あなたの知りたいコンテンツのジャンルは?

アーカイブ検索
2012/10/25

11月3日「司法修習生の給費制復活を求める市民集会」事前インタビュー

広報委員会

「司法修習生」という言葉をご存じでしょうか?

司法修習生は,司法試験に合格した後,裁判官・検察官・弁護士になるために最高裁判所から研修を義務づけられている人たちです。この司法修習生には2011年まで修習の間に給与が支払われていました(給費制)が,2011年11月にその給与が廃止されて生活を維持するためのお金を貸し付ける制度(貸与制)が始まりました。

札幌弁護士会では,2012年11月3日に「司法修習生の給費制復活を求める市民集会~きみは,なぜ,法律家を目指すのか。」と題して,この司法修習生の給費制の廃止の問題について考える市民集会の開催を予定しております。

今回は,この市民集会について事前インタビューとして,札幌弁護士会司法修習費用給費制維持対策本部の事務局長である瀧澤啓良弁護士と,ビギナーズ・ネット北海道支部代表の橋本祐樹弁護士にお話を伺いました。

橋本弁護士(左)と瀧澤弁護士(右)

――お二人はそれぞれ司法修習費用給費制維持対策本部の事務局長と,ビギナーズ・ネット北海道支部の代表ということですが,それぞれどのような活動をしているのでしょうか?
瀧澤 私が事務局長をしている給費制維持対策本部では,日弁連やビギナーズ・ネットと協力して,修習生の給費制を復活させるため,今回のような市民集会を企画するほか,道内出身の国会議員と面談して給費制の維持を求める要請活動をしています。また,今年は修習生の経済活動の実態のアンケート調査を日弁連と協力しながら実施しました。

加えて,法曹を目指しているロースクール生向けに,弁護士の公益活動の重要性を理解してもらうため,実際の弁護団活動への参加などのフィールドワークを行う「きみはなぜ法律家を目指すのか」というプロジェクト(「きみなぜプロジェクト」)も実施しています。

橋本 私は,ビギナーズ・ネット北海道支部の代表をしています。ビギナーズ・ネットは,2010年6月に設立された修習生の給費制を存続・復活するために活動している大学生,ロースクール生,法科大学院修了生,修習生,若手法律家からなる団体で,全国に2200名を超える仲間がいます。

北海道支部は2012年3月に設立し,現在80名を超える仲間がいます。北海道支部では,これまで道内選出の国会議員の先生方に給費制復活を求めるための議員要請を行ったり,市民のみなさんに給費制について理解してもらうための街頭宣伝や署名活動を実施したり,修習生を対象とした「給費制入門講座」などを実施してきました。

――今回,司法修習生の給費制について考える市民集会を開催するということですが,修習生の給費制が廃止されたことにはどのような問題があるのでしょうか?
瀧澤 給費制は司法修習を経済的に支えるものです。司法修習は,法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の人材育成を平等の立場で行うもので,その目的は受益者である国民のニーズに合致した司法サービスを提供すること,国民の「権利の守り手」を育成することにあります。給費制が廃止されると,司法サービスの充実化や「権利の守り手」の育成が阻まれ,結果的に受益者である国民が不利益を被ってしまうという問題があります。

弁護士は集団訴訟や弁護士会の委員会活動などを通じて,お金にはならないけれども公益的で人権尊重に役立つ活動を数多くしています。給費制の廃止によって,「法律を使って人に役に立ちたい」「人権活動をしたい」という志ある若者が経済的理由により法曹を目指せなくなれば,弁護士の公益的活動も縮小し,ひいては本当に困っている国民の権利救済ができなくなってしまいかねません。現実に,法曹を目指して法科大学院の入学試験を受ける人数は激減しています。それだけ未来の「権利の守り手」が減っているということです。今回の市民集会では,このような弁護士の公益的側面に光を当て,貸与制の移行による弊害・給費制の意義を改めて考えたいと思います。

橋本 もう一つの問題はやはり当事者の負担です。修習生は公務員と同じ時間修習に励み,公務員と同じく義務と責任を負っています。修習後や休日にアルバイトをすることもできません。このような制限をしながら給費制を廃止することは,修習生の生活の糧を奪うものであり重大な権利侵害であるといえます。実際に修習生からは,勉強に必要な本や日常品の購入も控えたり,病気になっても治療を控えたりするという実態も報告されています。

