執筆:岡田法律事務所
岡 聖子 弁護士
親が亡くなった後,親が書いたと思われる「遺言書」を見つけた場合,一体どうしたらいいでしょう。
この場合,まずは家庭裁判所で,「検認」という手続を受ける必要があります。
「検認」とは,相続人に対して,遺言の存在や内容を知らせるとともに,遺言書の形状,状態,日付,署名などの内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。
もし,未開封の遺言書を,家庭裁判所で検認を受ける前に勝手に開封すると,過料に処せられることがあります。また,遺言書を偽造,破棄,改ざんした場合には,相続欠格として相続権を失うこともあります。遺言書を見つけたら,そのままの状態で保管し,すみやかに検認手続をとるようにしましょう。
さて,検認手続が終わると,いよいよ遺言の執行に移ります。
遺言の内容は,「遺言執行者」によって実現されます。遺言執行者とは,相続人の代理人として,遺言書に書かれている内容に沿って相続財産を管理し,不動産の名義変更等の手続を行う人のことをいいます。遺言執行者は,亡くなった人が遺言で指定する場合と,家庭裁判所が選任する場合とがあります。
ところで,親の遺言書が,一部の相続人だけに遺産を分け与えるという内容となっており,自分の取り分が全くなかった場合,どうしたらいいでしょうか。
法律上,このような場合でも遺産の一部を受け取ることができる,「遺留分」という制度があります。
遺留分とは,被相続人の意思によっても奪うことのできない,相続人の「最低限の取り分」のことをいいます。遺留分は,被相続人の兄弟姉妹以外の相続人に認められ,その割合は,法定相続分の2分の1(又は3分の1)と定められています。
この遺留分を侵害する内容の遺言書が残されていた場合,相続人は「遺留分減殺請求権」という権利を行使し,遺言の定めにかかわらず,「最低限の取り分」を受け取ることができます。
遺留分減殺請求権は,相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは,時効によって消滅してしまいます。そのため,注意が必要です。
遺留分については,このほか検討しなければならない事柄が多々あります。相続でお悩みの場合は,早めに弁護士にご相談ください。