みなさんは,デートDVって知っていますか?
「DVは知っているけど,デートDVって何だよ,それ。」という人も多いかも知れませんね。DV(ドメスティック・バイオレンス)とは,夫婦や恋人等の親密な関係にある(またはあった)者から振るわれる暴力をいいますが,DVの中でも,交際中の相手から受ける暴力のことを特に「デートDV」と呼んでいるのです。
私は,法務大臣から委嘱を受けた札幌市の人権擁護委員として,高校や大学でデートDVの出前講座を行っています。以前は,デートDVの出前講座をやらせてくださいと学校側に申し出ると,「うちの学校では,そんな性教育は必要ありません!」などと断られましたが,最近では,DVを根絶するためには,青少年のうちからデートDVの予防啓発活動が必要であるとの認識が広がり,内閣府も各自治体も積極的に取り組むようになりました。
さて,私がどのような出前講座を展開しているかというと,まず,暴力の種類には身体的暴力,精神的暴力,性的暴力,経済的暴力があることを紹介します。身体的暴力は説明しなくても分かりますが,精神的暴力として,例えば,相手の携帯電話に保存されているメールアドレスや電話番号を勝手に消去する,相手の行動を監視したり,報告を義務付ける,無視するなどの事例を説明すると,そういうことも精神的暴力なんだと受講生に驚かれます。「わたしってぇ,彼に束縛されたい人なのぉ。」などと言う女子高校生もいますが,自由を奪われることってとても辛いことなんだよと伝えます。
DVについて学んでいただくときには,どうして別れられないのかという被害者の心理状態を理解してもらうことも重要です。夫婦間のDVであれば,経済的な面や子どもの存在などで別れることを決断できない事情があるのに対し,デートDVなら簡単に別れられると思いがちですが,そうはいかないのが実情です。というのも,暴力そのものが与える影響として,被害者は,「別れを切り出したら,もっと酷いことをされるかも知れない。」,「私が彼を怒らせたのだから,暴力を振るわれても仕方ない。」,「どうしたら良いのか,何も考えられない。」,「どうせ誰も分かってくれない。」などと精神的に追い詰められています。また,DVと言っても,加害者は四六時中暴力を振るっている訳ではなく,暴力の後にはとても優しくなったり,土下座して「俺にはお前しかいない!」などと謝るので,被害者は,「暴力のないときが本当の彼なの。」,「大好きだから我慢するのは当たり前。」,「私は必要とされているんだ。」などと考え,関係を断ち切れない場合が多いからです。
デートDVの出前講座では,暴力に正当化はあり得ないこと,愛情と束縛は違うことなどをお話しして,最後に,対等で平等な関係を築こうね,被害を受けたら1人で思い悩まず,誰かに相談してねというメッセージを伝えます。
高校や大学に行って壇上に立つと,みんなキラキラしていて,青春っていいなと強く感じます。そんな彼らには,これから沢山の恋愛をして,悩み,傷付き,少しずつ大人になって行ってもらいたい,DVの加害者にも,被害者にもならないために,若いうちからDVが人権侵害であるということを理解してもらいたいと思っています。