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2023/08/16

相続人が行方不明!? 進まない遺産分割協議をどうする?:北海道新聞デジタル

記事

※以下の記事は、北海道新聞社のどうしん電子版に掲載された記事体広告となります。
当会が作成に協力したもので、北海道新聞社の許諾を得て掲載しております。

相続人が行方不明!? 進まない遺産分割協議をどうする?

 家族関係やライフスタイルが多様化する時代。親戚付き合いが希薄になったり、再婚などによって家族関係が複雑になったりした結果、親族の中に見ず知らずの人や音信不通の人がいることも珍しくありません。しかし遺産相続の際にそのような人が相続人に含まれていた場合、遺産分割協議が進まず、さまざまな問題が生じます。行方不明の相続人にどう対処すべきか、相続トラブルを未然に防ぐ方法はあるのか、法律の観点から解説します。

行方不明の相続人を放置してはいけない理由

銀行口座も不動産も動かせなくなる

 亡くなった人(被相続人)に財産がある場合、遺言書があればその内容が優先されますが、遺言書がない場合は民法が定める「法定相続人」が遺産の分け方について話し合い、合意する必要があります。一人でも相続人が参加していないと遺産分割協議はできなくなり、被相続人の銀行口座を解約できません。

相続の順位
配偶者と子どもがいる場合 配偶者(1/2) 子ども(1/2)を人数で分ける
子どもはおらず、
配偶者と親がいる場合
配偶者(2/3) 親(1/3)を人数で分ける
配偶者と被相続者の
兄弟しかない場合
配偶者(3/4) 兄弟(1/4)を人数で分ける

 たとえばこんな事例で考えてみましょう。

事例
「兄は若い頃に出て行ったきり音信不通。父が亡くなったので、実家を売却して母の施設入所費用に充てたい」

 この場合、兄を抜きにして母と2人で遺産分割協議を進めるわけにはいきません。兄の居場所を突き止めて遺産分割協議書に署名・押印してもらえない限り、実家を売却できないまま固定資産税を払い続けることになります。問題が長期化すれば、人が住まない空き家はどんどん老朽化。家の資産価値が下がるばかりか、倒壊して地域住民に損害を与えた場合、賠償請求を受ける可能性もあります。

不動産の相続登記が義務化される

 これまで相続登記は当事者の任意に委ねられており、親亡き後の家や土地はすぐに名義変更しなくても特に罰則等はありませんでした。
 しかし土地が長年放置された末に所有者がわからなくなり、公共事業や再開発事業の妨げとなる事案が多発していることから、2024年4月1日より不動産の相続登記が義務されることになりました。これにより、定められた期限内に登記申請を怠ると罰則の対象となり、10万円以下の過料が科せられます。
 土地の相続に関しては「遠方で利用する予定がない」「管理の負担が大きく手放したい」という方もいるでしょう。こうした土地が将来所有者不明土地となることを防ぐため、2023年4月27日より、手放したい土地を国庫に帰属させることを可能にする「相続土地国庫帰属制度」がスタートします。ただし承認には一定の条件があり、申請者が負担金を納付する必要があります。

共有状態が長引くほど子孫が迷惑する

 遺産分割協議が成立するまでの間、遺産はすべての相続人の共有状態になります。共有状態が長引く間に相続人が亡くなると、相続の権利が次の相続人に引き継がれ、共有者がどんどん増えてしまいます。共有状態が長期化するほど不動産などの売却が困難になり、のちのち子孫を困らせることになりかねません。

相続人と連絡が取れなくなるパターン

パターン
01

被相続人が高齢者

 そろそろ相続が自分ごとになりつつある50〜60代の親御さんには、戦前・戦中生まれの方も多いことでしょう。この世代は兄弟が多い上、戦時下の社会事情から戸籍が正確に記載されていないケースも少なくありません。
 北海道の場合、樺太にいて、戸籍関係が整理されていないケースもあります

パターン
02

被相続人に子どもがいない

 親も子どももいない単身者が亡くなった場合、兄弟が法定相続人となります。兄弟も亡くなっている場合は甥や姪が法定相続人となりますが、生前の付き合いが希薄だった場合、連絡先がわからない、連絡しても無視されるということもあります。

パターン
03

家族と疎遠な相続人がいる

 「親と仲違いをして家を出たきり行方がわからない」「転職と転居を繰り返すうちに連絡が途絶えた」という人がいる場合、戸籍の附票から住民票の所在地を特定することができます。しかし実際にはそこに住んでいなかったり、行方不明のまま亡くなっていたりすると、手がかりが途絶えてしまいます。

パターン
04

離婚・再婚で家族関係が複雑になっている

 「亡くなった父が再婚で前妻との間に子どもがいる」という場合、その子にも相続権があります。親が子どもに再婚の事実を伏せたまま亡くなった場合、子どもは戸籍を見て初めて異父兄弟(異母兄弟)がいることを知り、思いもよらぬ相続問題に発展することになります。
 