――司法修習生の給費制は2011年に廃止されたということですが,今この時期に給費制の復活を求める市民集会を開催することには,どのような意義があるのでしょうか?
瀧澤 2011年11月に採用された修習生から給費制が廃止され貸与制になりましたが,いざ貸与制の下で司法修習が実施されると,さまざまな問題が出てきました。経済的不安により修習生の充実した修習が阻害され,貸与制の不完全性を原因として修習生の身分が不安定化しています。例えば,裁判所の共済に加入できない,無収入なのに親の扶養から外れ年金・保険は貸与金から支払っている,無収入であるためクレジットカードを持ったりアパートの契約をしたりすることもできない,学生と同視され認可保育園の優先順位が下がるというような事態が生じています。

このような事態を受けて,国会でも,裁判所法の改正審議の際に,「法曹を目指す者の経済的・時間的な負担を十分考慮し,経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにすること」「司法修習生に対する経済的支援については,司法修習生の修習専念義務の在り方等多様な観点から検討し,必要に応じて適切な措置を講ずること」について「特段の配慮」をすることを求める附帯決議がなされています。

2012年8月,閣議決定により「法曹養成制度検討会議」が設置され,将来の法曹養成の仕組みについての幅広い検討がなされることとなりました。しかし,国会の附帯決議にもかかわらず,給費制を含めた「司法修習生に対する適切な経済的支援」を議論する機会は時間的に極めて限定されてしまっています。

この検討会議の議論は年度内にはまとめられると言われていますので,今が修習生の給費制復活の「ラストチャンス」になると考えています。そこで,私たちは,給費制の意義を改めて市民のみなさんに訴えかけたいと思い,「今しかない」との思いでこのタイミングでの市民集会の開催を企画しました。

――今回の市民集会では,具体的にどのようなプログラムが予定されているのでしょうか?
瀧澤 今回の市民集会の目玉は,何といっても佐藤のりゆきさんです。道民なら誰でも知っているのりゆきさんが,みなさんの疑問に市民を代表して迫ります。のりゆきさんがコーディネーターとなって,医師・マスコミ関係者・弁護士と,給費制のイロハのイから幅広いテーマでパネルディスカッションを行います。のりゆきさんの軽妙なトークで,楽しく,深く考えることのできるディスカッションになると思います。

また,のりゆきさんから法律家を目指している法科大学院修了生や司法試験合格者に対して「きみは,なぜ,法律家を目指すのか」をインタビューするコーナーもあります。未来の法律家たちが,フィールドワークの体験を通じてどのようなことを考え,どのような答えを出すのか楽しみです。

<b橋本 私たちビギナーズ・ネットも,実際の当事者の声をもとに「それでも,ぼくたちは,法律家を目指します」と決意表明をする予定です。

――最後に,この記事をご覧の皆さんへのメッセージをお願いします。

瀧澤 「給費制なんて,一部の人の話でしょ。」 給費制についてお話させていただくと,少なくない市民のみなさんから,このようなお言葉をいただきます。しかし,そうではありません。「権利の守り手」となる法曹を養成することは,司法サービスを利用する国民にとって必要不可欠なことです。

これまで,市民のみなさんからは顔が見えなかった「司法修習生」ですが,今回の市民集会では,フィールドワークを通じて法曹の公益性について考え体験してきた法科大学院修了生や司法試験合格者の声を通じて,貸与制の問題をリアルに知っていただくことができると思います。

橋本 私たちは,法律家を目指す若者たちを,みなさんと一緒に育てていきたいと思っています。この機会に給費制の問題について一緒に考えてみませんか? 入場は無料ですので,「司法修習生の給費制復活を求める市民集会」に,ぜひお気軽にご参加いただければと思います。

司法修習生の給費制復活を求める市民集会を開催します
司法修習生の給費制復活を求める市民集会を開催します

日時 平成24年11月3日(土) 13:30~15:30(開場13:00)
場所 国際ホール(札幌市中央区北4条西4丁目1 国際ビル8階)
イベント概要
  • パネルディスカッション(なお、途中、国会での議論状況の紹介および、法曹志望者のインタビューを予定しています)
    コーディネーター:佐藤のりゆき氏 

    パネリスト:丸山淳士氏(五輪橋産科婦人科小児科病院名誉理事長)

    飯嶋千尋氏(NHK北海道放送局・司法記者)

    他弁護士2名

  • 若手法曹・法曹志望者による団体「ビギナーズ・ネット」による決意表明
参加方法 事前申込していただかなくても参加可能ですが、事前の人数把握の都合上、できるだけ申込書(下記イベント情報ページよりダウンロード)をご提出いただけると幸いです。
参加費 無料
主催・共催・協賛 主催:札幌弁護士会

共催:日本弁護士連合会、北海道弁護士会連合会・ビギナーズ・ネット

問い合わせ先 札幌弁護士会(011-281-2428)

こちらのイベント情報は札幌弁護士会のウェブサイトに掲載されております。