現在、通年でいわゆる「時代劇」を制作・放送している地上波のテレビ局はNHKだけです。映画の世界では、やや復権傾向にあるものの、私が子供の頃に比べれば、新作の数が少ないと感じます。ただ、衛星放送の普及により、チャンネル数が増え、時代劇ファンの私は過去の作品をいつでも観ることができるようにはなりました。
時代劇が少なくなったのは、視聴率の面で、各民営放送局の期待する数字がとれない、配給収入の面で、映画会社の期待する金額に届かないという側面もあるのでしょう。
しかし、もう一つの理由として、時代劇においてノンフィクション性を高めた場合、身分による差別(士農工商、将軍・大名・旗本・御家人など)、女性や子供に対する虐待(女郎や丁稚奉公・人身売買など)、殺人・傷害(殺陣や暗殺など)のシーンなどが不可避的に入り込んでしまうため、実際に時代劇を制作したいと考える監督と、世間の批判を浴びるのではないかと危惧する放送局や映画配給会社との間で折り合いがついていない現状もあるのだと思います。
昭和の後期に制作された時代劇でさえも、衛星放送で再放送される場合は、作品の最後に現代では不適切になった単語やシーンについて、制作者の意思と当時の時代背景を尊重して、そのまま放送したというエクスキューズが表示されます。
時代劇は、実在の人物や歴史的事実をベースにしつつ、当然に作家や制作者の創作も加えられるわけですが、先人達の生き様や当時の法律・社会のあり方を教えてくれる素敵な教材です。法律がなかった時代、法律があったけれども不充分または過酷な法であった時代を観ることで、現代の法律や社会制度の進化を感じ取ることができます。
一方で、江戸時代に根付いていた近隣同士の助け合いの精神や義理・人情・礼節などは現代社会で希薄になり、退化しているという印象を私は持っています。
そして、多くの時代劇ファンは現代社会からは感じ取れないこの部分に魅せられているのではないでしょうか。
法律は、社会を規律し、人を救済するものですが、いつの時代でも万能ではありません。
法律や制度が現代に比べ充実していなかった時代だったから、あるいは食べていくことすら困難な時代だったからこそ、人が本来持っているやさしさなどが時代劇においてキラリと輝くのかもしれません。
戦国武将に夢中の歴女の方々にも、ぜひ江戸時代の時代劇復権を応援していただけるといいなと思いつつ、今宵も池波正太郎作品や藤沢周平作品に涙するオッサンのまとまりのないコラムでした。
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