先日、本州に住んでいる姉から、姉の友人の紛争に関する相談メールがありました。
その内容は、遺産相続に関するもので、相手方には既に弁護士がついており、自筆証書遺言の有効性、遺産の範囲、遺留分など、様々な法律的な問題点があるようなので、その旨を伝えると共に、内容からして、早急に地元の弁護士に相談・依頼すべきである旨と、彼女の地元には、私の同期の弁護士がいるので、必要であれば紹介する旨を、姉にメールしました。
姉は、私のメールを友人に転送したようですが、何のことはなく、その友人は、既に地元の弁護士に相談しているとのことでした。
弟である私が弁護士であることは知っているのでしょうが、セカンドオピニオンを求めたかったというよりは、むしろ愚痴を聞いて貰いたかったということのようでした。
「やれやれ人騒がせな」と思いましたが、その友人は、既に弁護士に相談済みだったにもかかわらず、それでもなお、身内の恥とも言うべき相続問題を、赤の他人である姉に相談したということになります。
私が弁護士になった十数年前、弁護士としての大先輩だった父から、幾つかアドバイスを貰いましたが、その1つに「事件の依頼を受ける時には、最初の面談の時に、充分に時間を取って、しっかり依頼者の話を聞くこと」というのがありました。
事件の全貌を最初にしっかり理解することにより、後々の弁護活動がスムーズに行えるということもありますが、依頼者の話にじっくり耳を傾けることにより、依頼者の不安を取り除いてあげて、しっかりとした信頼関係を築きなさいということなのだと思います。
事件が解決した後の「ありがとうございました」という言葉も弁護士冥利に尽きる言葉ですが、事件の依頼を受けた時の「依頼して気持ちが楽になりました」という言葉も、同じ位、弁護士冥利に尽きる言葉です。
我々弁護士は、紛争と接するのが日常なので、だんだんと感覚が麻痺しがちですが、改めて、依頼者ひとりひとりにとって、他人にはなかなか打ち明けられない紛争、一生に一度あるかないかの紛争なんだということを、再確認させられた出来事でした。
2012/12/01
弁護士冥利に尽きる言葉
