷は非常に深刻で、そう簡単に癒えるものではありません。その上、被害者は婦人科や心療内科等の治療費、場合によっては引っ越し費用まで負担しなければなりません。そういった被害者の負担を少しでも軽減出来れば、という気持ちで示談交渉等の支援にあたっています。
第5 被害者の意見陳述
— ただ、被害者によっては、お金は要らないから、とにかく加害者を重く処罰して欲しいという方もいますよね。そういう場合はどんな支援をするのですか?
竹間:被害者が被害に遭ってどれだけ苦しい思いをしたか、どれだけ生活が変わってしまったか等、心情に関する意見を直接裁判で述べることが出来る、意見陳述という制度があります。弁護士はその陳述書の作成、意見を読み上げる際の付添等、サポートをします。
— 辛い心情は裁判官に伝えたいけれど、被告人や傍聴人に姿を見られるのは嫌ですよね。意見は、被害者が直接述べなければならないのですか?
竹間:意見陳述は、予め作成しておいた書面を、裁判の中で読み上げてから裁判所に提出します。ただ、被害者本人が読み上げるのか、裁判官に代読してもらうかは、被害者が選ぶことができます。また、本人が読み上げる場合、被害者の希望があれば、傍聴席や被告人から被害者の姿が見えないようなパーテーションを設置してもらう方法等をとってもらうことも出来ます。
— 被害者の意見で、加害者の刑が実際に重くなることはあるのでしょうか?
竹間:それは、答え辛い質問ですね。裁判は、事件態様の他、加害者の年齢、過去の犯罪歴、謝罪や反省の有無等、色々な事情を考慮して出されるものです。また、被害者が意見を述べたか否かで、刑罰に差が出るのは不公平だ、公正な裁判を損なうという批判もあります。
ただ、色々裁判に立ち会っていると、実際に被害者の意見陳述がなされた瞬間から、紙にかいてあっただけの事件が、突然、生の事件として裁判の場に浮かび上がってくるような感覚を味わうことがあります。その場の雰囲気、空気感はうまく表現できませんが、ドラマや本で知るフィクションとあまり差がないように見えた事件が、「これは本当に実際にあった事件なんだ。」と感じるのです。
判決にどれくらい影響しているかは定かではありませんが、被害者の真実を知ってもらいたいという気持ちは、かなり報われているように感じますね。
— そもそも、被害者は刑事裁判に毎回行かなければならないのですか。
竹間:いいえ、被告人が無罪を争っているような場合には、被害者も証人として尋問を受けることがありますが、被害者が裁判に行くか行かないかは、被害者の自由です。さらに、自分は裁判に行きたくないけれど、裁判の状況を知りたいという被害者の場合には、支援する弁護士が被害者に代わって裁判に参加したり、傍聴したりすることも出来ます。
— もちろん、希望すれば被害者自身も裁判に参加出来るんですよね。その上で被告人や証人に質問も出来る。前回吉田さんが説明していました。
竹間:はい、詳しくはホームページQ&Aをご覧下さい。
— そろそろ、お別れの時間がちかづいてきました。
次回は,インターネットにまつわる犯罪のお話と伺っております。リベンジポルノやなりすまし等、色々怖い事件が起きていますよね。
それでは,次回もよろしくお願いいたします。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(タシマ ミホ)でした。
制作・著作
<プロデューサー>
弁護士福田直之、弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士竹間朗子(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士竹間朗子(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里、弁護士山田敬純、弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成28年2月9日