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家族が亡くなることは大変つらいものですが、遺族は悲しみに暮れる間もなくさまざまな手続きに追われます。中でも相続に関する手続きは手間や時間がかかる上、期限が決まっているものも多いため、葬儀や忌日法要の手配と並行して進めなくてはなりません。いつか訪れる「その時」に落ち着いて対処できるよう、相続の基本的な流れを知っておきたいものです。
家族が亡くなった時にやるべきこと
逝去直後は通夜や葬儀に向けてさまざまな手続きが発生します。死亡届の提出や火葬許可証の取得などの手続きは、忙しい遺族に代わって葬儀社が代行してくれる場合もありますが、葬儀終了後は遺族自身が行わなくてはならない手続きが山積しています。
ここでは、家族が亡くなった時にやるべきことを順序だててご紹介します。
突然の出来事。
まずは何をしなければ?
- 死亡届の提出
- 住民票の除票取得
- 戸籍謄本の取得(被相続人が除籍されたもの)
- 年金の停止手続き
- 遺族年金の請求手続き
亡くなったあと | 手続きなど |
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できるだけ早くすべきこと | ・戸籍謄本の取得(被相続人が除籍された戸籍謄本) ・遺言書があるか調査 (自筆証書遺言かつ法務局の保管制度を利用していない場合は検認手続も必要) ・葬祭費/埋葬費/高額療養費の給付申請(時効2年) ・免許証や道新ID等の返納/公共料金等の手続き/新聞やインターネット、携帯電話等の解約又は名義変更 ・生命保険金の請求 ・故人の財産調査・遺産分割協議の開始 (遺産分割協議がまとまった場合) ・遺産分割協議書の作成 (遺言書があるか、遺産分割協議がまとまった場合) ・不動産の名義変更登記 ・銀行/証券口座の解約又は名義変更 |
7日以内 | ・死亡診断書の取得 ・火葬許可証の取得 ・死亡届の提出 |
14日以内 | ・住民票の除票の取得 ・世帯主変更届の提出 ・健康保険/介護保険の資格喪失届の提出 ・年金の受給権者死亡届の提出(厚生年金/共済年金の場合は10日以内) →(対象になる場合は)未支給年金/遺族年金の請求手続きも行う |
3カ月以内 | ・相続放棄または限定承認(行わない場合は、単純承認となる) |
10カ月以内 | ・相続税の申告 |
公的手続きは2週間以内に済ませましょう
居住地の役所で故人の住民票の除票を取得し、世帯主の変更、健康保険や介護保険の資格喪失などの手続きを行います。
故人が年金受給者の場合、年金事務所で年金受給停止の手続きを行います(厚生年金および共済年金は10日以内、国民年金は14日以内)。未支給年金がある場合は、請求に基づいて一定範囲の遺族に支給されます。遺族が故人によって生計を維持されていた場合、遺族年金を請求できます。
公共料金や携帯電話、インターネットなどの各種契約に関する期限はありませんが、そのままにしておくと料金が発生し続けますから、必要なものは名義変更をしたり、必要ないものは解約するなどの手続きをすみやかに行うことをお勧めします。
相続する?しない?決断は3カ月以内!
人が亡くなると、その人の財産および権利義務を受け継ぐ「相続」が発生します。相続する権利を持つ人(相続人)が複数いる場合は、相続人全員で財産を分ける「遺産分割」を行います。
相続する財産は預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、住宅ローンや借金などのマイナスの財産も対象となります。マイナスの財産が大きすぎる場合、プラスの財産も含めたすべての財産を相続しない「相続放棄」という選択肢もあります。
ただし相続放棄できるのは「相続の開始を知った時(被相続人が亡くなったことと自分が相続人であることを知った時)から3カ月以内」です。そのため「相続人は誰か」「相続する財産はどれくらいあるのか」をできるだけ早く把握しなくてはなりません。
「戸籍収集」は手間と時間がかかります
相続に関する手続きの中でも優先して進めたいのが「戸籍収集」です。
戸籍は遺産を相続する権利が誰にあるのか確定させ、相続に関する手続きを進めるために不可欠です。そのため、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて集めなくてはなりません。
出生時は親の戸籍に入りますが、結婚すると新たな戸籍が作られます。離婚や再婚、本籍地の移転(転籍)、法改正に伴う戸籍の改製(作り直し)などがあれば、戸籍はさらに増えることになり、作り直す前後両方の戸籍を取らなければなりません。
「戸籍を辿っていくと前妻の子どもがいることがわかった」「故人が養子だったことがわかり、実親側の親族を探さなくてはならなくなった」などというケースも珍しくなく、ひとつでも戸籍が抜けていると預貯金の解約や不動産の相続登記などの相続手続きができません。
遠方の本籍地や複数の市町村に転籍している場合は郵送で戸籍謄本を取り寄せることもできますが、時間がかかるため、早めに着手することをお勧めします。
財産調査では小さな手がかりも見逃さないで!
