新聞やテレビで大きな事件や裁判の様子が報道されるとき、よく、『○×弁護団』という言葉が聞かれますが、「一体どんな団体なんだろう?」と疑問に持ったことはありませんか?
私たち弁護士は、ふだんは個々人で活動していますが、多数の被害者がいる場合には一人の弁護士では対応しきれないことがあります。また、被害者は少数でも、非常に難しい社会問題を広く世間に訴えかける場合もあります。このようなときに、弁護士が一人で闘うのではなく、同じ志を持つ仲間たちが集まり、『○×弁護団』として、一緒に交渉や裁判を進めます。
弁護団は特別な組織ではありませんし、誰かに強制されて入るというわけでもありません。問題の解決のために、自分たちの意思で集まった弁護士のグループなのです。
事件・問題の種類や内容によって、弁護団に参加する弁護士の数は数人から数百人(!)にもなり、それぞれの弁護団の雰囲気もさまざまですが、普段は別々に行動している弁護士が協力し合って一つの目標に向かうので、そこには大きな力が生まれます。
また、弁護団で扱う事件では、多数の被害者を集めて一斉に裁判を進めることで、被害者がそれぞれ弁護士に依頼して裁判をするよりも、報酬や諸経費を低く抑えられるようになっています。
裁判に勝ったり有利な和解が成立して多額の賠償金が支払われる場合には、そこで精算されるケースもありますが、中には、被害者から少額ずつ集めたお金が裁判の実費で消えてしまい、せっかく有利な和解が成立しても、弁護士の報酬はほとんどゼロに近い、というケースもあります。
このような弁護団を支える弁護士は、それぞれに「困っている人を助けたい」、「この社会を、少しでも良くしたい」という気持ちで参加しています。一人一人の力は小さくても、その力を合わせれば、難しい裁判を闘い、時には社会を動かすことさえあるのです。
このコラムを読んで下さった皆さんが、新聞やニュースで『○×弁護団』を見かけたときに、「ああ、頑張っているんだな」と思って頂けましたら幸いです。