執筆:ひだかひまわり基金法律事務所
原 英士 弁護士
「貸したお金を返してくれない」という相談をよく受けます。そこで、今回は、貸金についてお話したいと思います。
民法上、お金の貸し借りは、「(金銭)消費貸借」といいます(民法587条)。相手がお金を返してくれないとき、私人が相手から強制的にお金を回収することは認められていないため、裁判等及び強制執行という法的手続きによらなければなりません。
お金を貸したことが争いになった場合、これを裁判で認めてもらうためには、貸した方が、「相手にお金を渡したこと」だけでなく、「お金の返還(及び返済期限)を約束したこと」まで立証しなければいけません。「お金を渡したこと」については、例えば、口座に振込入金したときは振込明細書、お金を手渡ししたときは受領書が証拠になり得ますが、それだけでは、「お金の返還(及び返済期限)を約束したこと」まで立証することは困難です。この約束も含め、「お金を貸したこと」を明らかにする証拠としては、借用証書が有益です。借用証書には、最低限、貸主宛てに、「いつ、いくらを借り受けたこと」と「返済期限」を明記の上、証書の作成年月日、借主の住所、氏名を記載してもらい、かつ、押印をしてもらいましょう。どんなに親しい人に貸す場合でも、金銭トラブルで関係をこじらせないために、貸付けの時点で借用証書を作成することを、強くお勧めします。
お金を貸すとき、利息も付けて欲しいと思うことがあります。利息は当然に付くものではなく、利息を付ける合意が必要です。利率の定めがないときは、通常、年5%が利率になりますが、会社や商人がお金を貸し借りするときは、年6%の利率になる可能性が高いです。なお、利率の定めが利息制限法所定の利率を超えている場合、超えた部分の定めは無効になります。
最後に、長期間、貸したお金を返してもらっていない場合、相手から消滅時効を主張され貸金請求権が消滅することがあります。消滅時効の期間は、通常、返済期限から10年間ですが、会社や商人がお金を貸し借りするときは、返済期限から5年間になる可能性が高いです。なお、相手に請求書を定期的に出し続ければ消滅時効にかからないと勘違いしている方が非常に多いのですが、それでは消滅時効の進行は中断しませんので注意が必要です。
貸したお金を返してくれないときは、放置せず、早めにお近くの弁護士に遠慮なくご相談いただければと思います。
以上