周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
4月の月間テーマは、「消費者被害・消費者トラブル」です。
消費者保護委員会の4名の弁護士に週替わりで、身近な生活の中に潜む落とし穴について分かりやすく説明いただきます。
第2週目の今回は、細井三輪弁護士をゲストに迎えて、住宅を巡る消費者被害ということでリフォームを巡るトラブルと具体的な対応方法について解説いただきます。必要のないリフォーム契約をさせられてしまった場合、果たして手遅れなのか!!??そもそも必要のないリフォーム契約をしないためにどうすればいいのか?!
ぜひお聞きください。
放送日 | 2017年4月11日 |
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ゲスト | 細井三輪弁護士 |
今週の放送 キーワード |
瑕疵,リフォーム,クーリングオフ |
— はい,今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談によせられる皆様の質問に,弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間,役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
4月は第1週目から4週連続で,消費者トラブルについて取り上げていきます。今回はその2回目で,ゲストは,弁護士の細井三輪(ほそい みわ)さんに来ていただきました。細井さん,自己紹介をお願いします。
細井:はい、私は札幌弁護士会の消費者保護委員会の委員をしています。その関係もあって、住宅にまつわるご相談をお受けすることがあります。今回は、住宅を巡る消費者被害ということで、リフォームを巡るトラブルを紹介して、具体的な対応方法を説明したいと思います。
第1 リフォームの瑕疵(欠陥)
— 人間が生きていくためには、住む場所が不可欠ですけれども、住む場所についていえば、自分で持ち家を所有している方もいますよね。
細井:はい。持ち家を所有している方からの相談で多いのは、リフォームを巡るトラブルです。
— リフォームを巡る被害というのは、どんなものがあるんですか。
細井:様々なものがありますが、比較的よく相談を受けるものとして、完成したものに瑕疵がある場合があります。
— 第20回知恵袋の岡崎先生の放送回でも出てきましたが、「瑕疵」という法律用語は難しいですよね。
細井:そうですね。
瑕疵というのは通常有すべき性能を有していないことで、欠陥と言い換えたらわかりやすいと思います。厳密には少し異なる概念ですが、わかりやすく理解するためにはとりあえずこの言葉で考えていいと思います。
— 手抜き工事が行われたとか、そういうことなんでしょうか。
細井:それも典型例の一つです。欠陥の一つのタイプとしてリフォームをするときに実際に作業をする業者さんが、故意又は過失で、手抜き工事をしてしまうということがあげられます。
— つまり、部品を誤って一部抜いてしまったり、原材料をけちって本来必要な量使わなかったり、工程を一部飛ばしてしまったり、というようなことですよね。
細井:その通りです。今おっしゃったような欠陥は、きちんと調査をすれば、欠陥であることが、比較的わかりやすい部類であるといえます。例えば当初の設計図や竣工図と比べて明らかに部品が一部抜けているとか、工程が抜けているとか、見積書に書かれてある材料が使われていないとかという形で欠陥が判明します。しかし、欠陥の類型によっては、評価の問題が入ってきて、なかなか一筋縄では行かないこともあります。
— 評価の問題というと、同じ物を目の前にしても、欠陥と評価する人もいれば、欠陥と評価しない人もいるということですか。
細井:そうなんです。例えば、設計図通りには作られているのですが、そもそも最初の設計自体に問題があったという場合です。簡単なリフォームの場合には設計図自体がないことも多いでしょうが、当初業者が予定した施工手順はきちんと踏んでいるにもかかわらず、その当初予定した施工手順自体がそもそも問題であったというケースと考えてください。
— このような場合、設計図もしくは当初の予定通りには作られているわけなので、業者側としては「何が悪いんだ」と抵抗したくなる気持ちも大きいそうですね。
細井:そうなんです。この場合で、そもそもの設計自体が法令の基準に反しているというような場合には、欠陥であると言いやすいのですが、リフォームを進める際の何百とある工程のすべてに細かく法令で基準があるわけではないので、法令の基準がない部分については、「通常有すべき性能」の基準をどこに置くかで、欠陥なのかそうでないのかが決まってきます。この判断は非常に難しい問題を含みますので、弁護士や裁判官の間でも評価が分かれることもあります。
第2 リフォーム詐欺
— 弁護士や裁判官の間でも評価が分かれることがあるというのは、本当に難しい問題ですね。お話をよくあるリフォームに関する消費者被害の例の部分に戻して、他には、どのような相談が多いんですか。
細井:はい。先ほどは、できあがった完成物に問題があったケースを紹介しましたが、消費者被害としてイメージしやすいのは、次に紹介する方だと思います。つまり、本当は必要がないリフォーム契約を消費者側の無知につけ込まれてさせられてしまうというようなタイプの被害です。