少子化が進む中、近くに住む甥や姪が独り身の叔父や叔母の世話をする、ということもあるでしょう。しかし中には「叔母が亡くなる前、未婚で産んだ子がいると告白した」というケースも。こうなると、実子の所在が判明しない限り遺産相続は前に進まない可能性も出てきます。

パターン
05

海外で行方不明になっている人がいる

 「海外へ行ったきり連絡が途絶えている」という人がいる場合、宿泊先や留学先、現地の職場などから手がかりが得られなければ、外務省を通じて現地の在外公館に調査を依頼することになります。もしその人が海外で子どもをもうけた末に亡くなっていたら、国境を越えた相続問題に発展する可能性もあります。

行方不明の相続人がいる場合の遺産分割協議

長く疎遠で連絡先がわからない

 行方不明者の戸籍の附票を取得することで、現在の住民票所在地を知ることができます。住所がわかればまずは手紙を送り、連絡を試みます。連絡が取れて相手が遺産分割協議に応じてくれれば、相続人全員で話し合って遺産の分け方を取り決めます。
 連絡がついても話がこじれてしまったり、連絡を無視されてしまったりする場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てることになります。調停を申し立てるとすべての相続人に裁判所から呼び出し状が届くため、親族からの連絡に応じない人も出席する可能性が高くなります。

住民票記載の住所に住んでいない

 戸籍の附票から特定した住所に住んでいない場合、相続人の行方を突き止めることは困難です。このような場合は、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申し立て、行方不明書の代理人として遺産分割協議に加わってもらいます。不在者財産管理人には、行方不明者と直接の利害関係がない親族や、弁護士および司法書士などの専門家が選任されます。

行方不明になって一定期間が経過している

 家出などで消息不明のまま7年以上、または災害や遭難などで生死不明になって1年以上経過した場合、法律上死亡しているものと見なす「失踪宣告」を申し立てることができます。失踪宣告を受けた行方不明者は死亡したものとみなされるので、その人を除く相続人同士で遺産分割協議を進めることができます。

遺産の内容によっては相続放棄という手段も

 行方不明の相続人を探して遺産分割協議を成立させるには、多大な手間と時間がかかります。弁護士に依頼すれば、住民票や戸籍の調査、不在者財産管理人や失踪宣告などの申し立て、遺産分割協議書の作成などを任せることができますが、各種手続きに伴う実費のほかに着手金や報酬などの費用がかかります。
 相続人の人数に対して遺産がごくわずかだったり、被相続人に多額の借金がある場合、あるいは「行方不明者を探すストレスから解放されたい」と願う場合は、費用対効果を考慮して相続放棄を視野に入れることもひとつの方法です。
 相続放棄は、自身の相続開始を知った時から3カ月以内に手続きする必要があります(期間伸長の申し立て可)。そのため、遺産の内容や行方不明の相続人の有無をなるべく早く把握し、迅速に決断しなくてはなりません。

相続で家族を悩ませないための「遺言」のススメ

 誰でもいつか必ず相続人となり、被相続人となる日がやってきます。ご自身にもしものことがあった時、相続人となったご家族を困らせないために、「遺言」を作成することをおすすめします。
 遺言では、被相続人が生きている間に自分の財産の分割方法を自由に決めることができ、法定相続人以外の人にも相続財産を取得させることが可能です。たとえば「生涯独身で親、兄弟もなく、長年世話をしてくれたいとこに財産を譲りたい」というケース。いとこは法定相続人ではないため、遺言がなければ遺産分割協議に加わることができず、故人も想定していなかった法定相続人が現れるかもしれません。しかし遺言があれば、自分の財産を自分が望む人へ託すことができるのです。
 2018年の相続法改正により、自分で書く遺言書「自筆証書遺言」がぐっと身近になりました。とはいえ、法律で定められた様式に則っていないと無効になってしまうため、作成には注意が必要です。

相続問題の解決と対策には、弁護士が力になります

 行方不明の相続人がいる場合、居場所を突き止めるだけでも大変な苦労を伴います。しかし弁護士などの専門家に依頼すれば、職務上請求により戸籍謄本や住民票などを取り寄せて調査してもらうことや、不在者財産管理人として遺産分割協議を進めることが可能です。
 相続人が連絡を無視したり、話し合いが決裂したりした場合は、遺産分割調停や審判へ移行することも考えられますが、弁護士は相続人の代理人として調停や審判に関わることができるため、裁判所や調停委員とのやりとりもスムーズに運びます。
 さらに、相続トラブル対策としての遺言書についても、法律の専門家である弁護士に相談することで、法律的に無効にならない遺言書を作成することが可能です。
 親の財産を確実に受け継ぎ、自分の財産を大切な家族へ引き継いでいくために、相続問題や遺言に関する悩みや疑問は、ぜひ弁護士へご相談ください。札幌弁護士会では、弁護士が無料でご相談に応じる「法律相談センター」を開設しています。お電話または法律相談センター受付にてお気軽にお申し込みください。

「相続土地国家帰属制度」について知りたい方は、こちらの記事も御覧下さい。
(相続した不動産を放置したら罰則? 国が申請義務化)

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