最近労働相談が増えており、札幌弁護士会では『雇用トラブル相談センター』という労働相談窓口を常設しています。また、日本弁護士連合会では、平成26年6月10日(労働の日)に、10時から22時まで全国一斉労働相談を受け付ける電話窓口を設置します。 労働現場では様々な相談がありますがパワハラに関する相談も多くあります。その際、「パワハラ」と「教育指導」の境目の判断が難しいな、と実感することが多いです。
パワハラ(パワーハラスメント)は、職場で,上司などが力関係を利用して、部下に対し人格や尊厳を侵害する言動を繰り返し行ったり,精神的な苦痛を与えたりすることで,その人の働く環境を悪化させるものを指します。
パワハラに遭遇した相談者の方は、精神的な苦痛を受けていることはもちろんですが、それまで夢をもって取り組んでいた仕事に対してもやる気を喪失させたり,全てのことが否定されているようで自分に自信がもてず思考停止の状態に陥ってしまうこともあります。なかには、ひどい暴言にさらされているにもかかわらず、長期間我慢し続けたために職場の状態が非常に悪化しているものであることを客観的に判断できなくなってしまっていることもあります。
こうしたことは働く者の心の健康の悪化にもつながり、休職や退職に至ってしまう場合もある重大な問題であり、決して許されるものではありません。
ただ、一方で、労働者が職務を修得し、スキルアップをするためには、上司からの指導教育は当然になされるべきものです。特に新入社員などには時には厳しい指導も業務上必要になる場合があります。その指導方法が若干行き過ぎてしまったり、つい熱の入った教育をしてしまったために、それがパラハラと受け止められる可能性もあります。
このように指導教育とパワハラとの境目は、非常に難しいものです。
職場にて指導教育を行っていくためには、上司と部下との間に信頼関係が形成されていることが必要だといわれています。互いが互いを尊重し合う、その信頼関係のもとになされて初めて教育指導の実もあがるものです。私自身も、仕事上、指導しなければならない立場になることもありますので、自戒の念を込めながらではありますが、上司と部下、職員間での信頼関係が形成される職場が一つでも多くなっていけばいいなと思っています。