戸籍収集と並行して進めたいのが「財産調査」です。
「遺産分割後に親が隠していた借金が見つかった」「相続放棄した後で長年放置されていた土地が見つかった」などということになれば、相続人の間でトラブルに発展しかねません。
資産状況を記した遺言書やエンディングノートがあれば良いのですが、急逝などでそうした情報源がない場合は、預金通帳の明細や各種保険の加入状況、不動産の登記簿謄本、固定資産税の通知書などが手がかりになります。
借金についても通帳やクレジットカードの明細をチェックしたり、消費者金融の督促状などの郵便物がないか探してみましょう。
相続放棄の手続き期限である3カ月を過ぎてしまうと、プラス・マイナスすべての財産の相続を認める「単純承認」になってしまいます。
3カ月以内に財産調査を終えるのが難しい場合は、相続放棄をできる期間の延長(期間伸長といいます。)を家庭裁判所に申し立てることも可能です。
相続放棄しない場合は遺産分割協議へ
- 遺言書がある場合
- 遺言書がある場合は、基本的にその内容に従って遺産分割を行います。
故人が生前「遺言書がある」と言っていたのに家の中から見つからない場合、公正証書遺言を誰かに預けていたり、自筆証書遺言保管制度を利用して法務局に保管している可能性がありますので、公証役場や法務局で確認しましょう。
- 遺言書がない場合
- 相続人全員で遺産分割協議を行い、話がまとまったら遺産分割協議書を作成し、預貯金の解約や不動産の相続登記を行います。
遺産分割協議は、相続税の申告・納付期限である10カ月以内に終えるのが理想的です。
しかし相続人同士がもめて協議が整わない場合はいったん申告し、相続分が確定してから修正申告または更正の請求を行います。
数字が見える預貯金はともかく、不要な土地や評価額が低い老朽家屋などはもめ事に発展しやすいもの。負の不動産を相続する人には多めに配分するなどの配慮が必要ですが、決着がつかない場合は遺産分割調停によって解決することもあります。
遺産分割前に預貯金を引き出せる「仮払い制度」とは?
「自分の葬儀で子どもに負担をかけたくない」と生前から貯蓄している方も多いのではないでしょうか。しかし預貯金は、金融機関に被相続人の死亡の届出を行うと、遺産分割が成立するまで凍結されるため、喪主をはじめとする相続人が葬儀費用を負担するのが実情です。相続人が複数いて遺産分割協議が長引いた場合、葬儀費用や相続税などの負担をめぐってトラブルに発展することも少なくありません。
こうした問題の解消に向けた法改正が行われ、遺産分割前でも被相続人(故人)名義の預貯金から一定額を出金できる「預貯金の仮払い制度」が2019年7月1日より施行されました。この制度により、一金融機関につき法定相続分の1/3または150万円の少ない方を上限として出金が可能です。
ただし、被相続人および相続人全員の戸籍謄本が必要となる上、この制度を利用すると相続放棄ができなくなるため、故人の負債が大きい場合は注意が必要です。
相続をめぐる困りごとに「無料法律相談」をご利用ください
誰もがいつかは必ず相続の当事者となるものですが、「うちにはもめるほどの財産はない」「兄弟姉妹の仲がいいから大丈夫」と考えている人は多いもの。しかしどんなに少額の財産でも1円をめぐって争うこともあれば、相続トラブルをきっかけに兄弟姉妹が絶縁してしまうこともあるのです。
元気なうちから終活を始めることも珍しくない昨今、エンディングノートを作る流れで遺言書を作成しておくと後々安心です。自筆証書遺言保管制度を利用すれば、数千円の費用で紛失や改ざんのリスクを避けられます。
相続人同士でトラブルが起こるかもしれないと思われる時、財産調査や相続手続きなどで困った時には、ぜひ弁護士にご相談ください。札幌弁護士会では相続・遺言相談センターを開設し、無料法律相談を行っています。あらかじめ相続人が誰で相続財産にどのようなものがあるかが分かる資料をお持ちいただくと、スムーズに相談することができます。無料法律相談は事前予約制ですので、お電話またはインターネットからお申し込みください。
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