8月20日が「交通信号の日」だということはあまり知られていない。昭和6年のこの日に銀座の尾張町交差点(銀座4丁目交差点)や京橋交差点をはじめとする34か所の交差点に日本初の三色灯の自動信号機が設置されたことに由来する記念日だそうだ。
信号といえば,ここ数年,赤信号を無視して横断歩道を渡る歩行者が増えたような気がする。赤信号で信号待ちをするほかの多数の歩行者の目など気にするでもなく,堂々と信号無視をして渡る人を見かける。車を運転する方にとっては,青信号で交差点を通過するときでも油断は禁物だ。
最近の交通事故に関する法律相談でも,歩行者の信号無視や歩行者が横断歩道のない場所で道路を横断した際に発生した事故のケースが決して少なくない。
歩行者が信号無視など交通法規を守らなかったために事故に遭い,その歩行者に過失があるとなれば,たとえ自動車を運転している方の前方不注意等の過失があったとしても,歩行者に生じた損害賠償額の一部が減額されることがある。交通事故の損害賠償額は,怪我の程度や治療期間,後遺障害の有無などによって算定されるのが一般的だが,被害者に過失がある場合には,過失がない場合に比べて相手から支払われる損害賠償額が数割程度減額されることがあるのだ。
ケースによって一概には断定できないが,例えば,車が青信号で交差点に進入し,歩行者が横断歩道の赤信号を無視して渡って発生した事故などにおいては,歩行者の過失割合が7割程度と認定された前例もある。
単純に計算すれば,被害者の過失割合が7割の場合,仮に,被害総額が治療費や慰謝料など合計100万円であったとしても,その7割が減額され,30万円しか受け取れないことになる。歩行者の方の過失が大きいという結論には合点がいかない方も少なくないだろう。しかし,歩行者に信号無視などの重大な法令違反がある場合には,自動車と衝突するなど事故で痛い思いをしていながら,損害賠償額が大幅に減額される場合があるのだ。
このように歩行者であっても過失が認められるケースでは損害賠償額が減額されることがあるということは,意外に知られていない。
昔の交通標語パロディーを思い出したが,赤信号はやはりみんなで渡っても怖いものなのだ。