周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
4月の月間テーマは、「消費者被害・消費者トラブル」です。
消費者保護委員会の4名の弁護士に週替わりで、身近な生活の中に潜む落とし穴について分かりやすく説明いただきます。
第1週目の今回は、小田嶋真悟弁護士をゲストに迎えて、そもそも「消費者」って何?という部分と、訪問販売を断るための方法について解説いただきます。
ぜひお聞きください。
放送日 | 2017年4月4日 |
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ゲスト | 小田嶋真悟弁護士 |
今週の放送 キーワード |
消費者,消費者契約法,特定商取引法,訪問販売お断りステッカー |
— はい,今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に,弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間,役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
4月は第1週目から4週連続で,消費者トラブルについて取り上げていきます。今回はその1回目で,ゲストは,弁護士の小田嶋真悟(おだしま しんご)さんに来ていただきました。小田嶋さん,自己紹介をお願いします。
小田嶋:どうぞよろしくお願いします。
私は今は札幌弁護士会に所蔵していますが、実は、出身が秋田県で、学生時代は京都で過ごしたので、北海道には全く縁がなかったんです。でも、司法修習といって、弁護士になる前に1年間の研修期間があるんですけれども、そのときに旭川に配属になったのがきっかけで、北海道で就職しました。
北海道は広いので遠方で仕事があったりすると車で移動することも多いんですが、車好きなので、ドライブだと思って結構楽しんでいます。
第1 消費者ってだれのこと?
— 今月は、どのようなお話をしていただけるんでしょうか。
小田嶋:はい。今月は、札幌弁護士会の消費者保護委員会に所属している4名の弁護士が週替わりで消費者被害・消費者トラブルについてお話しさせていただきます。また、私が現在、消費者保護委員会の副委員長を務めている関係でトップバッターを務めさせていただきたいと思います。
— 消費者被害、消費者トラブルがテーマということですが、そもそも、「消費者」という言葉は、どんな意味なんでしょうか。何となく分かったつもりで使っていますが・・・。
小田嶋:「消費者契約法」という法律があるんですが、ここで「消費者」という言葉について説明されています。そこでは、「消費者」とは「個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く)」と書いています。
— 法律の条文って、かなり、わかりにくいですよね。簡単にいうと、どういう意味でしょうか?
小田嶋:はい。すごく簡単にいうと、個人の方が、日常生活で契約をする場合には「消費者」として扱われるというふうに考えてもらっていいと思います。
— さっきの法律の条文だと事業をしている人は、「消費者」ではないようにも聞こえましたけれども・・・
小田嶋:事業をしている人でも、その事業とは関係なく日常生活で契約をする分には「消費者」と言えます。
— なるほど。
では、消費者被害とか消費者トラブルには、具体的にはどのようなものがあるんでしょうか。
第2 消費者被害,消費者トラブルと対処法
小田嶋:例えば、いきなり自宅に訪問してきて商品の買わないかと勧誘されて、よく分からないままに契約をしてしまう場合もあります。
— なかなか断れずに本当は欲しくないのに買ってしまう人もいますよね。どんな物が売られることが多いんですか?
小田嶋:健康食品などが多いように思いますが、最近、法律相談で結構多いのが、自宅のリフォームの契約をさせられたというものです。
— それだと金額も大きいですよね。どのような法律で対処することができるんですか?
小田嶋:状況によって色々な方法がありますが、例えば「特定商取引法」という法律で対応する方法があります。
— 「トクテイ・・・」、何とおっしゃいました?
小田嶋:特別の「特」に、定めるという字の「特定」。それに、商品の「商」に、「取引」、法律の「法」で、「特定商取引法」という法律です。
この法律は、今まで社会問題化したようなタイプの取引方法について、重点的に規制をかけている法律です。
— なるほど。その法律にどのような対処方法が書いてあるんですか?
小田嶋:言葉自体は聞いたことがある方が多いと思いますが、クーリングオフという方法が定められています。
リフォームとクーリングオフに関する詳しいことは、4月の第2回目の放送で、細井弁護士から話してもらいますので、楽しみにしてください。
— 他には、どんな消費者被害が多いんですか。
小田嶋:最近は、皆さんスマホを持っていますが、やはりインターネットを通じた消費者被害というのも多いですね。さっきのリフォームはお年寄りの被害が多いですが、ネット関係はやはり若い人が多いです。
特に未成年者がネットで変な契約をしてしまったときにどうするかという問題について、4月の第3週目で山田弁護士に詳しく説明してもらいます。
— さっき、「特定商取引法」は、特に問題になったタイプの取引について規制しているということでした。ということは、新しく社会問題が生ずれば、それに対応して法律も進化していくということですか。
小田嶋:そうです。
実は、先ほど話の中で出てきた特定商取引法と消費者契約法は、先日、改正がされて、その改正された部分が施行されるのが平成29年、つまり今年なんです。
この新しくなった部分について、4月の第4週目で小林弁護士から説明してもらおうと思っています。
— 今月の放送は、盛りだくさんですね。
小田嶋:はい。期待してください。
それから、これは今日、ちょっと強調して言いたい部分なのですが、今うちの委員会で力を入れて進めている活動に関係することなのですが、消費者を守るものは国が決めた法律だけではありません。北海道には、「北海道消費生活条例」というものがあるんです。
第3 北海道消費生活条例とは?
