あなたの知りたいコンテンツのジャンルは?

アーカイブ検索
2015/03/25

第9回 中高生のための憲法講座 「政治をするのは誰?」開催報告

「政治をするのは誰?」をテーマに政治体制や、多数決による意思決定と少数者の人権について考える、中高生のための憲法講座。

広報委員会

弁護士 伊藤 絢子

 2015年3月7日、札幌弁護士会館で第9回中高生のための憲法講座「政治をするのは誰?」が開催されました。

 中高生のための憲法講座は、一方的な講義ではなく、若手弁護士が中心となったプロジェクトチームが講義案を手作りし、参加生徒さんと一緒に議論しながら憲法を考えてもらう企画です。
 9回目の今年は、「政治をするのは誰?」をテーマに政治体制や、多数決による意思決定と少数者の人権について考えました。

 最初は少し緊張気味だった生徒の皆さん。ウォーミングアップ代わりのクイズは、一番新しく独立した国は? 最近独立が話題になったのはどこ? どうやって独立しようとした? アテネで市民による政治が行われていたのはいつ頃? 今の日本では法律はどうやって作られる? 等々テンポよく進み、会場の雰囲気も和らいできました。

 そこで早速ディスカッションへ。新しい国をつくろうとする場合を想定し、政治体制はどのようなものが考えられるか、それぞれの政治体制のメリット・デメリットについてグループごとに議論しました。
 賢人政治なら意思決定が迅速、選挙を気にせずに長期的な政策ができる、直接民主制なら少数意見も反映されるかもしれない、間接民主制は代表者が議論するので市民の負担は少ない、などなど様々な意見が出されました。

 弁護士より間接民主制が採用されるに至る歴史的経緯や、現在の政治の仕組みの解説が行われた後、では間接民主制は万能だろうか、という問題提起がされたところで授業は後半へ。

 後半は、架空の国を舞台にした①公共施設の建設のために住民の私有地を買い上げる、②伝染病の拡大防止のためにある村を強制的に隔離する、という事例問題を題材に、誰のどのような権利が問題になっているのか、権利を侵害された個人の救済手段としてどのようなものが考えられるかを議論しました。
 参加生徒さんからは様々な視点からの意見が出され、議論は真剣そのものです。
 グループごとに議論し、発表する中で、多数意見による意思決定がときに少数者の人権を侵害するおそれがあることを学びました。

ディスカッションの風景

 まとめ講義では、多数が暴走した不幸な歴史やハンセン病の問題に触れながら、多数決によっても侵すことのできない人権を憲法が定めていること、ぜひ中高生の皆さんも社会に関心をもち、社会に参加してほしいことが伝えられました。

 ディスカッションをする中で、講義案作成に関わった弁護士も考えつかなかったような意見が出されるなど、参加生徒さんは正解のない問題についてじっくりと考えて自分の意見を述べ、他の意見にも耳を傾けながら考えを深めた様子が伝わってきました。
 選挙権年齢を18歳以上とする公職選挙法改正法案が国会に提出され、中高生の皆さんが有権者として意思表明をする日はそう遠くはありません。将来にわたる社会のあり方を方向付けるのが政治だとすれば、より若い世代ほど政治の影響を受けるともいえます。
 参加生徒さんが柔軟な発想をもちながら真摯に議論し、発言する様子を頼もしく感じました。今回の憲法講座が政治を自分たちのものと捉え、憲法をより身近に感じるきっかけになればと思います。