本日、道内の公立高校は卒業式が挙行されました。卒業生の皆さん、ご卒業本当におめでとうございます。私も、母校の卒業式に同窓会を代表して参加してきたところです。
さて、そんなおめでたい日に、なんとも不吉なタイトルのコラムを紹介しなければならないことに、いささか後ろ髪が引かれます。
この「返したくても、返せない!」という叫びは、奨学金の返済に困った若者の叫びです。近時、日本学生支援機構(以下「機構」といいます。)の奨学金滞納者に対する返還金の取立てが厳しくなっています。「借りたものを返すのは当たり前じゃないか」というご意見もあろうかと思いますが、少し考えてみたいと思います。
みなさん、そもそも奨学金を借りている学生がどのくらいいるかご存知でしょうか。機構が実施した平成22年度学生生活調査によれば、昼間部に通う大学生の2人に1人が奨学金を借りています。いまや、奨学金を借りるということは、特別なことではありません。そのほとんどが有利子で、卒業時の平均的な奨学金借入額は約400万円です。
学費に目を向けてみますと、国立大学でも、入学金は28万2000円、年間の学費は53万5800円です。初年度の納入金は国立でも80万円を超えます。「学費が安い国立に行けばいいじゃないか!」というのは、もう過去の話になっています。
他方で、「無理して大学に行かないで、高校を出てすぐ働けばいいじゃないか!」、という方もいます。平成25年度の高卒者の求人倍率は0.93倍で、ここ数年改善傾向にあります。しかし、その雇用形態を見ると、非正規雇用が約7割を占めるといわれています。より安定した雇用を目指すためには、やむなく大学へ進学しなければならない、という状況が生じてしまっているのです。奨学金を取り巻く問題を理解する際、大きな世代間のギャップが生じています。
学費は高騰し、それを支える家計は縮小しています。少しでもまともな雇用を、と思い大学に進学せざるを得ない状況があります。奨学金は、大学進学に必須のものとなりつつあります。
希望を抱いて大学に進学しても、大卒者の雇用状況も厳しいものがあります。いわゆる日本型雇用(新規学卒者一括採用・終身雇用・年功序列型賃金)はガラガラと音を立てて崩れました。ワーキングプアということばが流行りましたが、年間300万円以下の低所得者層が6人に1人と言われています。奨学金を借りて大学を卒業した元学生は、まさに「返したくても、返せない!」状況に追い込まれているのです。
奨学金の返還にあたり、経済的に困窮している場合には、最長10年間、返還を猶予してもらう制度がありますが、広く認知されているとは言い難い状況にあります。
今日はおめでたい日ですが、半年後の10月から奨学金の返還が始まります。返したくても返せない!と感じた場合には、滞納状態に陥る前に、制度上の救済を受けてほしいと思います。
このような奨学金問題を広く皆さんと考えるイベントを企画しました。札幌弁護士会の後援も頂いています。お時間の都合がつけば、ぜひ足をお運びくださいね!
【イベントのお知らせ】
一大事!!奨学金が返せないのはヨーカイのせい!?
日時 | 2015年3月15日(日) 15:00~17:00 |
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場所 | 札幌テレビ塔 すずらん |
対象 | 学生(大学生・高校生等)、保護者、教員、一般市民 |
参加費 | 学生無料、大人500円 |
内容 | 1部 奨学金問題について
第2部 奨学金問題を考えてみよう!
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