— いきなり訪問してきた業者が、床下を見て、本当はいないのにシロアリがいると言って、必要のないシロアリ駆除作業をして大きな金額を請求されたというような話を聞いたことがあります。
細井:そうです。今あげていただいた例は、リフォームという範囲には入らないかもしれませんが、抱える問題点は一緒ですね。
— どういう点が問題なんでしょうか。
細井:大きく二つの問題点があると言えます。一つは、消費者というのは事業者に比べ圧倒的に知識や情報量が少なく、交渉力の面でも素人だということです。
— そうですよね。私も、シロアリが本当にいるのか、耐震強度が不足しているのかというようなことを、いきなり来た業者に急に言われてもよく分からずに言いなりになってしまうかもしれません。もう一つの問題点は何ですか。
細井:はい。いま、田島さんが言われた「いきなり来た業者に急に言われても」という部分が重要なんです。
自分からリフォームを希望して、こちらからお店に行く場合には、どこをリフォームしたり修理したりすることが必要なのか、今から頼もうと思っている業者の評判はどうかとか色々なことを考えますし、調べてから行く人も多いと思うんです。
— そうですよね。考えてからお店に行きますものね。
細井:でも、そんなことを何にも考えていない時に、いきなり自宅を訪問されたりとか、電話がかかってきて勧誘されたりする場合には、本来は考えなければいけない色々なことを、考える暇もなく、契約まで持って行かれてしまうこともあると思うんです。
第3 リフォームとクーリングオフ
— 確かに。契約の内容とは商品自体に特に問題がなくても、よく考えたら不要だったのでやっぱりやめたいということは、ありますよね。
細井:そうなんです。このように、いきなり訪問をされてとかいきなり電話がかかってきて勧誘されたような場合には、よく考える暇もなく契約を締結させられてしまいます。
ですから、よく考えたらやっぱりやめたいということを認めましょうということで、特定商取引法という法律で、クーリングオフ、つまり一定期間内であれば無条件での解除が認められています。この制度を使って対応するということが一つの対応策になってきます。
— クーリングオフは聞いたことがあります。
どんな制度でしょうか?
細井:これは、訪問販売や電話勧誘販売の場合には、契約をした日を1日目と数えて、8日間の間は、無条件で解除ができるという制度です。
— 8日間だと、急いで弁護士さんとか消費生活センターなどに相談しないと間に合わないですね。
細井:そうですね。
もちろん、できるだけ早期に専門家に相談することは大事なことです。
でも、もし、契約から時間が経っていても、何とかなることもあります。
先ほど、クーリングオフができる期間を、契約をした日を1日目と数えて8日間、と説明しましたが、自分で言っておいてなんなんですが、これは実は正確ではありません。正確にいうと、「法律上で決められた内容が書かれた書面が渡された日を1日目と数えて、8日間の間」となるんです。
— じゃあ、書面をもらっていなければ8日間を過ぎていても大丈夫ということ
なんですね。
細井:そうです。
変な業者ほど、きちんとした書面を渡していないことも多いですし、それっ
ぽい書面が渡されていても専門家が見れば記載すべき内容に不備があるということもよくありますから、あきらめないで、専門家に相談してみて欲しいところです。
ただ、いずれにしても早く対処いただいた方が、解決はしやすくなると思います。
— クーリングオフ制度があれば、訪問販売や電話でいきなり勧誘されてリフォーム契約をしても必ずリセットできるということですか。
細井:そうは考えないでほしいです。実際にお金を払ってしまうと、いくら法律上クーリングオフができるといっても、実際にお金が返ってくる保証はありませんし、返ってくるまでに長い時間や多大な労力がかかったりもします。
— では、リフォーム業者に勧誘されたときに消費者として気をつけるべきはどのようなことなんでしょうか。
細井:一番大事なのは、「その場では決めない」ということです。明確に断りにくければ、例えば「大きな金額なので、息子に相談してから、本当に必要ならこちらから連絡します」などと言ってお断りするのがいいように思います。本当にリフォームが必要なら、いろんな人に相談して、他の業者とも比べて、後からまた連絡すればいいだけですから。
— ありがとうございます。今回は、リフォームの事案を例にして、瑕疵に関する考え方や訪問販売などに潜んでいる問題点について解説してもらいました。ラジオをお聞きの皆様も住宅にまつわるトラブルに巻き込まれないように今日のお話を参考にしてください。
また、知恵袋の第19回でも賃貸借トラブルについて扱っているので参考にしてください。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士小田嶋真悟,弁護士北山祐記(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士細井三輪(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士細井三輪(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵里,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年4月11日