今年は4年に1度のオリンピック・イヤーで盛り上がっていますが,スポーツの世界も法律とは無縁ではありません。国の運営する裁判所とは別に,スポーツに関するトラブルを専門に取り扱う民間の紛争解決機関として日本スポーツ仲裁機構という団体があります。ここには,スポーツ選手のトラブルとして,ドーピング(違反薬物の使用)の有無の問題や,オリンピックの代表選手の選出をめぐるトラブルなどが持ち込まれることもあります。
スポーツ選手ではない一般の人が巻き込まれる可能性があるトラブルとしては,スポーツ中や観戦中のケガについての損害賠償の問題があり,これらが裁判で争われることもあります。スキーやスノーボードでの事故は大きなケガにつながることもありますが,交通事故の場合とは異なり全員が保険に加入しているわけではなく,多額の賠償義務を負うこともありますので注意が必要です。スキー保険などのスポーツ専用の保険に加入していなくても,火災保険や自動車保険の特約で賠償金が支払われる場合もありますので,危険を伴うスポーツを始める前や事故を起こしてしまった際には,自分の加入している保険の内容をよく確認することが必要です。
他方で,スポーツ観戦中の事故としては,観客席に飛んだファウルボールが当たってケガをしたというような場合が考えられます。この場合,球団や球場の管理者などに対して損害賠償の請求をすることができるかどうかが問題となります。裁判の上では,バックネットの設置など球場の安全性確保が適切であったかどうか,ファウルボールの危険性を観客に十分に知らせていたかどうかなどの点が問題となりますが,結論として球団や球場側の責任を認めた例はまだ見られないようです。
スポーツは楽しいものですが,ケガや賠償の問題など怖い面もあります。十分な注意の上でトラブル無く楽しんでもらえれば何よりですが,万が一のトラブルのことも考えて保険に加入したり,実際にトラブルに巻き込まれてしまった際には,賠償などの法的問題について弁護士に相談することも必要です。