周波数 | 三角山放送局 76.2MHz「トークinクローゼット」内コーナー |
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放送時間 | 毎週火曜日 AM 9:15~ |
個人情報の保護について
第2、目次
(1)(続)個人情報とは?
(2)法改正について
(3)個人情報取扱事業者とは?
放送日 | 2017年11月14日 |
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ゲスト | 大野昇平 弁護士 |
今週の放送 キーワード |
個人情報、過剰反応、情報公開、改正法、個人情報取扱事業者、個人情報データベース、小規模事業者 |
―はい、今週も「札幌弁護士会の知恵袋」の時間がやって参りました。
札幌弁護士会の法律相談に寄せられる皆様の質問に、弁護士がズバリ答えます。
毎週火曜日の午前9時15分から15分間、役立つ情報を月替わりのテーマで放送します。
今月は「個人情報の保護について」というテーマで放送します。ゲストは、札幌弁護士会所属の大野昇平さんです。
大野:よろしくお願いします。
―大野さんは前回に引き続いての出演ですね。改めて簡単に自己紹介をお願いできますか。
大野:はい。札幌弁護士会に所属しております弁護士の大野昇平と申します。前回に引き続き、個人情報保護法についての概略をお話して、残り2回をご担当される川島先生に繋げたいと思います。
―ありがとうございます。さて、今回は前回に引き続き、個人情報保護法の概略についてということですが、前回は「個人情報」に該当するのかどうかについても明確ではない部分があるというところまでお話頂きましたね。
個人情報に該当するかどうか不明確なのであれば、保護される情報の範囲を拡大して、広く個人に関する情報としてはダメなものなのでしょうか。
第1、(続)個人情報とは?
大野:個人情報保護法の対象となる範囲を拡げれば、情報は守られるということで良いことにも思えます。しかし、皆様もご記憶にあるかと思いますが、個人情報保護法が制定された当初は、個人情報保護法の適用対象となるのかどうか、また対象になるとして、どのような対応が必要なのかについてよく分からないことが原因で、開示が必要な情報まで開示されないという過剰反応が多く発生し、社会問題になりました。
―連絡網を作らなくなった学校についての報道など、様々な報道がなされましたよね。
大野:この過剰反応問題が極端な形で示しているように、個人情報保護法の適用対象となる個人情報の範囲を拡大すると、他方で、必要な情報が公開されないというジレンマがあるわけです。
―同じような構図は色々な場面で問題になっていますね。
大野:はい。情報公開と個人情報保護は常に影響し合う関係にあるため、その線引きは大変困難な問題を含んでいるということができます。
―かといって、明確な形で線引きすることも、対象範囲が情報という膨大な範囲であるだけに難しいということでしょうか。
大野:ご指摘のとおりだと思います。情報の内容もそうですが、情報を扱う方法も日々新しくなっていくため、保護と開示の線引きというのは常に定まらず動き続けているともいえるかもしれません。そのために、法改正をこれからもしていくことが必要な分野なのだろうと思います。
第2、法改正について
―前回の放送で、今年は改正法の全面施行がなされたと仰っていましたよね。
大野:はい。
―具体的に、大きく変わった点としてはどのような点が挙げられるのでしょうか。
大野:そうですね。改正前後を通じて個人情報を取り扱う事業者を対象としている点は変更ありませんが、改正前は取り扱う個人情報の数が5000以下である事業者は規制の対象外とされていましたが、今般の改正によって個人情報を取り扱う全ての事業者に個人情報保護法が適用されることになった点が最も影響がある点だと思います。
―それは大きな影響がありそうですね。
大野:その他にも、改正前は監督権限を分野ごとの主務大臣に付与していたものを個人情報保護委員会という組織を新設して監督権限を一元化したことや、前回の放送で少し触れた個人情報の定義の改正などを含め、大幅に改正がなされています。
―大小様々な改正がなされたということですね。先ほど仰っていたように個人情報を取り扱う全ての事業者に個人情報保護法が適用されることになったことで、実際上は全ての事業者に影響があるということでしょうか。
第3、個人情報取扱事業者とは?
