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「さっき買った商品だけど,やっぱり返品するので返金してもらえますか?」
スーパーや百貨店などで買い物した際に,このように言って断られることは少ないかもしれません。
しかし,意外に思われるかもしれませんが,法律の原則からするとお店が返金を断ってもなんの問題ありません。レジで代金を支払って商品を受け取った時点で「売買契約」が成り立っており,消費者が一方的に契約を解約することはできないのです。「一度も使っていない未開封の商品でもダメなの?」と思われるかもしれませんが,商品に欠陥があるなどの理由がなければ解除できないのが原則です。
少額の買い物であればあきらめるのかもしれませんが,よく問題になるのは自動車やペットなどの高額な取引の場合です。「ペットショップで可愛いトイプードルを購入して連れて帰ったけれど,家族の猛反対にあって飼えないので返したいのですが…」と言っても原則は認められませんので,無責任な契約は慎まなければなりません。 -
「一身上の都合により契約を解約致します」
「原則あれば例外あり」で,訪問販売や電話勧誘などで契約した場合には,一定期間一方的に解約できる「クーリングオフ」の制度があります。クーリングオフに理由は必要ありません。
先日,大学の講義で学生にクーリングオフの通知書を書いてもらったところ,まるで退職願かのように「このたび一身上の都合により…」と始まる文章を書いてくれた学生がいましたが,自分自身の一方的な都合であっても解約を認めるのがこの制度の特徴です。
もっとも,クーリングオフできる取引は一定の場合に限られており,例えばテレビやインターネットなどの通信販売では適用されないので注意が必要です。 -
「騙された証拠はありますか?」
ときには「騙されて」あるいは「脅されて」契約をしてしまうということもあるかもしれません。このような場合には契約は無効になります。
しかし,「騙された」ことや「脅された」ことは契約書には残りません。後日の証拠として残るのは,あなたが契約書に署名と押印をしたという事実だけなのです。
「で,騙されたということはこの契約書のどこに書いてあるのですか?」
実際にこのような質問をする弁護士はいないと思いますが,くれぐれもお気をつけ下さい。
2012/02/15
【隔週一言】契約の話あれこれ
