執筆:岡田法律事務所
岡 聖子 弁護士
ある日Aさんは,引越しをすることになったという知人のBさんから,「アパートを借りる際の連帯保証人になってほしい」と頼まれました。Bさんから「絶対に迷惑をかけないから」と言われたAさんは保証人を引き受けることにし,賃貸借契約書の連帯保証人欄に署名押印しました。
時が経ち,自分が保証人になったことすら忘れていた数年後。Aさんは突然,Bさんのアパートの大家だという人から,多額の金銭を請求されました。どうやらBさんは,Aさんの知らぬうちに仕事を辞めて収入を失い,長い期間家賃を滞納していたそうなのです。
「Bさんは絶対迷惑をかけないと言っていたのに」と,Aさんは裏切られた気分です。Aさんは,大家からの請求金額を払わなければならないのでしょうか?
まず,「保証」とは,元々の契約の債務者が支払などの義務を果たさない場合に,その義務を保証人が代わって負う,という契約です。保証契約は,債権者と保証人との間で結ぶもので,必ず書面によって締結することになっています。
今回Aさんは,大家とBさんのアパート契約から生じる債務の保証人を引き受け,大家との間で契約書を作成しています。そして,家賃はアパート契約から発生した債務です。
ですから,Aさんは保証人として,すでに発生したBさんの家賃を払わなければなりません。Bさんが昔いくら「迷惑をかけない」と言っていたとしても,結論は同じです。
保証人になるときは,人の債務の肩代わりをするという覚悟が必要です。
それでは,今後Aさんは,Bさんの保証人をやめることはできないのでしょうか。
原則としては,一旦有効に成立した保証契約を,一方的にやめることはできません。
ただし,例外的に,今後保証人の責任が過当に重くなることが見込まれ,これを免れられないとすれば余りにも酷である,といえるようなときには,保証人の方から保証契約を一方的に解約することが認められる場合もあります。
具体的には,保証契約に期間の定めがなく,保証契約を結んでから相当の期間が経っており,賃借人がしばしば家賃を滞納していて今後も家賃を誠実に支払う見込みがないにもかかわらず,大家が賃借人に明渡しを求めないなどの事情があるようなケースです。
保証に関するトラブルは事案によって異なり,難しい問題を含んでいますので,紛争が生じた場合には,弁護士に相談することをお勧めします。