大野:個人情報保護法の適用を受けることになる事業者の範囲が拡大されたことで、新たな問題が生ずる可能性も指摘されていますので、事業者の範囲についてお話をさせて頂くことにします。
―事業者と言われても、どこまでが含まれるのか漠然としていますね。
大野:要は、個人情報保護法に定められている義務を負うのは誰かという問題ですが、ここでいう事業者は民間の事業者であるということは前回の放送でも触れましたよね。ただ、正確には、その中でも「個人情報データベース等」を事業のために使用している者であることが求められています。
―「個人情報データベース」という言葉は初めて出てきましたね。どういったものなのでしょうか。
大野:はい、「個人情報データベース等」についてですが、ここからは「個人情報データベース」と言って、「等」を取ってお話します。脱線しますが、法律は正確性が求められますから、「等」をつけて漏れを防止するということがよくあるのですが、法律によっては「等」「等」というのが何回も続いて煩わしいことがあります。なので、ここでも取ってお話しますね。
―分かりました。では、改めて「個人情報データベース」とはどのようなものですか。
大野:「個人情報データベース」というのは、個人情報を含む情報の集合物のうち、電子データベースのように、特定の個人情報をコンピュータで検索できるように体系的に構成したものや、特定の個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成したもので、目次、索引などで検索が簡単にできるものをいいます。
―まだよく分からないので、具体例を出して説明頂けますか。
大野:そう言われると思いました。
具体的に言いますと、ある会社が顧客に対して商品を発送する際には当然、顧客の氏名や住所を知っている必要があります。ここでは、その氏名や住所について、1回限り使用するもので商品を送ったらもう必要ないということで管理も何もしないで商品発送後すぐに情報を削除したとします。
―お客さんから注文の電話を受けて、お名前や住所をメモして、商品を送ったらそのメモを捨てるというような場面でしょうか。
大野:そうですね。このような時は、その氏名や住所という情報は個人情報ではあるものの情報の集合物とはいえず、単独のものとして消えていきます。ですから、このような情報の利用の仕方しかしていない会社が仮にあるとすれば、「個人情報データベース」を使用しているとは言えませんから、個人情報保護法に規定されている義務を遵守する必要はないことになります。
―でも、実際にはそのような利用方法は想定できなさそうですね。
大野:その通りですね。通常は、顧客の氏名や住所をそのまま廃棄はせず、何らかの方法で保管することになります。例えば、顧客の氏名や住所を顧客情報管理ソフトのようなものに入力して管理したとすると、個人情報を含む情報の集合物であって特定の個人情報をコンピュータで検索できるように体系的に構成したものとして先ほどの「個人情報データベース」の定義に該当し、これを使用する会社は個人情報保護法の定める義務を遵守する必要があることになります。
―なるほど。これは理解しやすいですね。
大野:また、コンピュータで検索できるように管理していなくても、顧客ごとの情報を記載した用紙を五十音順に並べて見出しや目次を付けてホルダーに整理して保管する場合も、個人情報を含む情報の集合物で、特定の個人情報を容易に検索することができるものと言えるでしょうから、「個人情報データベース」に該当して、このような情報管理をしている会社も個人情報保護法の適用を受けることになります。
―「個人情報データベース」という言葉からすると、コンピュータ上の管理方法のみ含まれそうですが、そうではないということなのですね。
大野:この「個人情報データベース」は自分の会社で作成したものに限らず、他社の保有するデータベース等でも該当します。そうすると、市販のカーナビや住宅地図、電話帳といったものまで「個人情報データベース」に形式上は該当することになってしまいます。
―それはおかしい気がしますね。
大野:市販のデータベースしか利用していない会社まで規制するのはおかしいですよね。そこで、個人の権利利益を害するおそれが少ないものとして政令で定められている今述べたような場合には、「個人情報データベース」から除外されています。
―きちんと手当てはされているのですね。
大野:今回の法改正によって、個人情報を取り扱う数による適用の除外が撤廃されたので、小規模事業者の負担を軽減するために、このような限定が加えられているようですが、法律や政令を読んでようやく適用対象となるのかどうかが判明するということ自体が小規模事業者にとっては負担であると思いますよね。
―そうですね。
大野:さらに言うと、事業者は法人その他の団体に限定はされていませんので,個人事業主も該当することになりますし、営利事業に利用していることは求められていませんので、非営利事業に利用している場合でも該当します。
―そうなってくると、その適用範囲は、やはりほとんどの事業者が含まれるということになりそうですね。
大野:個人の権利利益を侵害するおそれが生じることは、個人事業主による利用の場合でも、非営利事業の場合でも、また、個人情報の取り扱い件数が少なくても同様ですからそれらを適用対象とすること自体は理解できますが、これによって、個人情報保護法制定時のような過剰反応が再び生じるのではないかという指摘もなされています。
―本当にそのとおりですね。
大野:前回の放送の冒頭で述べたとおり、この法律の目的は個人の権利利益を保護することにあって、個人情報そのものを保護することを目的としているものではないので、抽象的な個人情報保護法の規定についても、この目的を見失わないように配慮した解釈をする必要があると思います。
―前回、今回と、大野さんには個人情報保護法の適用対象となる個人情報とは何か、事業者とは何かという点についてお話頂きましたが、そのような基本的な部分についても難しい点が沢山あることが分かりました。そして、そのような部分についての解釈の視点を説明頂いたところで、お時間となってしまいました。
大野さんは、今回までのご担当で、次回からは川島先生に出演頂くということですよね。
大野:はい。今まとめて頂いたように、私は適用対象となるかどうかの部分までしかお話できていません。適用されたらどのような義務を負うのかという肝心な部分は全く触れられていないので、残る部分については全部川島先生に丸投げしてしまおうという魂胆です。ラジオでお話する機会はそれほどない中で貴重な経験をさせて頂きありがとうございました。
―どうもありがとうございました。
さて、本日の札幌弁護士会の知恵袋は以上になります。
今回は、前回に引き続き、個人情報保護法の概要についてお話を頂きましたが、次回は川島英雄弁護士を迎えて、引き続き個人情報保護法についてお話頂きたいと思います。
札幌弁護士会の知恵袋は、札幌弁護士会のホームページで過去の放送分をテキストで見ることができます。また、音声でも聞くことができます。今日の放送で聞き漏らした部分があるという方はぜひチェックしてください。
進行は田島美穂(たしま みほ)でした。
制作・著作
<エグゼクティブプロデューサー>
弁護士坂口唯彦(札幌弁護士会)
<プロデューサー>
弁護士北山祐記,弁護士髙橋健太,弁護士村本耕大(札幌弁護士会)
杉澤洋輝(三角山放送局)
<脚本>
弁護士大野昇平(札幌弁護士会)
<出演>
番組MC 田島美穂(三角山放送局)
ゲスト 弁護士大野昇平(札幌弁護士会)
<監修>
弁護士上田絵理,弁護士山田敬純,弁護士佐藤敬治(札幌弁護士会)
<初回オンエア>
平成29年11月14日