あなたの知りたいコンテンツのジャンルは?

アーカイブ検索
2020/10/14

教えてプロの人! 「相続」どう変わるー約40年ぶりに法改正  遺言書作成のおすすめ:北海道新聞 どうしん電子版

札幌弁護士会

※以下の記事は、北海道新聞社のどうしん電子版に2019年4月から6月まで掲載された広告記事となります。
当会が作成に協力したもので、北海道新聞社の許諾を得て掲載しております。

明日はわが身?他人事ではない「相続トラブル」

 「祖父の遺産を巡る骨肉の争い!」「義父を献身的に介護した嫁の悲劇!」……まるでサスペンスドラマのタイトルみたいですが、実はこれ、実際に弁護士に寄せられる相続トラブルのごく一部。「うちは資産家じゃないから相続トラブルなんて関係ない」とお思いの方も多いでしょうが、お金が絡むとさまざまな感情や思惑が湧いてくるのが人の常。莫大な資産どころか、わずか数十万円の遺産配分を巡ってもめるケースも珍しくありません。相続トラブルは決して他人事ではないのです。

約40年ぶりに「相続法」が変わった!

 相続に関するトラブルを防ぐために、民法では「相続法」によって基本的なルールを定めています。相続法は1980年の改正以降は大きな改正は行われていませんでしたが、高齢化の進展など社会環境の変化に対応するため、2018年7月に約40年ぶりに大きく改正されました。今回の主な改正内容と、相続トラブルを防ぐために知っておくべきポイントについて、法律のプロである弁護士の玉川まき先生に教えていただきました。

  1. 自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能に
  2. 被相続人(※)の介護や看病に貢献した親族の金銭請求が可能に
  3. 「配偶者居住権」の創設
  4. 法務局で自筆証書による遺言書の保管が可能に

※被相続人とは相続財産を遺して亡くなった方のこと

1. 自筆証書遺言に添付する財産目録の作成がパソコンで可能に[2019年1月13日施行]

 民法上、通常の遺言には「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」という3つの方式があり、最も一般的なのが自筆証書遺言です。しかし、これまで自筆証書遺言は添付する財産目録を含む全文を手書きで作成しなくてはならず、高齢の方や持病がある方などにとっては大きな負担となっていました。
 今回の法改正により、相続財産の目録部分については、パソコンで作成したり通帳のコピーを添付することなど、手書きではない方法で作成することができるようになりました。

2. 被相続人の介護や看護に貢献した親族の金銭請求が可能に[2019年7月1日施行]

 「主人は義父より先に亡くなったが、長男の嫁だから」と仕事を辞めて義父の介護に専念したのに「相続人ではないから」と遺産を分配してもらえなかった……こうした不公平を解消するために、今回の改正では「特別寄与料の請求権」を創設。相続人ではない親族が無償で被相続人の介護などを行い、被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与(特別な貢献)をした場合、相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。

3. 「配偶者居住権」の創設[2020年4月1日施行]

 「配偶者居住権」とは、配偶者が相続開始時に被相続人が所有する建物に住んでいた場合、配偶者は終身または一定期間そこに無償で住むことができる権利です。
 この制度により、たとえば夫の死後に妻と子で遺産分割する場合、妻が自宅を相続したために預貯金の相続分が減って生活に困ったり、自宅を相続した子が所有権を主張して妻が住む場所を失うといったリスクを回避できます。

4. 法務局で自筆証書による遺言書の保管が可能に[2020年7月10日施行]

 自筆証書遺言は自宅で保管するか信頼される人に預けるしかなく、せっかく作成しても紛失したり、死後何年も見つからなかったり、誰かに改ざんされる心配などがありました。こうした問題を防いで遺言者(被相続人)の意思がきちんと相続に反映されるようにするため、法務局で自筆証書遺言を保管する制度が創設されます。
 この制度では、遺言者自らが法務局に自筆証書遺言を預けることができ、遺言者の死亡後、相続人や受遺者(遺贈によって相続財産を譲り受ける人)は遺言が保管されているか調べたり、閲覧することができるようになります。

相続トラブルを防ぐカギは「遺言書」にあり[玉川まき先生からのアドバイス]

■法的効力のある遺言書を

 今回の法改正で注目したいのは、自筆証書遺言にて、財産目録部分を手書きする負担を減らしたり、保管制度が整備された点ですが、弁護士としての経験からぜひお伝えしたいことは「きちんとした遺言を作成しておけば、多くの相続トラブルは防げる」ということです。「後のことは考えたくない」という方も多いのですが、ご遺族の中には「子どもや家族の将来のためにもきちんと財産を分けてほしい」と考える方もいます。遺言がなければ民法に則って法定相続分で遺産分割をすることになりますが、「兄は結婚費用を出してもらったのに僕は出してもらえなかった」「義父を介護したのは私なのに」という具合に、法律の規定通りといえども納得できない人が出てくるケースもあります。遺された家族に争いを生まないために、少しでも財産を残せるのであれば、ぜひ遺言を作成することをお勧めいたします。

■おすすめは「公正証書遺言」

 遺言は遺言者の意思を確実に実現するため、厳格な方式が定められており、不備があれば無効になります。そこでお勧めしたいのが「公正証書遺言」です。公証人と遺言者、証人2名が立ち会って遺言内容を明らかにするため、不備のない遺言を作成できます。また、原本が公証役場に保管されるので紛失や改ざんの恐れもありません。ただ、公正証書遺言を作成するには、事前に遺言の内容を決めなければなりません。そこでぜひ弁護士に、財産の分け方や「家族へのメッセージの残し方」等をご相談ください。打合せでご本人の希望をくみ取り、ご本人にとって最適な内容をご提案いたします。また、ご遺族は、短期間でさまざまな手続きを行わなければならないので、いざというときに弁護士のサポートがあれば、ご遺族はとても心強いと思います。

■「無料法律相談会」を気軽に利用して

 「弁護士の探し方がわからない」「話を聞いてもらえるか不安」という方も多いと思いますが、札幌弁護士会では道内各地に「法律相談センター」を開設していますので、ぜひご利用ください。電話(011-251-7730)で予約していただければ弁護士が直接ご相談に応じます。また、無料の法律相談会も随時開催しているので、どうぞお気軽に足を運んでみてください。心配していたことに答えてもらえれば安心できるし、もしも法的に複雑な問題を抱えていることがわかれば対応策をアドバイスしてもらえます。相談会にはさまざまな弁護士が来ているので、自分に合う弁護士に出会うきっかけにもなりますよ。

札幌弁護士会法律相談センター(面接相談)

相談予約ダイヤル 011-251-7730

平日 9:00~12:00/13:00~16:00 (土日祝除く)

提供/札幌弁護士会 企画制作/北海道新聞社営業局

企画制作/北海道新聞社営業局