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2018/11/05

「#metooを考える緊急フォーラム 性暴力被害者の声はなぜ社会に届かないか」開催報告

広報委員会

 2018年10月2日午後6時15分から、札幌エルプラザで「#metooを考える緊急フォーラム 性暴力被害者の声はなぜ社会に届かないか」を開催しました。

 #metooとは、SNS上でセクシュアルハラスメントや性暴力の被害を告発・共有する際にタグ付けされる検索ワードです。
 昨年、アメリカで有名人によるセクハラが次々に告発されたことを機に、セクハラや性暴力の被害者がSNS上で「#metoo」と声を上げる運動が、世界中に広まりました。
 日本でも、この運動について大々的に報道されました。しかし、残念なことに、日本では大きな広がりを見せておりません。
 そこで、なぜ日本ではセクハラや性暴力の被害者が声を上げられないのか、声を上げられる社会にするためには何が必要かを考えるパネルディスカッションを行いました。

 パネリストには、自身が性暴力被害を受けたと公表し、被害者の立場で捜査を体験した伊藤詩織氏、多くの性暴力被害者の診察と支援に携わる産婦人科医の堀本江美氏、犯罪に使用される薬物の研究や鑑定を行う法医学教授の清水惠子氏、元検察官で性犯罪捜査の経験が豊富な弁護士川村明伸氏をお招きし、須田布美子弁護士がコーディネーターを務めました。

 2時間という限られた時間ではありましたが、性犯罪の捜査や裁判という司法手続の中に存在する問題、レイプドラッグの作用や特性、性暴力被害者の支援など、8つのテーマについてディスカッションがなされました。

 司法手続における問題としては、捜査の過程で被害者が被害状況の説明を何度も求められること、被害状況の再現を行い、その場面を写真に撮られることなど、大きな苦痛を伴うという問題が提起されました。これに対し、諸外国では実際に被害状況の再現写真なしに裁判が行われていることや、専門的な研修を受けた面接担当者が1回の面接で被害状況等についての聴き取りを完了させる司法面接という手法を活用し、司法面接の結果を裁判での証拠として使いやすくするアイデアとその問題点などが語られました。
 また、支援とのつながりについて、性暴力被害者支援センター北海道(さくらこ)、札幌弁護士会による犯罪被害者のための電話相談(犯罪被害者弁護ライン)などが紹介されましたが、治療・カウンセリング・法的支援を1か所で行えるワンストップ支援センターの整備が不十分であることなどが問題点として指摘されました。
 さらに、レイプドラッグは、薬の種類などによっては現場の警察官が行う簡易な尿検査ではなく、専門の検査機関(科学捜査研究所(略して「科捜研」など)による精密な検査(「本鑑定」と言われるそうです。)でなければ検出されない場合があるとのことでした。パネリストの清水氏は、薬物使用が疑われた場合には「科捜研で薬物本鑑定」が必要であることを、覚えやすい標語を交えてお話くださいました。
 緊急避妊薬のテーマについては、日本で緊急避妊薬を入手することの困難さ(医師による処方箋が必要であること、高価であること)などの指摘もあり、来場者から驚きの声が上がる場面もありました。

 性暴力は性的欲求を満たすためだけではなく、いじめや支配の手段として行われることもあるとのことでした。性暴力は、当事者だけの問題ではありません。伊藤氏は、性暴力をなくすために、被害者だけではなく、誰もが参加できる「#wetoo」という運動も行っているそうです。性暴力被害者が声を上げることができる社会にするために、私たち一人一人ができることもあるのだ、と改めて感じました。

 本イベントには、250名を超える多数の方にご来場いただきました。
 時間の関係で、もっと話をお聞きしたい、と思う中での閉会となってしまいましたが、来場者の方々には現状を認識し、さまざまな問題意識を持っていただくことができたと思います。
 性暴力被害者が声を上げることができ、その声を聴くことができる社会にするための一歩となることを願っています。