執筆:ひだかひまわり基金法律事務所
原 英士 弁護士
「民事事件の紛争解決のために、どこの裁判所に訴えを提起することができるのか」ということについて、今回は、「日高地方在住の人が、札幌市在住の人に100万円を貸したけど返してくれないので、訴えを提起したい」という事例で、お話したいと思います。なお、「訴え」とは、簡単に言うと、「請求の当否について裁判所での審理・判決を求めること」をいいます。
日高地方在住の人は、原告(訴える者)として、札幌市在住の人を被告(訴えられる者)として、被告の所在地である札幌市の裁判所に、訴えを提起することができます(民事訴訟法第4条1項)。しかし、日高地方から札幌市の裁判所に行くには、とても時間がかかります。そこで、財産権上の訴えについては、義務履行地を管轄する裁判所にも訴えを提起することができ(民事訴訟法第5条1号)、借りたお金を返す場所は、当事者間の取り決めがない場合、債権者の現住所になりますので(民法484条)、原告は、アクセスが良い「日高地方を管轄する裁判所」に訴えを提起することもできます。
「日高地方を管轄する裁判所」は2つあります。ひとつは、浦河町にある札幌地方裁判所浦河支部及び浦河簡易裁判所(両者は同じ裁判所内にあります。)、もうひとつは、新ひだか町にある静内簡易裁判所になります。そして、訴額が140万円以下の請求は簡易裁判所、140万円を超える請求及び不動産に関する訴訟は地方裁判所に訴えを提起することになりますので(裁判所法第33条1項1号、同法第24条1号)、100万円を返してほしい原告は、簡易裁判所に訴えを提起することになります。その上で、原告が、新ひだか町静内(旧静内町)、新冠町、日高町、平取町に住んでいる場合は静内簡易裁判所、一方、新ひだか町三石(旧三石町)、浦河町、様似町、えりも町に住んでいる場合は浦河簡易裁判所に訴えを提起することになります。新ひだか町は、合併前の旧静内町と旧三石町で簡易裁判所の管轄が異なっているのが特徴的です。
このように、訴えを提起することができる裁判所は、請求内容や住所地等によって変わってきます。また、無制限ではありませんが、当事者間の合意で訴えを提起することができる裁判所を定めることも可能です(民事訴訟法第11条)。
裁判所に訴えを提起したいけど、どこの裁判所に訴えれば良いのか分からない等、疑問やお悩みがあるときは、すぐに、ご遠慮なく、お近くの弁護士にご相談いただければと思います。
以上