— 北海道の条例っていうことは、北海道が国とは別に独自に定めているルールってことですよね。別の都府県ではできないことが北海道ではできるということなんですか?
小田嶋:そうなんです。
よく、100円ショップなんかでも売っていますが、「訪問販売お断り」というステッカーなんかがあると思います。これを貼っているのに業者が玄関まで上がり込んできて、商品を売ろうとするのは、わざわざそのようなステッカーを貼ってまで断りたい人にとっては、とっても迷惑なことだと思うんです。
田島さんは、これって法律に違反する行為になると思いますか?
— わざわざステッカーを貼っているのに来るなんて法律違反なんじゃないんですか。
小田嶋:実は、法律レベルでは、違反行為とまでは言えないんです。
かなり、不適切な行為ではあるんですが、明確に禁止まではされていないんです。
— それが、さっき出てきた条例では禁止されているということなんですか。
第4 北海道での訪問販売お断りステッカーの効果と札幌弁護士会のステッカー
小田嶋:そうなんです。
条文にどう書いてあるかということは細かいし難しいので省略しますが、要は、「不当な勧誘はしてはいけない」と決められていて、その不当な勧誘の中に、「ステッカーを貼ってあらかじめ訪問販売を断っている人の家に上がり込んでいって勧誘すること」が入っているんです。
— なるほど。ステッカーを買いに行く人が増えそうですね。
では、実際に違反したらどうなるんですか。
小田嶋:はい。違反したことが疑われる場合には、道はこれを調査することができて、その結果不当な取引方法を行ったと認められる場合には、そのような取引方法を止めるよう勧告することができます。
それでも従わないときには、業者の名前が公表できます。
— なるほど。
違反したら契約が無効になったりはしないんですか。
小田嶋:残念ながら今のところ、この条例に違反したら、それだけで無効とか取り消せるとかいうことにはなっていません。
被害にあった方は、やはり先ほど説明させていただいた特定商取引法や消費者契約法で解決することを考えていくことになります。
— わかりました。
でも、不当な取引をしている業者として公表をされるかもしれないというだけでも事業者にとっては抑止効果ありそうですね。
貼り付けるステッカーは、100円ショップなんかで買ってくればいいんですか?
小田嶋:勧誘をあらかじめ断っていることが分かる内容のステッカーであれば、100円ショップで買ったものであろうと何でもかまいません。
でも、できるだけ抑止効果を強くしたいと考えて、札幌弁護士会消費者保護委員会では、独自にステッカーを作成しました。
— それが、今、小田嶋さんがお持ちのものですね。
小田嶋:はい。
ラジオなので、映像がお届けできないのが残念ですが・・・。
— 何か作成に当たって工夫された部分などはあるのですか。
小田嶋:はい。
まず、ステッカーを無視して、勧誘をした場合には条例違反ですということを大きな字で明確に書きました。これが最大の特徴です。
また、少しでも抑止効果が高まればと思って、「札幌弁護士会」の文字も入れました。
— あれ、よく見ると訪問「販売」お断りではなく、訪問「取引」お断りになってますね。
小田嶋:実は最近、押し売りだけではなく、「押し買い」というのもあるので、買う方も断れるように「取引」の文字にしています。
— 「押し買い」というのは、どんなものですか?
小田嶋:いきなり連絡もなく玄関まで来るというところまでは同じです。その後、家にある宝石とかをすごく安く買い叩いていってしまうというものです。
第5 消費者被害の注意点など
— わかりました。ありがとうございます。
本日は、札幌弁護士会消費者保護委員会の小田嶋さんに、消費者被害の実例や消費者保護法令、弁護士会の取り組みを紹介いただきました。最後に一言お願いします。
小田嶋:消費者被害というのは、いったん被害に遭ってしまうと、実際にお金を取り戻すにはなかなか難しいことが多いんです。
法律上はクーリングオフができても、そもそも騙した業者の連絡先が分からないとか、裁判で勝っても業者はもうお金を使ってしまった後だったりとか。
ですから、いかに被害に遭わないように予防するかということが重要になるわけです。
今紹介したステッカーの話もその一つの方法として役立ててもらえればうれしいです。
— 札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士小田嶋真悟,弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士小田嶋真悟(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士小田嶋真悟(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年4月4日