執筆:ひだかひまわり基金法律事務所
原 英士 弁護士
自動車運転は生活上必要な交通手段です。一方、自動車運転は、事故により、人にケガを負わせたり、人の物を壊してしまったり等、危険かつ重大な結果を招くものでもあります。
交通事故にあったとき、みなさんはどのように対応するでしょうか。交通事故があったとき、自動車の運転者等は、直ちに自動車運転を停止し、負傷者を救護したり、道路における危険防止に必要な措置を講じたり、警察官に事故等を報告したりしなければいけません(道路交通法第72条1項)。特に、その自動車運転者の運転が原因で人を死傷させた場合に負傷者の救護等をしなかったときは、10年以下の懲役または100万円以下の罰金という重い刑罰が科されます(同法117条2項)。
次に、交通事故の結果(人の死傷、物の破損等)について、一般的に、当事者は法的責任を負うことになります。例えば、民事責任としては損害賠償責任を負い、刑事責任としては事故の内容に応じて懲役若しくは禁錮又は罰金刑が科せられることがあります。
特に、人の死傷を招いた場合の損害(人損)は甚大になりがちです。そのため、多くの人は任意保険に加入しています。「任意」保険と呼ばれているため、強制加入ではありませんが、私の弁護士業務の経験を踏まえると、「自動車を運転するならば、任意保険には加入しなければいけない」と思っていた方が良いです。強制加入の自動車賠償責任保険では、保険で支払われる損害賠償に限度があり、一般的に、すべての損害を補うことはできません。この場合、残りの損害は自己負担になりますが、事故の結果によっては、到底、自己負担できない損害額になってしまいます。
一方、交通事故に遭われた方について、その損害がどの程度のものなのか、または、相手から示談交渉された損害賠償額が適切なものなのか、分からないことが多いと思います。一般的に、相手から提案される損害賠償額は、本来認められるべき損害額よりも低いことが多く、しかし、その損害額で相手と示談が成立すると、後日、相手に対し、それ以上の損害額を請求することは、原則として認められません。
このように、交通事故には、民事、刑事を問わず、様々な法的問題があります。交通事故にあったとき、または、交通事故について疑問や悩みがあるときは、すぐに、ご遠慮なく、お近くの弁護士にご相談いただければと思います。
以上